第34話 聖女のピンチを救うのですわ~~♪

「では【結界】をコントロールしているお部屋にご案内しますね、ダスタ王子殿下」

「ああぁ……グヒヒ……聖女かぁ~ルーナの姉かぁ~これもなかなか……」


 ルーナの姉である聖女エルシアの後ろにピッタリとくっついて歩く王子。



 いや……ルーナ一筋ちゃうんかい。



「なあ、ルーナ。なんで王子が来たんだ?」


 俺はルーナにだけ聞こえるよう、声を絞って問いかけた。


「はい……【結界】の見学は、タロス王国が援軍を出す条件のひとつとして要求してきたものですわ」

「そうなのか、てことはこれは予定されていた行事ってわけだ」

「ええ、タロスは我が国より【結界】技術が遅れてますわ。魔王軍の猛威が高まるなか、【結界】はかつての古びた技術ではなく、新しい防御策として注目され始めてますの」


 なるほどなぁ~~たしかにタロス王国にしたって、ヒルステアを助けるのは自国の為でもある。合わせて自衛の【結界】も備えておきたいという考えにはなるだろう。


「タロスの第一王子殿下は聡明な方で純粋に【結界】の見学を楽しみにしておられましたの。でも急にご病気で……」


 そう言いながら、ルーナは姉の聖女であるエルシアの尻にぴったりついてく王子に視線を移した。



 こいつが来ちゃったということか。



「はい……今日わたくしは出席予定ではなかったのですが、ダスタ殿下は激しくわたくしを希望しましたの」


 希望した挙句の果てに、姉の尻を追い回すとか……


 ……つまり。バカ王子がやんちゃする→ルーナが巻き込まれる→俺もセットで巻き込まれる。ってか。


 だが援軍を送ってもらう身でもあるこちらは、タロスの要望を無下にするわけにもいかない。

 だからこそルーナもいつもな感じではなく、外行きの対応をしているのだろう。


 ここはおっさんも大人しくしよう。

 面倒だがしょうがないな。


 教会の階段を上がって行くと最上階に扉がみえてきた。周囲には警護の騎士数名が立っている。


「ここが【結界】の管理室です」


 目の前に現れたごつそうな扉。聖女エルシアは端にある石板に手を当てて、石板に刻まれた文字を押していく。


「聖女様、それはなにをやっておられるのですか?」


 タロスの副官が真面目そうな顔で質問する。


「管理室はこの扉によって一定の者しか出入り出来ないようになっております。100桁の暗証コードと指定された者の魔力を感知して扉を開くことができるのです」


 ひゃっけた……ダメだ、おっさんメモんないと絶対無理。


「ほう、美しい手ではないか、聖女よ」

「―――ちょっ! ダスタ王子……お戯れがすぎますよ」


 こいつ……なに聖女さまの手を触ってんだ。


「ダスタ王子、聖女エルシアが困っておりますわ」


 ルーナがスッと前に出て、ダスタ王子に笑顔で話しかける。


 でも、全然怖い……かろうじて形だけ笑みだ。


「ほう、ルーナ姫。妬いているのか。まあそうだろうな俺様はもてるからな」


 相変わらずの意味不明な言動。だがルーナは特に受け答えはせず、スッとうしろに戻る。

 管理室の扉が開いたからだ。


「さ、さあ……中へどうぞ」


 聖女エルシアの声と共に俺たちは管理室へと入っていった。


「おお、ここが【結界】管理の中枢……」


 副官があたりを興味深く見回している。まあ見学が目的なのだから、素直なリアクションである。


「ここから【結界】を張っているのでしょうか?」

「はい、【結界】はこの教会を中心に円状に広がっています」

「なるほど……【結界】を張ったり消したりもこちらの管理室で行うのでしょうか?」

「少し違います。【結界】は別に管理しなくても一定期間はその効力を保ち続けます」


 あ、そうなんだ。


 じゃあここは何のためにあるの?


