第28話 おっさん、砲撃しまくりすぎて呆れられる

「ええぇ……しょ、ショウタさん……こ、これ?」

「ちょっと……何をしたらこんなことになるのよ……」


 ハヤト君とリンカが砲撃でボコボコになった地形を見て、呆れた声を漏らした。


「う、うお……なんだこれは!?」

「邪神でも現れたのか!!」

「王国ももはやこれまでか……くっ……」


 駆けつけて来た王国騎士団のみなさんも、状況に理解が追い付かない様子だ。


 いやぁ~だってさ。久しぶりの兵器無双タイムだったわけだし。


 それに俺らだって必死だったわけで。


 もう、おっさんは無我夢中で撃ちまくったわけですよ。


「だって、普段はパンツとたわしばっかだもん!だからはしゃいじゃうよね!」


「えっと……ショウタさん?」

「ちょっ、なによ急に?」


 あっと、つい心の声が出てしまった。


「とにかくよく来てくれたよ」


 俺はハヤト君とリンカちゃんに改めて礼を言う。


「ハハ……もう終わっちゃってますけどね」

「そうよ、もっと早く助けを呼びなさいよ。まあ、あんた……じゃないみんなが無事で良かったけど」


「いやいや、みんなが来てくれなかったら大変だったぞ」


 そう、俺とルーナにシオリちゃんでなんとか第一軍団を退却させることができたが、襲撃された民家や人々はたくさんいる。

 王国騎士団が中心となりケガ人の治療や探索、家屋の消火がはじまっている。3人じゃどうにも出来ないからな。



「ショウタさま~~はやく手伝ってくださいませ~~!!」


 おっと、お姫様がお呼びだ。


 穴だらけの地面を一歩一歩、睨みつけながら注意深く歩く美少女。時折かがんで確認したりしている。

 なにを探しているのかと言うと、たぶん魔石だ。


 ルーナは魔族グリアーチの魔石を回収しようと、穴だらけの地面を探し回っているのだろう。


 そしてルーナとは別の美少女が、両手をブンブン振って満面の笑顔でトテトテ走ってくる。


 これはもしかして……



「リンカちゃん、ハヤト君~~――――――ふひゃっ!!」



 やはり落ちた……。



 俺は自分たちのあけた穴に落ちたシオリちゃんを引っ張り出す。

 ケガはないようだが、恥ずかしいのか顔が真っ赤だ。


「あぅうう……ちょっと下を見てませんでした……」

「いや、いつものシオリちゃんだから大丈夫だぞ」

「それって大丈夫な要素なくないですか!?」


 まあいいじゃないか。ドジっ子キャラなんだし。

 シュンとなるシオリちゃんをなだめていると、ルーナの声が聞こえてきた。


「ありましたわ~~♪」


「おお! デカいな」


 ルーナの手にした魔石を見て、思わず声が漏れる。

 こりゃ凄い。さすが将軍級の魔石だ。


「ええ~~これはショウタさまのとっておきとして保管しておきますわ~♪」


 そう言って、自身の谷間に魔石をスルスルと収納する姫。

 さらに騎士団の将官を呼んで、他の魔石回収を指示している。


 にしても、今回は魔石の重要性が良くわかった戦いだったな。


 俺の召喚したT34は1両ではなく、一個大隊の36両というとんでもない規模の召喚だ。

 覚醒君での特訓やダンジョン実戦などで、魔力量はかなり上がっている。だから戦車1両なら自力での召喚も可能だったけど、2両目以降は魔石がなければ到底召喚しきれるものではなかった。


 俺の【三流召喚士】、アタリをひけばとんでもないチート兵器を召喚できるが、まだまだとんでもないものを召喚するかもしれない。

 いざというときに、魔力不足で不完全召喚は避けたい。だからこそグリアーチ将軍の魔石などは強力なアイテムとして使える。


 ふと視線を上げると、ルーナが眉間にしわを寄せていた。


「どうしたんだ? ルーナ」

「魔族副官の魔石がないですわ」


 ああ、いたな副官とか言ってたやつ。


 魔王軍第一軍団は俺たちの攻撃で大ダメージをくらった。

 さらに大将グリアーチを失い、混乱しつつ退却していった魔物たち。


 本来であれば追撃戦に出て徹底的に叩くのが定石なのかもしれんが、俺の召喚制限である1時間のタイムリミットがきてしまったのだ。


「たぶん、混乱に乗じて逃げ延びたんだろうな」

「ですわね……」


 ルーナは俺の事が魔王軍に知れ渡るのを危惧しているようだ。

 他の魔物たちはわからないが、あの副官には間違いなく知能がある。つまり俺の存在を魔王軍に伝えるだろう。


 だが、そこまで恐れる必要もない気がするな。なぜなら俺自身、何が召喚されるかはわからないんだから。

 毎回違う兵器が召喚されるのだから、対処の取りようもあまりないだろう。



「大丈夫だルーナ。俺の【三流召喚士】は、まだまだとんでもないものを召喚するんだろ?」


「ええ、そうでしたわね。ショウタさまは主人公ですから~~♪

 フフ~~今回もお疲れさまでしたわ」



 ルーナが労いの言葉をかけてくれた。


「わ、私も……ショウタさんが来てくれなかったら、どうなってたか……また助けられちゃいました」


「それはお互い様だ。シオリちゃんが戦車の弾薬を補給してくれなかったら、危なかったんだし。みんな無事で良かったってことにしよう」


「は、はい。そうですね!」


 シオリちゃんも頑張ってくれたからな。


「さて、あと俺たちはなにをするかな?」


「なにも無いわよ。帰ってゆっくり休みなさい」


 黒髪の凛々しいい剣士が言い放つ。


「お、いいのかリンカ?」


「あとはあたしとハヤトに任せなさい。それに女の子2人をこき使うんじゃないわよ」


 おっと、たしかにそうだな。


 ルーナはスキルを使って消耗しているだろうし。

 シオリちゃんも色々と頑張りすぎただろうしな。



「さて、リンカ。僕たちは手伝いに行こう。破壊された家屋の撤去やらで、力仕事も求められているようだし」

「そうね、暴れられなかった分、力は有り余っているから」


 2人とも勇者なので、一般兵士を軽く凌ぐ力を持っている。

 救助活動や復旧活動に大きな力となるだろう。



「ご歓談中に失礼致します。姫さまがた、馬車の準備ができました」


 そこへメイドのアンナさんが、タイミングを見計らったかのように現れた。


 では、帰りますか。


 俺たちが馬車に乗り込もうとした時に、1人の騎士が近づいてくる。



「ショウタ殿、お疲れのところ恐れ入りますが、王城に戻り次第謁見の間にお越しください」

「えと……俺がですか?」


「はい、国王陛下がお呼びです」


 うわぁマジか……それとなく避けてたけど。流石に呼ばれるかぁ。


 もう正直な話、めんどうなしがらみとか儀礼とか関わりたくなかったんだけどな。


「今回の件、すべてルーナ姫と勇者シオリちゃんの手柄ってことに出来ないかな?」


 全員の視線がこちらを向いた。



「「「「「いや、無理でしょ」」」」」



 全員が穴だらけの地面を指さす。



 ですよね……





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