第20話 自分を守れるのは自分だけ
約三日間、連載を放っておいた。ついでに小説についても、GoogleドライブからWordにコピー&ペーストするだけの作業しかしていない。昨日ようやく、カクヨムコンテストに応募する作品の推敲を行った。やはりスマホに直打ちしていた文面と、Wordに移し替えた文面は違う。スマホに直打ちしていた頃は改行が多すぎた。また、この作品は日本最大級の小説投稿サイトに発表していたものである。そのサイトでは一話分が二千字だと少ない印象を受けた。そのため一話分を一万字程度で投稿する方もいた。私は連載中の話数を五十話程度で納めたいため、一話分が一万字くらいになるように調節している。しかしカクヨムでは、それを長いと感じる方もいるのかもしれない。
『物書きの壁打ち』を放っておいたあいだ、久しぶりに文庫本や新書を読んだ。紙の本はやはり良い。手にした時に安心するし、書いたその人が確かにそこにいると触覚と視覚で実感できるからだ。むろん、カクヨムでも、書いたその人を視覚によって文字をとおして認識することは可能だ。私は日本最大級の小説投稿サイトと、イラスト・マンガ・小説作品の投稿プラットフォームしか利用したことがないため他の投稿サイトの使い心地を知らないのだが、カクヨムは特に作者の息づかいが見えやすい。まるでその人が私の目の前に座って、語りかけてくるような感覚すら覚える。
そう、目の前に座る人に語りかける感覚で書くというのが、エッセイの書き方の一つかもしれないと、昨日私は発見した。私は自分とは異なる職業や境遇の方々から話を聞くことが好きである。そうして聞いた話を小説に組み込んで書いたことがある。もちろんその時は個人を特定できないように配慮した。
おそらく多くのカクヨムユーザーの方々は兼業であろう。今年の芥川賞・直木賞受賞者を見ると、皆さん兼業作家である。有名な賞を受賞したとあらば職場にも知らせなければならないし、書籍化するとなれば当然副業申請もすることになるだろう。そうした場合、書いた作品によってはこんなふうに同僚から声をかけられるのではないだろうかと想像する。
「殺人事件なんて書いているけど、ほんとうに殺したくなった人がいるの?」
「会社が舞台になっているけど、まさかわたしたちがモデルになんてなっていないよね?」
「あの家族の話、うちにそっくりなんだけど、まさかモデルにした?」
「あの登場人物、〇〇さんのことを想定して書いたのじゃない?」
「虐待の話を書いてるけど、もしかしてあなたの経験なの? 家族や親戚に読まれたらどうするつもり?」
「主人公が通うあのスポーツジム、あそこじゃない?」
「ねえ、この会話も、小説で書くつもり? 録音してる?」
「あなたにこんな趣味があったなんて知らなかった」
まるで私たちが身近な人たちの暴露本でも書いているかのような疑問や感想である。しかしそれが物書きに対する世間の印象なのだと私は感じている。どのような職種でも守秘義務はある。どのような職種でもSNSに上司や同僚、お客様や取引先などへの不満を書き込もうものなら、それが職場にバレれば処分されることは間違いないだろう。特にあなたは、職場の自席でスマホを開いてSNSをチェックしていないだろうか。通りすがりの人がその画面を見て、偶然にもユーザー名まで確認してしまったら、容易にあなたを追跡できる。そのようなことからSNSへ投稿している内容が職場にわかってしまうケースが多いと私は聞いたことがある。しかも、これまた私が聞いた話だが、問題となる投稿画面をご丁寧に印刷して職場の責任者に提示する人もいるのだそうだ。私は驚き、あきれている。そこまで労力をつぎ込んで相手の投稿画面を注視し、その画面を印刷してまで密告するのか。そうまでして相手を罰したいのか。それをする彼ないし彼女は、相手が辞職すれば気が済むのだろうか。いかに相手に非があったのだとしても、密告されたせいで相手の心身が痛んだとしても、密告した彼ないし彼女の良心は痛まないのだろうか。もとい、密告する彼ないし彼女は、良心を持っているのだろうか。
私はこのようなケースを見聞きしたため、現在はスマホからカクヨムなどにアクセスすることはやめている。また、パソコンを入手したので、パソコンから閲覧したほうが単純に見やすいため、スマホを利用することがなくなった。
書籍化するとなれば編集者が細かく点検するであろうし、個人を特定できないように書くための助言もしてくれると思う。その書籍が売り上げがよければ、出版社は作家と作品を守ろうとしてくれるかもしれない。しかしアマチュアの私たちを守ってくれる存在はいない。自分の身は自分で守るしかない。
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