第14話 チラチラ見てくる妹
さすが妹、渋っていた快晴を納得させた。
もはやダメかと思っていただけに優恵は救われた気分になる。
危うく先程優恵と紗季が練った『なし崩し同棲計画』がおじゃんになることは避けられた。
このままホームグラウンドの家に繋ぎ止められれば、単純接触効果で顔を合わせる度にジリジリと好感度が上がっていき優恵の勝利──交際は確定と言ってもいい。
「じゃあちょうどお夕飯の時間ですし、食堂に案内しますね」
そんな恋愛初心者ゆえの心理学効果編重の甘い展望を抱きながら食堂へ向かい歩き始める。
「めちゃくちゃ丁寧だけど口調どうしたんだ? 家が礼儀マナーにうるさいのか?」
「!?」
洗練された歩法でお嬢様ムーブをかましていると突如耳元で快晴に話かけられ、心臓が飛び出しかける。
意中の相手からの不意打ちで平静が乱れるが、不測事態は当たり前のダンジョンで生き残ってきた雄である優恵はすぐに建て直す。
「そんな感じ」
貴方のとの仲を取り持ってもらうために貴方の妹の尊敬できる姉的存在を演じてますとは言えるわけもないので、快晴の予想に沿ってお茶を濁す。
「大変なんだな」
耳元で優恵のみに特攻がかかる囁きASMRの残響を残すと快晴が離れる。
心臓が早鐘を打ちまくっているが楚々とした表情を取り繕ってそのまま歩いていく。
「左右の席に座って下さる」
「す、すごいよお兄! テーブルになんか綺麗に折られた紙が置いてあるよ! 庶民との格の違いが食べ物が出る前から歴然としてるよ!」
「落ちつけ紗季。人様の食卓でそう騒ぐもんじゃない。紙は紙だ」
テーブルに着くように言うと、竹内兄妹──快晴と紗季がテーブルを見て喫驚する。
稼いでからも貧乏性が抜けず豪華な食事と言えば、バイキング止まりだった二人にとってはそれは未知の光景だった。
生粋のお金持ちが放つ覇気に圧倒される。
可愛い。
そう思いながら優恵は思いがけずいいものが見れたなと思いながらその様子を眺める。
「お待たせ致しました」
そうしていると間もなく一口台の豪華そうな食事──アミューズ(お通し)が出され、ここ三日固形物を胃に入れてない紗季がすかさずフォークで刺し、喰らう。
テーブルマナーを知らないために快晴が躊躇するとあることに気づく。
「なんか誰かの顔に見えないこともないよな」
獲物が罠にかかった様子を見て内心で優恵がほくそ笑む。
料理には単純接触効果で関係の修正の促進を目論む優恵によって料理人に優恵の顔を想起させるような細工をするよう伝達されており、この料理の盛り付けはよく見るとなんとなく優恵の顔に見えなくはないものになっていた。
「紗季の顔だな」
「え!?」
だが重度のシスコンであり、すでに生存するための強い暗示がかかっている快晴の認知の壁を越えられず、不発。
「なんだか優恵さんが恋しくなてきたような……」
その一方で暗示に滅法かかりやすい紗季にクリティカルヒット。
若干紗季の目からお姉様的な情念を感じて優恵は身震いする。
身の危険を感じる。
「テーブルマナーがわからないから、なんだかどうやるのが正しいのか気になって食べられない。よければ教えてくれるか」
内心で冷や汗をかいていると快晴が優恵にそう申し出して来る。
「しょうがないですね。も〜」
意中の相手から頼られた事に気を良くした優恵は危機感も忘れ、紗季からチラチラ見られていることに気づかずに快晴にテーブルマナーについて教え始めた。
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