第34話 お兄ちゃんに負ける超人気配信者


「すご……」


 配信者としての立場を忘れて、一人で人間がモンスターの大群を倒した様子に目を奪われる。

 配信の同接は過去最高になっているというのにミカの目には入ってなかった。


 ・強すぎて草

 ・お兄がまた無双してて草

 ・クソ強そうなゴブリンワンパンは草

 ・兄パンに勝てるやつおらんくて草

 ・知らん間に二人犬神家になってて草

 ・追加で二体人型モンスターが来てたぞ

 ・俺でなきゃ見逃しちゃうね


「ミカもう配信は終わっていいよな?」


「あ……」


 ドローンのコメントを読み上げる声と快晴の声で平静を取り戻し、咄嗟にミカはスマホの画面を見るのをやめて顔を上げる。


「いいよ」


「了解。──じゃあこれで配信を終わります」


 配信の終わりを告げ、ドローンの撮影が自動で終了し、ミカの足元に着地する。

 先ほどの快晴が映っている配信に圧倒されたことでミカはあることに気づいた。

 自分に魅力がないことに。

 ルックスも良く、配信者の中ではそれなりに強くはあるが別に配信者『ミカ』としての魅力はない。

 だから快晴が配信している間、快晴の魅力の前に『ミカ』は掻き消えてしまった。

 コメントに誰もミカがいないことを指摘したり、不平を訴える声がなかったのが何よりもの証拠だった。

 自分のチャンネルであるというのにその主である『ミカ』は必要とされていなかった。


「お兄ちゃんってさ。ずるいよね」


「うん? 何がだ?」


「いやなんでもない。今日命助けられちゃったし、今日の配信で満足しちゃったから明日の配信はいいよ。約束通り、おじいちゃんに妹さん学校に復学させてもらうようにしてもらうから。じゃあね快晴さん」


 ひらひらと手を振ってミカが去ろうとすると快晴が横に並んだ。


「まだ狙われてる可能性もあるし、理由はわからないけど辛そうで放って置けないからな。家まで送ってくよ」


「優しいねお兄ちゃん」


 快晴の優しさでミカは感情がぐちゃぐちゃになって涙が流れそうなったが、個人的な感情で迷惑かけるのは快晴に悪いなと思って堪えて快晴とともに帰路に着いた。


   ───


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