ハウンド編

第14話

ニコと別れて数日後。


相変わらずの雪模様の中、私たちは次の町へとたどり着いていた。


「この町も結構建物が残ってるね」


あたりを見渡してみると前の町同様にかなりの建物が建物としての形を保っていた。


時間経過による劣化や、多少の損壊はあるものの激しい戦闘の後といった様子は見受けられない。


『戦争に巻き込まれていなさそうなところを選んだからね。戦闘の激しかったところには生体情報なんて残っていないだろうからね』


生体情報。


ヘルメス曰く人間を作り出すときに必要になるものらしいが、この世界でいったいどれほどそんなものが残っているのだろうか。


「ねえ、ヘルメス。その生体情報っていうのは人類が生きていたころにはみんなが残しているようなものだったの?」


『うーん、元から残していたのは一部の権力者や、お金持ち…病院関係者ぐらいじゃないかな。人類が滅びる数年前からは、博士が全世界のアンドロイドたちに集めるように通達は出していたけれど、強制ではなかったからどれくらいが従っていたかわからないな。』


ヘルメスが頭をかきながら答える。


どうやらヘルメスにも、どこにどれくらいあるのか見当がついていないらしい。


長い旅になりそうだ。


「生体情報は今からでも作ることってできないの?」


『それは無理だね。生体情報は生きている人間からしか取ることができないんだ。だから、この世界に今あるものがすべてになる。』


死体などからは取ることができないのだろうかとも思ったけれど、どうやらダメならしい。


まあ、人類が滅んでから何十年もたっているこの世界で死体が見つけられるとも思えないが、地道に生体情報を探していくしかなさそうだ。


「生体情報って何個ぐらい必要なの?」


『人類を復活させるとするなら大体100個前後かな』


ひゃっこっ!?


あまりの数に私は目を丸くする。


今回ニコからもらった生体情報は一個だけ。


他の町に何個保存されているのかわからないが、かなりの長丁場になりそうだ。


「先は長そうだね…」


『ははは、そうでもないさ。町によってはたくさん保管しているところもあるはずだよ。例えば、この町には結構大きめの病院があったはずだし、いくつか残っているかもしれないね。』


「ほんとっ?」


それは朗報である。


はやく旅を終わらせたいというわけでは決してないけれど、早く集まるに越したことはない。


旅は集まった後でもゆっくりできるのだ。


『じゃあ、まずは病院に行ってみるのでいいかな。』


「うん」


私たちは生体情報を得るために病院へと向かうことになった。


一体この町で幾つくらいの生体情報を手に入れられるだろうか。

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