第13話 うん? 妙だな……



「店は炎上後即閉店発表。本人は家にも実家にもおらず完全に行方不明か。炎上の影響力は想像以上だな」


 優恵が紗季の血で汚れた服の着替えをして寝かすというので居間で待ってる間に、ネットで炎上の動向を確認すると想定以上の結果に驚く。

 客との信頼によって成り立つ商売とはいえ一夜にして店が一つ消えるレベルのものごとになるとは。

 炎上はニュースなどで知っていたがここまで極端になるとは思っても見なかった。

 過去の例を見てもこれほどのものはないので、影響力のある人気配信者に被害を与えたことでこれほどのものになることに繋がったのかもしれない。

 職も失い、目立った動きをすれば有名配信者たちのリスナーによる制裁をすぐ受けるこの状況ではもはや顔を売るホストでは働くことなどできないだろう。


「これで本当に終わったな」


 短いようで長かった。

 1週間炎上させる準備を整えている間も家もなく貢いているため金銭的余裕もない紗季のことが心配でしょうがなく、再会するまで本当に長く感じた。

 ある程度感情が抑制されていたのでなんとか持ったが、二度と同じ思いはしたくない。

 思い出すとぶり返すのでこれからのことに意識を割くことにする。


「これから新しい家とできれば紗季が復学できるようにしなきゃな」


 後者については絶望的ではあるが、なんとか働きかけることだけはしたい。

 俺にとっては命をかけて学費を稼いできたのに、やはりこのまま終わりというのは諦めがつかないし、大学に行きたいと言ったのは元々何か夢があるはずだ。

 恥ずかしがってはぐらかされたままだが、できることなら叶えてやりたい。


「お兄、迷惑かけてごめん」


「紗季、大丈夫になったんだな」


 そうどうにかできないものかと頭を巡らせていると紗季が優恵と共に居間にやってきた。

 流石に痩せ細ったままではあるが、傷は回復して血色もいい。

 ボロボロだった姿を見ているだけに目頭に来る。


「気にするな。お前が無事なら俺はそれでいい。悪いな優恵、何から何まで。本当に助かった。これ以上迷惑をかけるわけにはいかないし、俺たちはそろそろ出ていくよ」


「ここにいればいいですよ。色々と大変でしょう。困ればお互い様と先ほど言っちゃいましたし」


 どうして敬語なんだこいつ。

 一瞬疑問が浮かんだが使用人たちの姿を見て納得する。

 お嬢様だからダンジョンの時のようにザックバランだと小言をもらうのかもしれない。

 服もなんだか短パンタンクトップのラフな格好から高級そうなワンピースに変わり、いかにもお嬢様然とした格好をしているし。


「そうは言っても──」


「お兄。こんな天上の上の人みたいな人に恥をかかせちゃダメだよ。天罰が降るよ」


 天罰……。

 うちの妹は信心深い方じゃないので本人の口からは初めて聞く言葉だ。

 なんとなく引っかかるものを感じるが病み上がりの紗季を街中で歩かせるのが良くないことは確かだし、ここはお言葉に甘えるか。


    ───


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