第21話 ラブコメ宣言

「皆さんこんばんは。お疲れ様です。今、勤務中の方、お仕事中すみません。『総務課の沢渡くん』のタイトルロール、沢渡健です」

「こんばんは~。照屋アレサンドラ織絵ですッ。これから亜咲が書くらしい小説の主人公で~っす♡」

「相変わらずテンション高えな」

「ま、仕事終わりっすから! あっ、それにしても、健さんの小説、相変わらず読まれてなくないですか?」

「ああ、そうだよ。PV555で止まってるよ。悪いか?」

「でも、完結後でこの数字なら、胸、張れるんじゃないですか?」

「亜咲が、いろんな自主企画に参加したりして、売り込みかけてくれてる」

「好きなんっすね~、健さんのこと。お母さんみたい☆」

「おまえさ、本編でも♡とか☆とか、語尾につけるつもり?」

「そ~んなこと、するわけないじゃないっすか! これはあくまで、宣伝用です♪」

「それよりさ、オリ、これ読んでくれてる人たち、いきなりおまえが出てきて、相当、戸惑ってると俺は思うぞ? 自己紹介した方がよくね?」

「あっ、確かに! じゃっ、始めます!

 はじめまして、照屋アレサンドラ織絵です。あたしのママのパパ、つまりおじいちゃんは、沖縄のアメリカ軍基地にいた兵隊さんで、ブラジルにルーツがあります。あたしのパパは日本人です。あたしが四歳のときにパパとママは離婚して、それ以来、会ってません。健さんと同学年の兄ちゃんがいます。実は、兄ちゃんと健さんは、昔、会ったことがあるっぽいです。アレサンドラはおじいちゃんがつけてくれた名前で、戸籍上は『照屋織絵』なんですけど、あたしがこのアレサンドラって名前が好きなんで、プライベートで勝手に名乗ってます。えーと、こんなもんっすか、健さん?」

「そうだなー、これ以上語ると、ネタバレになるからな」

「そんで、あたしと健さんは、出会ってしまうんです!」

「だから、これ以上語ると、ネタバレになるって、俺、言ってるでしょ?」

「だめなんですかぁ?」

「そしたら誰も、読んでくれなくなるでしょ? 今、準備中なんだから」

「あ~、亜咲がやっと、あたしたちのこと、見つけてくれて、追っかけ始めたとこですもんね! ……あれぇ? なに、きょろきょろしてるんですか、健さん?」

「いや……余田とか遠藤が、ちらっと視界の隅に入ったような、入ってないような……」

「やだぁ、お友だちですかぁ? あたしにも、紹介してくださいよぉ♪」

「友だちじゃない! 断じて、友だちなんかでは、ないッ!」

「じゃあ、あのイケメンさんは? さっきのお友だちと一緒にいますけど」

「せっ、誠司さんッ!!!」

「きゃー、健さん、顔、真っ赤! 誠司さんて人のこと、好きなんですかぁ? きゃ~♡ ひゅーひゅー♬」

「こらっ、オリ!」

「きゃははは」

「おいぃ、誠司さん、笑ってるじゃねえかよぉ……恥ずかしい……」

「他のお友だち二人も、笑ってますよぉ?」

「あいつらにだけは、見られたくなかった! とにかく、オリっ、宣伝しろっ」

「は~い♪ 亜咲がこれから、あたしと健さんのお話を書きま~す♡ 書けたら投稿するみたいなんで、読んであげてくださ~い♡♡♡ 照屋織絵でした!」

「俺とオリの、ラブコメみたいです……。亜咲は初めて、ラブコメ書くみたいなので、時間はかかると思うんですけど、気長に待っててあげてくださると、俺も報われます……はぁぁ」

「やだも~、健さん? ため息なんかつくと、幸せが、逃げちゃいますよ?」

「もう、とっくに、逃げてる……」

「いいな~沢渡、モテモテじゃ~ん……」

「遠藤っ、そういうわけじゃないっ。ひがむなっ」

「た、楽しみ、楽しみに、してる、ね……」

「誠司さんっ、おなか抱えながら、言わないでッ」

「……ラブコメ……」

「てめえ、余田ッ! ウケてんじゃねえッ」

「きゃははは! 健さんのまわり、ノリ、いいっすねー!」

「オリ! 家に帰りなさいっ! 送ってやるから!」

「だいじょぶでーす。自分で運転して、帰りまーす♪ じゃっ、お先に失礼しまーす!」





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