第14話「ゆめみるゆめこ」(ファンタジー)

 ゆめこは、小さな町でわけあって一人暮らしをしている女の子だ。毎日楽しそうに学校に通い、友だちとはしゃぐ。でも心のどこかでいつも、もっと冒険がしたいと思っていた。


「こんな退屈な町じゃなくて、もっとわくわくするような場所へ行きたいな……」


 そんなある日の夜のこと。ねむりについたゆめこは、不思議な夢を見た。


 目覚めると、そこは見たこともない広大な草原だった。


「わぁ、どこまでも続く緑の絨毯だ!」


 ゆめこは大喜びで駆けまわる。草原の向こうには、甘いかおりをさせる花畑が広がっていた。まるで絵本の中に迷い込んだみたいだ。


「ここなら、どこまでも、どんな冒険だってできそう!」


 無邪気に笑うゆめこ。この世界なら、退屈なんてすることはなさそうだ。


 けれどふと、遠くの方に見慣れた風景が見えた。よく見ると、あれはゆめこの住む町ではないか。

 町のはずれには、小さな点のような人影もいる。友だちだろうか。それとも……。


「みんな、私がいなくてさびしそう……」


 そう呟いたゆめこは、大好きな冒険の世界に別れを告げようと決心した。


 目が覚めると、そこは自分の部屋だった。窓の外には、いつもの変わらない風景が広がっている。でも、その風景がいつもより愛おしく感じられた。


「冒険の世界も素敵だったけど、この町もやっぱりいいよね」


 ゆめこは心の中でつぶやいた。退屈だと思っていた日常が、実は大切な宝物だったことに気づいたのだ。


 ゆめこはいつものように家を出る。今日も学校で友だちと会えるのが楽しみだ。

 いつかまた、あの夢の世界を訪れる日が来るかもしれない。けれど今は、目の前の日常を大切にしようと思った。


(了)

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