第16話 時の人となっていたお兄ちゃん


「すごいバズってる」


 ホストのダンジョンでの悪事を配信するという前代未聞のダンジョン配信を行った超人気配信者ミカはパソコンのディスプレイを見ながらほくそ笑む。

 普段の十倍近い再生数に、それに伴ってどんどんとチャンネル登録者数も増えている。

 同じく配信者であるアカリの話に乗ってよかった。

 普通に企画をしてもどんなにうまくいってもこうはならないんだから。


「電話鳴ってるし……。週刊誌かなんか?」


 見ると予想とは違い幼馴染からだった。


「ユエ? こういうの興味ないタイプだと思ったけど……。もしもし?」


『久しぶり。ミカ。知り合いに頼まれて一人高校中退した女の子をそっちの学校に復学させたいんだけど』


「二年ぶりに電話してきたと思ったらいきなりだね。あたし今忙しいんだよね。その知り合いがあたしにとって有益な人なら受けないでもないけど」


『依頼人は今日君と配信してた快晴。時の人になってるし悪くないでしょ』


 面倒だなと億劫な気分だったがその名前が気持ちを一転させる。

 快晴は今ダンジョン配信で話題に上がっている人間だ。

 いきなり身内の暴露配信をして、ホストを殴った後、忽然と消え、炎上している健太と同等以上に話題になっている。

 ネットではもうすでに、ダンジョン最強の男、ダンジョン発掘物が通用しない超人、両成敗マン、アニパンなど数多くの呼称が生まれ、時の総理大臣を超える知名度を獲得していると言ってもいい。

 今喉から手が出るほど欲しい人間の一人だ。


「悪くないね。あたしのダンジョン配信に協力するって条件なら受けてあげるって告げて」



 ────



『ITADAKI』本店。

 都内各地から支店の店長が招集をかけられ集まっていた。


「今現在ウチは逆境の只中にいる。もはやこれほどのことになってはダンジョン配信者から絞りとることは不可能。だがダンジョンで金が動いているのは確かだ。これを無視することはできない。ダンジョンで新たな稼ぎ方を編み出した店には特別に追加で予算を渡す」


「「「は!」」」


 ダンジョンでの稼ぎについて告げられた店長は一斉にその場から立ち去り姿を消した。


    ───


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