第54話 亮くんと捜索再開

 表情から相応にへこんでいるようだと思っていたけれども。

 

「ずっと探せなくて、悪かった。色々と考えることが多くて……でも少し頭が冷えたし、これから捜索を再開しようか」

 

 そういって、亮くんは浮かない表情で捜索を開始することを宣言した。


「本当に大丈夫なの?」

 

 私の回答に、曖昧な表情を浮かべる。

 

「今後の事は、探してから決めることにした」

 

 相変わらずのよくわからない回答だったので、私は流した。

 気持ちを切り替えて、どこならあるかと試行錯誤を張り巡らす。

 

「でも、別邸は探しつくしたよ」


 そうなのだ。

 結局、亮くんと数日かけて別邸をさがしたけれども、隅から隅まで何もなかった。

 

「探すべきはまだあるだろ?なにせ家の中なんだから」

「図書室も探したし、あの研究施設は違うの?」

「あれを加えたら、もう家の定義がおかしくなるからな。とはいえ、念のためじいちゃんに無関係であることを確認しとく。あと、他に探してないところは?」


「全然わからない、庭とかはあり得ないよね?まさか埋めたりなんて……」

「それはもはや……家の中にある、とはいえないだろ」


 私の絞り出した答えに、ツッコミをいれる。

 まあ確かにそれもそうだ。

 どこまでが家なのか、といわれると難しいところではある。

 

「灯台下暗し、って昔からいうよな? 探してないところがあるかも」

「さすがに灯台とはいえないけど、この屋敷って、屋根裏部屋とかあるの?」

 

「どうだろうな……ないとはいえない。そういえば家の展開図が俺の部屋にあるから、そっちに行くか」


 そういって、亮くんと自室へと戻る。

 展開図を確認すると、これまでの間にそこそこの場所は探しているようだ。

 

 屋根裏部屋と地下室を捜索したが、そこには何も――……本当に何もなかったので、この日の捜索は終了となった。

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