異世界召喚に巻き込まれたおっさん、みんな勇者なのに俺だけ【三流召喚士】で外れスキル認定→速攻追放かと思いきや、なぜか姫が「これ最強のパターンですわ!きた~!!」と救世主様扱いで付きまとってくるのだが
第29話 おっさん、国王に理解されないので戦車をだしてみる
第29話 おっさん、国王に理解されないので戦車をだしてみる
王城に戻った俺たちは、その足で謁見の間へと向かった。
国王に呼ばれたのは、第三王女のルーナだけでなく俺も。ていうか俺が名ざしだった。
「お父様、戻りましたわ」
ルーナが一歩前に進み、ドレスの裾をそっと持ち上げ綺麗なカーテシーを国王に披露した。その姿には高貴な誇りと可憐な美少女の両方が合わさったようで思わず見惚れてしまった。
それは周りにいる貴族たちも同じようだ。
そんな普段とは違う一面を見せるルーナ、やはり王女なんだなと思う。
「うむ、よくぞ戻ったルーナ。まずは報告を聞こう」
ルーナが今回の件について、国王に報告をはじめる。
よく考えたら国王に会うのはこの異世界に召喚されて以来だ。
ちなみに王城内の俺の立ち位置は微妙である。序盤で追放されかけた俺は、ルーナに拾われた。
その後はずっとルーナと行動を共にしている。
魔族ガルマやゲルマを討伐したことはルーナが報告しているらしいが、いずれも高校生勇者が現場にいたことで、彼らの功績が大きいみたいなことになっているらしい。
ルーナはそのことに納得していない様子で、「いずれショウタさまの凄さを完膚なきまでにみせつけてやりますわ~~♪」と息巻いていた。
ぶっちゃけ俺としては、見せつけなくてもいいかと思っている。
高校生勇者たちは日常で貴族やらとの絡みもあったり、なんだか大変そうな話をたまに聞くし。シオリちゃんやリンカに至っては、婚約話とか持ち掛けてくる奴もいるらしい。
すごくめんどくさそうじゃないか……。
なので俺はあまり目立たずに好きにやれる今のポジションが好ましいのだ。
だから早く終わんないかな……と思っていると。
「さて、ショウタよ」
国王が俺に声をかけてきた。
「はあ……なんでしょう」
思わず気のない返事をしてしまった。
だって、召喚された日に不要と言われたし。ルーナやシオリちゃんたちの為ならやる気でるけど、この人は今更感はんぱないんだよな。
「此度の勝利はお主の働きが大きかったと聞く」
「アタリを引きましたからね」
「アタリ? うむ、お主のスキルなんじゃったか【三流おっさん】だったかのう」
いや、全然違いますけど。
相変わらず俺に興味ないだろ、この王様。
だったらもう帰らせてくれ、ベッドで寝たいよう。
流石にそういうわけにはいかず。
「ヒソヒソ……【三流芸人】ではなかったか?」
「ヒソヒソ……いや、【三流下着職人】だった気がするぞ」
「ヒソヒソ……本当に魔王軍を退けたのか?」
まわりの貴族もざわめき始める。
下着職人ってなんだよ。
功労者を俺にしたくないんだろう。
だったら、シオリちゃんを呼んで。ルーナと共に褒めてあげればいいのに。めんどくせぇ……。
「お父様! あなた方!! まだわからないのですか!!」
ルーナが苛立った声を上げる。
しゃーない。
彼女には世話になってるしな。
「では、実際にご覧に入れましょう」
見せてやる!
「――――――【三流召喚魔法】!」
「――――――【三流召喚魔法】!」
「――――――【三流召喚魔法】!」
「「「パンツでてきた!?」」」
「はい、わたしのスキルはガチャ召喚なのですぐにアタリは出ません」
「――――――【三流召喚魔法】!」
「――――――【三流召喚魔法】!」
「――――――【三流召喚魔法】!」
「「「もっとパンツ出てきた!?」」」
「こんなもの序の口です。もっとパンツいきますよ」
「――――――【三流召喚魔法】!」
「――――――【三流召喚魔法】!」
「――――――【三流召喚魔法】!」
「「「やめろ!謁見の間がパンツで埋まる!!」」」
知らんがな。俺の実力を見てもらうためには致し方ないのだ。
「――――――【三流召喚魔法】!」
お、きたきた!