 俺と副官が首を傾げる。王子が聖女の尻に手を伸ばす。俺と副官が王子の手を掴む。


「んだよ。おまえら」


 んだよじゃないよ。それは流石にアウトだぞ。


 そんな王子を無視して、聖女エルシアが話を続けた。


「フフ、たしかにそんなお顔になりますね。管理室では主に【結界】の濃度を調整しているんです」


「濃度? 壁の頑丈さみたなものですか?」

「はい、平たく言えばそうなります。窓から空に【結界】が見えますね」


 たしかにうっすらとだが、王都を覆う【結界】の膜みたいなのが見える。


 聖女がテーブルに設置されている魔石のひとつを動かした。


「どうでしょう? 少しばかり濃くなりませんでしたか?」


 ああ、たしかに。言われてみればちょっとさっきよりくっきりしている。と思う。


「【結界】にめぐる聖力の配分を少しばかりいじったのです。【結界】は通常時は均等な聖力がまんべんなく配分されていますが、用途によってはその配分を変えることができるんです。この管理室で操作できるという事です」


 なるほど、有事の際には戦況によって守りを厚くする部分などを選ぶことができるということか。

【結界】の範囲は大きい。適切に防御力を配分できるのなら、かなりの優れものだ。


「その魔石で操作しているのですね」

「そうです。この操作盤に設置されている魔石の組み合わせで、濃度を調整します」


「う~~む、なるほど。我が国にも【結界】を導入するのならば、この技術も必要ですな……あ、これはなんでしょうか?」


「それは通信管ですね。王城にまで管が伸びています。風魔法の応用で声を飛ばしあうことがでできます」


「これは、凄い……」

「ですが、音質はそこまでは良くないですよ。フフ」


 熱心に聖女の説明を聞く副官。

 つまらなさそうに、あくびする王子。


 しばらく聖女と副官の会話が続いた。


「いや、本日は誠にありがとうございました。聖女様、ルーナ様。タロス王国を代表してお礼申し上げる」


 恭しく頭を下げる副官。


「はぁ~~そんなことより聖女よ。俺様の側室にならんか?正妻はルーナだがな」


「殿下! なにを言っているのですか! 王子ならば言動には気を付けてください! 行きますぞ!」


 変な空気になる前に、副官が大声を入れて半ば無理矢理王子を連れて行った。




 ◇◇◇




 王子たちが去ったあと、俺とルーナは大教会内の聖女の自室に案内された。


「ふぅ~~ルーナちゃ~~ん、おねぇちゃんがんばった~~」

「むぐぅう……おねぇさま……苦しい」


 聖女エルシアの巨大な膨らみに挟まれるルーナの小顔。初めに見た光景が再び繰り広げれている。


 まあ副官はともかく、あんな王子の接待ではストレスも溜まるだろう。


 それに王族だとあまりこんな姿をさらすわけにもいかない。久しぶりの姉妹水入らずの時間だ。


 2人が満足するまで(主に姉)俺は少し離れて待つことにした。


 しばらくして……


 その姉の豊満な津波から解放されたルーナが、俺に視線を向けた。

 うっすらといつもの笑みが漏れ始める。



「さあ~~そろそろはじめますわ~~」



 え? まだなんかあんの?


「今日は見学でイベント終了じゃないのか?」


「いえいえ、ここからが本番ですわ。ショウタさまが聖女のピンチを救うのですわ~~♪」


 あ、そうえばそんな設定があったような。


 もうアホ王子が色々やらかしたから完全に忘れてたわ。


「んで、救うって。なにをやるんだ? ルーナ?」


「それはお姉さまから説明がありまわ♪」


「なるほど、聖女さまになにか困りごとがあるってことですね?」


「は、はい。その……」


 どうしたんだ。聖女おねぇさま、急にモジモジし始めたけど。



「ブラジャーください!!」



 はい?



「え……なに言って?」


「ブラジャーです!!」


 ちょっと待て、なんか話がおかしな方向にいきそうだぞ。


「だからブラジャーです!!」


 それはわかりました。落ち着いてくれ。


 とにかく聖女から話を聞いてみた。


 どうやら聖女の膨らみがデカすぎて、既存のブラでは対応不可能になって困っているとのこと。

 さらにまだ成長しているらしく……



 いやいやいや、おっさんになに相談してんの!?



「えっと、王族なんだから特注品とかできないんでしょうか……」


「ダメなんですぅ~、全部つけた瞬間破けるんですぅう~~だから今もノーブラですぅううう」



 マジかよ!!!



 それはピンチだ!!


 王国の聖女をノーブラで野放しにはできない!



「わかりました……俺でよければ全力を尽くしましょう」


 てことで……


 そこから夜まで、ずっとブラを召喚し続けた。


 たまにでかめサイズのやつが出て来た。


 聖女様は大層お喜びになった。



 俺、教会で何をやってるんだろうか……





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2025年1月4日 20:17

異世界召喚に巻き込まれたおっさん、みんな勇者なのに俺だけ【三流召喚士】で外れスキル認定→速攻追放かと思いきや、なぜか姫が「これ最強のパターンですわ!きた~!!」と救世主様扱いで付きまとってくるのだが のすけ @nosuke2

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