異世界召喚に巻き込まれたおっさん、みんな勇者なのに俺だけ【三流召喚士】で外れスキル認定→速攻追放かと思いきや、なぜか姫が「これ最強のパターンですわ!きた~!!」と救世主様扱いで付きまとってくるのだが
第16話 さあ~~報告書を書きますわ~♪(姫) ちょっとまて!(おっさん)
第16話 さあ~~報告書を書きますわ~♪(姫) ちょっとまて!(おっさん)
「フンフンフ~ン♪」
「ご機嫌じゃないか、ルーナ」
ダンジョンから戻って来た翌日。第三王女であるルーナは上機嫌で何かを書いていた。
「お父様への報告書ですわ~」
なんだと!
これは校閲の必要があるな。
俺はルーナの背後から書面に目を通した。
〈たくさんの筒を出して、そこからたくさん出してとても興奮しました。
やはりショウタさまは本物です。今後の更なる覚醒を期待します〉
「よ~し、その報告書は処分させてもらおうか」
「なぜですの?」
なぜじゃないよ!
言葉足らずにもほどがある。
こんな報告書出してみろ。俺は完全に変態認定されるだろ。
まあぶっちゃけ国王にさして興味はないんだけど、間違った情報はやめて欲しい。
「あ、そうでしたわ。わたくしもさわらして頂いたんでしたわ。
とっても快感で興奮の連続でしたわ。あれは病みつきになりますわ♡ これも追加と♪~カキカキ」
ダメだ。とり上げよう。
前回に引き続き、報告書の奪い合いが始まる。
「こら! 早く渡しなさい!」
「やん♡ ダメです♡」
「♡を語尾につけるんじゃない!」
「だって♡ ショウタさまったら♡」
おっさんと姫がもみくちゃになっていると……
勢いよく扉が開いた。
「ど、どうしたんですか! ……って! ふぁ~~またイチャイチャしてるぅう」
「姫様を無理やりとかあり得ないんだけど……」
シオリちゃんとリンカの女子高生勇者だ。
完全に誤解しているようなので、慌ててルーナから離れて事情を話す。
「むぅ……そういうことなら。でも今度からイチャイチャする時は私も呼んでくださいね!」
いや、そもそもイチャイチャしてないからね。
おっさんは、自分の尊厳を必死に守ってるだけだから。
ちなみに、シオリちゃんを呼んだらどうなるんだろうか。
という邪な感情は、リンカがすごい顔で刀の柄に手を掛けたことによって吹き飛んだ。
余計な事は考えないようにしよう、おっさん斬られちゃう……
そのリンカがルーナの前に来て頭を下げた。
「まあ?どうなさいましたの? リンカさん」
「先日ダンジョンに同行させてもらったお礼をちゃんとしたくて。ありがとうございましたルーナ様」
「あら、そんなこといいんですのよ。フフ~そのお顔はなにか良い事がありましたのね」
「はい、早朝訓練の際にダンジョンでの成果を実感しました。多くの実戦を積めましたおかげです」
「まあまあ、それは朗報ですわ。ねえ、ショウタさま」
「そうだな。良かったなリンカ」
早朝訓練って。
リンカ、昨日の今日でもう朝っぱらから訓練してんのかよ……
おっさんなんかさっきまでベッドでおねむだったぞ。
「あら、ショウタ、寝癖なんかつけて。いいご身分ね」
んん?
あれ……はじめて俺の名前を呼んだような。
これは何気に嬉しいな。少しは彼女の誤解が解けたのかな。
「リンカ、腰の刀似合ってるぞ。凛々しい女剣士だな」
ちょっと馴れ馴れしく言葉を投げてみる。
「な……う、うるさいわね! あんたこそパンツ以外のものも出せるように訓練しなさいよ!」
凄く睨まれたあとに、彼女はプイッと顔を背けてしまった。
距離感がムズイ。ちょっと馴れ馴れしすぎたのか。この手のやり取りは、陰キャおっさんには不得意分野だからな。
「むぅう……なんかリンカちゃんとショウタさんが仲良くなって……怪しいです」
「な!シオリ! こんなおっさんなんでもないわ!」
結局おっさんか……。
まあ以前よりは反応してくれるようになったってことで。良しとしよう。
「フフ、みなさんの仲が深まるのは良い事ですわ。ショウタさまは魔王討伐に不可欠な人材ですから」
ルーナが会話に入ってきた。
「魔王か……そういえばダンジョンで魔族が言ったよな。第一軍団がどうのこうのと」
「ええ、ショウタさま。その件についても報告いたしますわ」
ゲルマだったか。魔虫を繁殖させていた魔族。
あいつが言うには第一軍団とやらが侵攻準備をしているとのことだ。
「だけど、軍団の規模や侵攻時期など不明点は多いな」
「そうですの。ですが得られた情報もありますわ【結界】というワードですわ」
そうだ、たしか【結界】を通るのに時間がかかるとか言ってたな。
「【結界】って、シオリちゃんも使えるんだよな?」
「はい、ショウタさん。【結界】なら昨日も聖女さまと一緒に補修してきました。聖女さまみたいな【結界】は無理ですけどね」
「癒しの勇者であるシオリさんが加わったことで【結界】が強化され、魔王軍も想定外な事態に陥っているのかもしれませんわ」
「ルーナ様は【結界】を張れないですか?」
「ええ、シオリさん。わたくしには出来ませんわ。【結界】は聖女やあなたのような選ばれたごく一部の人しか使えませんから。それにわたくしごときの魔力ではどうにもなりませんわ」
「そうなん……ですね」
少し間をおいて言葉を紡ぐシオリちゃん。
「いえ、お城の人がルーナ様は魔法の天才だって言ってたから」
「フフ、それは昔のお話ですわ。わたくし幼少の頃は人より要領がよかったんですの。でも所詮はそこまでですわ」
魔法の天才だと? ルーナが魔法を使うなんて一度も見たこと無いぞ。
ダンジョンでもポーション使ってたし。
魔力を使用するスキルにしても俺にしか使ってないしな。
「いずれにせよ更なる警戒は必要ですわね。さあみなさんは訓練にお戻りください」
俺が疑問に思っていると、ルーナが会話を終わらせておひらきとなった。
しかし、魔王軍か。
時間が稼げているならば、それでいい。
だが、なにか仕掛けてくるのは確実だろう。
◇◇◇
◇魔王視点◇
魔王領、魔王城。
「魔王様、ガルマ将軍は戻りませんゾ」
「奴が王城に行ってもう一か月にもなるのだ、もはや生きてはおらんだろう」
「たかが人間がガルマ将軍を倒すとは……未だに信じられませんゾ」
「勇者か……忌々しいやつらめ」
王国め、勇者召喚などと過去の遺物を引っ張り出しよって。
しかし、勇者召喚は王族にしか出来んはず。しかも高い魔力を持ったやつだ。
今後大きな戦力になるであろう身内を贄にしてまで、そんな成功するかもわからんものに賭けてきたのか。
つまり王国はもう後がない状況ということだ。
「【結界】の方はどうなっている?」
「魔王様、【結界】を破るには今しばらく時間がかかりますゾ。聖女に加えて【結界】に長けた勇者がいるようですゾ」
チッ……勇者どもめ。
「おい、別案はどうなっている?」
「はい、魔王様。すでに王国の【結界】内には入り込めたようですゾ。現状抑えた魔力を回復させているかと思われますゾ」
「ふむ。やつが行ったということは、いずれ【門】が使えるようになるということか」
「キヒ、そうですゾ。将軍自らが向かったのですからな」
「―――よし! では第一軍団の招集を急がせろ!」
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