ニコ編
第6話
ヘルメスとの旅を始めて数日
相変わらず夏だというのに、雪は毎日のように降り続けている。
ヘルメスが言うには、この雪は戦争のときに人間が使用した兵器の影響ならしいけれど、星の天候を数十年も変え続けてしまうなんてどんな兵器を使ったんだろうか。
この雪がなければもう少し進みやすいんだけどなぁ。
そんなすでに滅んでしまった人間への不満を抱きながら、雪道を歩く。
この数日であたりの風景は少し変化を見せていた。
「この辺はまだ建物が残ってるんだ」
『この辺りは特に重要な施設とかがあったわけじゃないからね、あまり戦争に巻き込まれなかったんだよ。』
そういわれると、あたりに見える建物はどれも普通の民家や、商店の様に見える。
ところどころ壊れている建物もあるが、半分ほどは建物としての形を保っていた。
『頑丈に作られてた建物とかはまだ中も当時のままなんじゃないかな。』
ヘルメスの言葉に私は考える。
建物の中まで当時のままということは何か面白いものが残っているのではないだろうか?
わたしは期待を込めた目でヘルメスを見る。
その建物の中、見に行きたい
『あはは、分かったよ。今この付近にどんな建物があったか調べるから少し待ってて』
そういうと、ヘルメスの頭から二本の角のようなものが生える。
おお、また新しい機能だ。あの角でデータのやり取りをしているんだろうか。
何でもできるな、このロボ。
暇になったので、私はこのあたりの当時の状況を考えてみる。
このあたりにはどんな建物があったんだろうか。
重要な施設がなかったということは住宅街?もしくは人がそもそも少ない田舎だったんだろうか。
どちらにせよ、この辺りの建物は経年劣化による損傷はあるものの争った形跡は特にみられない。
人間がまだ生きていた時でさえ、人口はそれほど多くなかったことがうかがえる。
うん、ちょっとおもしろいものは期待できないかもしれない。
『近くにまだ残っていそうな建物が見つかったよ。とりあえずそこに行ってみようか』
一人で少しがっかりしているとヘルメスから声がかかった。
どうやら調べ終わったらしい、どんな建物に連れて行かれるのだろうか。
自分自身の想像で勝手にがっかりした私は少し不安な気持ちで、歩き出したヘルメスへと続いた。
◇◇◇
ヘルメスと歩くこと十数分。
私たちはほかの建物に比べると、大きめな建物の前にたどり着いた。
しかし、私たちの目を引いたのはそのサイズというよりも
「ねえ、ヘルメス」
『うん』
「この世界には私以外に人間はいないんだよね」
『そうだね』
「だとしたらさ、この建物綺麗すぎない?」
そう、綺麗すぎるのだ。
建物は人が何十年も生活していなければそれなり様相になるものである。
現にここに来るまでに目にしてきた多くの建物はそういったありさまだった。
しかし、この建物だけはまるでだれかが定期的に掃除しているかのように綺麗なのである。
確かに経年による汚れなどはところどころに見られるが、それ以外の雑草や汚れは一切見当たらない。
どういうことだろう。
『うーん、とりあえず中を確認してみようか』
私はヘルメスの言葉に頷く。
確かに外から眺めているだけでは何もわからないだろう。
ヘルメスとともに扉のほうに近づく。
すると、意外なことに扉は自動で開いた。
どうやら電気は通っているらしい。
『おや、お客さんですか?これはまた随分と久しぶりだ』
扉が開いたことに気づいたのか、奥から誰かが声をかけてきた。
やはり誰かいるようだ
「ヘルメス、やっぱり誰かいるじゃん」
『いや…、これは…』
部屋の奥から出てきたのは、一眼レフのような大きなレンズを頭に持った一体のロボットだった。
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