第5話 気持ちよく活動したいだけ

 理不尽かつ不可解な批判だと私が怖くなるような感想を送られたことがある。

 繰り返す。怖かった。感想を受け取った小説投稿サイトを退会しようと真剣に考えた。

 しかし相手には悪気はない。相手の文章をいくつかサイト内で見つけて読むと、批判を送る理屈は共通していた。「褒めるだけでは相手は伸びない」と。その結果書かれた感想は、作品をよく読んだのかと問いたくなるような指摘だった。その人が同じ題材で書くとしたら私のようには書かないと言いたいだけではないかと思えるような指摘もあった。必死になって私の作品から攻撃できる針の穴ほどのポイントを見つけ出し、その穴に指を突っ込んで無理やり押し広げるかのような感想の書きぶりだった。

 一体相手は、私に何をしたかったのであろうか。その小説投稿サイトから私を追い出したかったのだろうか。私に書くことをやめさせたかったのだろうか。それとも私にも、厳しい感想を書いてほしかったのだろうか。

 いずれの理由であったとしても、相手は私の意向など零コンマ一ミリも考えていないと私は感じた。自分さえ満足すればよかったのだろう。

 相手の作品も読んだ。確かに悪くはない出来だった。面白いと感じる箇所も確かにあった。

 しかし私は、相手の文章から、自分は頭一つ他の投稿者より実力が抜きん出ているのだという自負を感じずにはいられなかった。

 しかも相手は、私にとってよかれと思って感想を送っている。相手の、サイト内で発表している文章を探して読むと、自分の主張が絶対に正しいと信じて疑わない表現が散見された。

 しかし作品を公の場に発表している以上、私の作品で心証を害する人がいることも事実だ。それに対して私は言い訳する立場にない。しばしば相手に申し開きをしたり説明したりしている人も見たが、私はそうするための言葉が作り出せない。むしろ危険を感じる。危険だとわかれば逃げるだけである。

 私は、私の作品を真剣に誠実に扱っていないと私が感じる感想を放置できるほど神経が太くない。だから私はそのサイトから作品だけでなく投稿した文章やつけた評価をすべて削除し、投稿を一切やめ、退会した。

 それまではカクヨムを含め合計三つの投稿サイトで活動していたが、確認するだけでも時間を取られる。ブックマークリストにそのサイトがあるだけでも気分が重苦しくなる。

 退会した理由を入力する欄があったので回答したのは、理不尽かつ不可解な感想を立て続けに受け取ったこと、閲覧されるだけで評価をもらえないことの二点だ。

 そもそもそのサイトに投稿を始めたのは、もっとたくさんの人に私が書いた小説を読んでほしいからであった。それにも関わらず一年で退会する羽目になるとは、登録した当時は予想だにしなかった。

 しかし残念だとは思わない。胸のつかえがとれた。

 確かに、多くの人に読んでもらえた。それは嬉しかった。しかし、どの話を何人が読んだか確認できるページを見ると、連載小説にも関わらず、とばし読みされていることに気がついた。まるでつまみ食いのように読まれていると知り、私の作品が大切に扱われていないと感じた。

 しかも、評価がなかなかつかないことは堪えた。読者のニーズに合わなかったからかもしれないし、評価に困ると思われたのかもしれない。むなしかった。確かに書いている最中は楽しい。評価や閲覧数に関係なく書きたい作品を書けばいいとなかば無理やり思い込んでいたことも事実だ。

 それを踏まえてさえ、反応が薄いことに私の精神はすり減った。

 だから退会したのである。


 話は変わるが、現在利用しているいくつかの投稿サイトで、私からはその人の作品に何のアクションもできないことがあった。理由はわからない。これが「ブロックされた」ということなのか。

 仮にブロックされているとする。しかし私には何ら支障はない。ブロックしたであろうその人が精神的な安定を得るだけである。

 ブロックするという行為は自分も他人も危険にさらす行為だと私は思っている。

 ブロックされているとわかると、さらに相手を刺激する行動を取る人がいるかもしれないと考えるからだ。その人が別のアカウントを作り、さらに相手に働きかける危険性も生じる。

 相手を刺激したいと考える人は、「自分だけがブロックされた」と思うからこそ、さらに相手に対する感情を高ぶらせてしまうのだと私は見るからだ。


 気持ちよく創作活動をしたい。それが私の切なる願いである。


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