第14話 ボーイズラブにおける濡れ場の一考察

 カップめんに熱湯だと思ってポットから入れたお湯がぬるま湯だった。湯気が立っているのかどうか、確認すればよかったのである。当然味も歯ざわりも微妙なことこの上ない。やっちまったと臍をかんだが後の祭りである。


 さて、びくびくしながら濡れ場を書いた。

 運営様からご指導を賜ってしまったらいかがいたそうかと恐怖に震えながら脳細胞とタッチペンを動かした。

 その結果は、何事もなかった。ひと安心である。


 なにせカクヨム開催のコンテストにおけるデビュー作が「黒歴史」かつ「エロ小説家」の私である。皆様さぞかし濃度の高いエロ話を期待なさっているはずだ。

 確かに、女性向け十八禁小説投稿サイトに九月まで連載していたボーイズラブ作品において、微に入り細をうがった濡れ場を書いた。そのサイトでは皆様詳細な性描写をなさっていた。だから私もそのようにしなければ読んでもらえないと不安に思ったからである。

 しかし、私には無理であった。なにせインターネットで収集した情報をもとに、リアルに考え、かつ、心配してしまったからである。

 私が拝読した他の作家さんは、自由に性行為を描写しておられた。しかし私は、もし現実にこのような行為をした場合どうなるのだろうと、真剣に悩んでしまったのである。だから、できる限り二人が安全に性行為を完徹できるように段取りをする場面から描写した。

 すると、評価は伸びなかった。

 その理由を私なりに分析すると、私の作品が、そのサイトを愛用する読者が期待する性行為を提供できなかったからである。愛用者が求めるのは、たとえ男性同士であっても、文字通り濡れ、エクスタシーを際限なく感じ、長時間絡みあう描写だからである。私の作品にはそれがないと判断されたのであろう。


 他サイトにてボーイズラブを完結させて感じた。主役の二人が結ばれるまでがボーイズラブの醍醐味であると、多くの読者が思っているのではないか。

 それを証拠に、二人が結ばれてからの話以降は、閲覧数は十分に稼いでいるのだが読者の好反応が半減する。最終話の好反応獲得数は、最高値と比べるとその約十分の一にまで減少している。

 つまり多くの読者は、二人がお互いを意識し、お互いの好意を確認しつまり性行為に及び、これからも仲良くしましょうねと誓いあうところまでに魅力を感じるのではないか。

 お互いの好意を確認する性行為の描写についてはいくつかのパターンが考えられる。お互い初めて同士で手探りで行う、手慣れている方が経験が浅い方を導く、十分に経験を積んだ者同士が存分に絡むなど、バリエーションは多彩だ。そしてどのパターンに興奮するかは、人それぞれである。

 性行為つまりどんな濡れ場が好きかも人それぞれであろう。控えめの描写を好む読者もいれば、濁点や♡をふんだんに使ったあえぎ声の描写がたまらないと感じる読者もいる。

 すべての読者の好みを満足させることは不可能である。だから書く時には、自分の得意分野や強みをもとに、読者層をしぼることが肝要である。そして発表する小説投稿サイトを吟味することも必要だ。自分が評価されやすい場でのびのび活動することが一番だと私は考えるからである。



 そんな工夫を盛り込んだ濡れ場が登場する作品はこちら。


 総務課の沢渡くん - カクヨム https://kakuyomu.jp/works/16818093085215443547

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