第35話 のんびり


 今は紗季の復学が決まり、一息つけている。


「あとは家だけだな。どこか学校から近いマンションを借りれればいいが」


「ああ!?」


 家を見つけるためにアプリでマンションを探しているとスマホを紗季にかっ攫われる。


「お兄! だめだよここから出ていこうとするのは!」


 よほどここの住み心地が良かったのか、紗季が静止をかけてくる。

 歓迎してくれているようだが、他所様の家だからな。


「これ以上迷惑になるのもな」


「迷惑じゃないよ! 優恵さんは『世界が輝いて見える』っていうくらいには喜んでるし!」


 大袈裟な。

 リップサービスだろ。


「お、おはようございます」


 俺は内心で突っ込んでいると心なしか顔が青いような気がする優恵が挨拶しながら紗季の肩に手を置く。

 仲良しのスキンシップも見えるが何かを静止しているようにも見える。

 まあ仲良しのスキンシップなのだろうが。


「私のことについてはさておき、快晴は配信で名前が知れているので紗季のことを考えるならウチが一番いいと思いますよ。有名人の借家住みはかぎつけてきた人が自宅に来たり、玄関で待ち伏せしたりするらしいですし」


 マンションの前に来られたりするのは紗季が危ないな。

 この前ミカさんが攫われる現場を見たばかりだし、そういうのには気をつけたい。

 セキュリティ面で言えばカメラも守衛もいるし、ここが一番か。


「確かにここが一番だな。ほとぼりが覚めるまで頼む」


「いいですよ。ここにいることは気にしなくてもいいですから」


 頼むと一つ返事で優恵が快諾してくれる。

 懐にいる時は本当に仏のような心の広さだな。

 しばらくはここでのんびりさせてもらってから恩を返すことにするか。



 完


 ──


 お読みいただきありがとうございました

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

超人気ダンジョン配信者の妹が謎のクソ強底辺ダンジョン配信者に助けられて家の金を貢ぎまくっているようなのでお兄ちゃん動きます 竜頭蛇 @ryutouhebi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