再び俺の前に姿を現したT34中戦車。
「うぉおお! な、なんだこれは!?」
「て、鉄の箱?」
さて、少しばかし動かすか。
『了解ですマスター、
激しいエンジン音が響いた後に、キャタピラが僅かに動き出す。
「ひぃいいい!動いたぁああ!」
「な、なんだぁあ!」
慌てふためく貴族さんたち。
「いかがでしょう?これがわたしのスキル【三流召喚士】です」
国王の方に視線を向けると、あんぐりと口をあけている。
まだダメか……
「しょうがない、一発空砲でも撃つか?」
『ええ、いきましょうマスター。
T34の76.2ミリ砲塔が旋回、空砲発射の準備にかかる。
「皆さん、耳を抑えてください。謁見の間を揺らす轟音が響きますんで」
そこへ国王が慌てて声をあげる。
「―――ま、まて! 待つのじゃ!!」
「ご安心を、実弾はさすがにマズいので空砲でも撃とうかとしているだけです」
「わ、わかった。落ち着くのじゃ! 実力はわかったから! わしが悪かった」
お、ようやく理解してくれたか。
俺は召喚を解除して、T34をその場から消した。
「ふぅ……ショウタよ。よくぞ王都を魔物たちから守ってくれた。改めて礼を言う」
王が頭を下げた。
これはたぶん凄い事だ。なにせ国王だからな。
横にいるルーナはニッコリ笑顔になっている。というか戦車を見て、若干ムズムズしていたような。この子、最近変な性癖に目覚めてしまった気がしてならない。
「して、ショウタよ。今までの扱いを詫びるとともに、お主を勇者たちと同じく騎士団の所属とする。よいか?」
「え~~と、なら今まで通りでいいです」
「今まで通りとな?」
「はい、ルーナ王女殿下所属でいいです」
「ふむ……お主が望むならそうしよう」
「あ、あと給料ください」
「褒美であれば此度の働きで存分に出すつもりじゃぞ」
「いえ、月給を支給して欲しいのです。ルーナ王女殿下から」
そう、ここは大事だ。
俺はルーナの為に頑張っている。
だから分相応の給料をルーナからもらえれば、それで十分だ。
あと、なんといっても給料日ってのはいいものなのだ。
一回こっきりのでっかいボーナスよりも、毎月楽しみがあるほうがいい。俺の性にあってる。
平和になったら王城を出るかもしれない。というかたぶん出る。出てこの世界を勝手に楽しみたい。
その時に生活できるだけのお金は欲しい。
今のところは王城暮らしで、食費や家賃は全くかかっていない。だからある程度貯金もできるはずだ。
「う……うむ、あいわかった。お主の言うとおりにしよう」
若干微妙な空気になったが、しっかりと俺の希望は叶えられた。
まあ、褒美で大金もらっとけよって考えは良く分かるけど。
俺は俺の好きなようにやりたい。
ただ、そう思っただけだ。
◇◇◇
◇魔王視点◇
魔王領、魔王城にて。
「キヒ、魔王様、第一軍団が敗走とは、予想外ですゾ」
「王国騎士団にやられたのか?」
俺は目の前でひれ伏す副官に問いかけた。
「い、いえ。地味なおっさんが動く鉄の箱を召喚しまして……見たこともない魔法を放つ箱でして……」
どうやら王国には勇者以外にも、強力な召喚士がいるようだ。
しかし、わが第一軍団を退けるとはな……
「そうか。それでおまえは何故戻って来た?」
「い、いえ。副官として、この重要な情報を魔王さまに献上するために……ムヒィ……」
「おかしいではないか。グリアーチとおまえは王国を滅ぼす予定だったはずだがなぁ。だが、滅ぼさずに戻って来たと」
「ひ、ひぃいい! ま、魔王様、わ、わたしはまだまだお役に立てます! ぶ、ぶ、部隊を率いて今度こそ王国を――――――ギャァアアア!!」
「―――役立たずなどいらんわ」
わしが淡々と呟いたその瞬間、副官は地面に吸い込まれるようにして一瞬で姿を消した。
「おい、王国沿岸地区の侵攻はどうなっている?」
「キヒ、依然難航中ですゾ。やつらも疲弊してますが、こちらもかなりの損害が出てますゾ」
やはり正攻法の上陸作戦はそう簡単にはいかんな。さらに上陸しても王都周辺には例の【結界】がある。
陸がダメならば……
「おい、第二軍団の招集はどうなっている?」
「キヒ、魔王様。半数ほど集まりましたゾ」
「……まだ半数か」
「キヒ、集まればあとは速いですゾ。やつらは地上軍とは違いますゾ」
「召集を急がせろ。あと、人族の手駒も動かせ」
「キヒ、すでに王国へと向かわせておりますゾ」
「よし―――手駒が仕掛けを発動するまでに、第二軍団を集結させろ」
王国とおっさんめ、二度目の奇跡は起こらんぞ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます