第7話
『おや、驚かせてしまいましたね。これは失礼、私はこの歴史館の管理を任されている、ニコといいます。』
奥から出てきたカメラ頭のロボットに衝撃を受けていると、彼はそんなこちらの様子に気づいたのか、謝罪とともに挨拶を続けた。
『これは、驚いたな…、まだ動いているヒューマノイドがいるなんて。電力供給はもう止まっているだろう?電力の確保はどうしたんだい?』
『基本は太陽光発電で賄っています。五十年ほど前から誰も訪ねてこなくなったもので、週に一度の清掃程度であればそれだけで十分に回ります。』
『なるほど、ここら一帯はほかの地域より損壊が少ないから太陽光発電が生きているところもあるんだね』
『はい、幸いこの辺りは戦争に巻き込まれなかったので。そのおかげで館長の大事にしていたこの歴史館を、今日まで守ることができました。』
「ねえ、ここってなんの歴史館なの?」
あたりを見渡しながら私はニコに尋ねる。
部屋の中を見渡しても特に展示しているようなものや案内は見当たらない。
『ああ、すいません。この状態ではわからないですよね。ここは、カメラの歴史館です』
「カメラの…。歴史館なのになにも展示されてないのはどうして?」
『展示品の状態を保つための機械が壊れてしまったため、倉庫に保存しているんですよ。説明や案内に関しては、戦争の影響で電子機器としては無事でもサーバーのほうが壊れてしまったもので、サーバーに保存されていた情報にアクセスできなくなってしまったんです。』
ニコの返答になるほどと納得する。
確かにその理由であれば展示品が何もないことには納得である。
しかし、そうだとすると何も見ることができないのだろうか?
カメラの実物は見たことがないからせっかくなら見てみたいのだけれど…。
『この子に何か見せてあげることはできないかな?外の世界に出てきたばかりでね、いろんな経験をさせてあげたいんだ』
ヘルメスが私の頭に手を乗せながらニコへと尋ねる。
むぅ、どうやらまた私の考えが読まれたらしい。
そんなに顔に出ているのだろうか。
むきー、とヘルメスの手を頭の上から外そうとしていると、その様子を見てニコがわらいながら答える。
『そうですね…、では、いくつかのカメラの実物と簡単な説明、後は世界各地で館長が撮影してきた写真なんかはどうでしょうか?』
「写真…残ってるの?データサーバーにアクセスできなくなったのに?」
『館長の趣味でして、あの時代にしては珍しくデータではなく実物で保管していたんですよ』
「そんな大切なもの見てもいいの?」
『大切なものだから、自慢したいんですよ。見ていただけませんか?』
ニコは表情が変わらないのでどんな思いでいるのかわからないが、その細まったレンズはどこか嬉しそうに見えた。
「ニコがいいなら…みせてもらってもいい?」
『はい、喜んで。すぐに持ってきますので待っていいてください』
そういってニコはまた部屋の奥へと下がっていく。
ニコが見せたい写真とはどんなものなのだろう。
世界中のきれいな景色やすごい建物などだろうか?
それともおいしい食べ物?
なんにせよ、たのしみだ。
私はニコの持ってくる写真に胸を躍らせながら、ニコが戻ってくるのを待っていた。
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