第13話「永遠の輪廻」(不条理)
目覚めると、見知らぬアパートの一室だった。私は混乱した。記憶があやふやで、なぜここにいるのかわからないのだ。
立ち上がろうとした時、部屋の隅で異様な光景を目にした。血まみれの死体が横たわっているではないか!
「うわあああっ!」
私は悲鳴をあげて部屋を飛び出した。このままでは殺人犯に間違われてしまう。警察に通報しなければ。
そう考えた瞬間、意識が遠のいた。
気がつくと再び例の部屋だった。隅には死体が……。
「なんだこれは!? 一体何が起こっている!?」
混乱しつつ再び部屋を飛び出す。しかしやはり意識が途切れ、目覚めた場所は同じ部屋だった。
「まさか、タイムループ……?」
私は疑問を抱えたまま、無限ループを彷徨った。部屋を出ては意識を失い、気づけばまた部屋。その度に私は死体を目にする。
そのうち気づいた。死体の顔が妙に見覚えがあることに。よく見ると……それは紛れもなく私自身だった。
「どういうことだ……私が死んでいる……!?」
その時ふと閃いた。もしかしてこの部屋は現実などではなく、私の意識の中にあるのではないか?
私はすでに死んでおり、その事実から目を背けるために心の中でループしているのではないか?
「私は……自分の死を認められずにいたのか……」
そう呟いた時、部屋が消え失せた。気づくと病院のベッドに横たわっていた。
「あなた、やっと目が覚めたのね!」
そう言って微笑む女性は、私の妻だった。
いや、そのはずだった。しかし、なぜだろう。
その顔は、部屋で死体となっていた私にそっくりだった。
私はあらためて考えた。私は本当に目が覚めたのだろうか? それとも、これもまた夢の中の出来事なのだろうか?
意識と現実の境界線があいまいになっていく……。もしかしたら私は、永遠に目覚めることのない夢の中をさまよい続けるのかもしれない。
(了)
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