第27話 捜索開始③

 私もつられて、亮くんの隣に座り、目の前にある段ボールへと手をかけた。

 

 木箱の中から出てきたのは、古びた写真。

 あまり人が入らないのか、ホコリがかぶっている。


「ここは貴重品が多いからな。中には、国宝級の文化遺産に値するものもあるらしいぞ。だから、原則――俺ら以外の他人の出入りは禁止になってる」

「え、そんなとこ……私が入っていいのかな?」

「じいちゃんがいい、っていってただろ」

「でも、例えばここで、万が一何か壊しちゃったら――」


 例えば、”国宝級の文化遺産”をうっかり壊したら、死んで詫びます! で済むだろうか。

 

「それはさぞ楽しいだろうな? 借金が増えるだろうし。一生かけて返済だ」

「――もっと怖くなってきた、違う意味で!」


 ぶるぶると震えながら、木箱を開ける。

 箱を次々と開け、さばいていくが量が何分多い。

 とにかく割らないように、どれもこれもそっと慎重に置きたかったけれども。


 すると木箱の底がバキッという音と共に砕け落ちる。

 

「え!?」

 

 想定外に理解が追い付かず、私は落ちるものが壺と把握するのがやっとで――

 瞬時に横の亮くんが、倒れ込むように零れ落ちた壺をキャッチした。

 

「……驚かせるなよ、ってか壊さないように気を付けるっていってたのに、早速壊しそうになってるし……」


「ありがとう、亮くん」

 

 キャッチしてくれなかったら、割れていたかもしれない。

 木箱の破片には烙印が押されていて、歴史すら感じる。

 これは、鑑定したらきっと高かっただろう。

 

「今度は気をつけろよ」

 

 そういって亮くんは、ゆっくり体を起こし段ボールに壺を戻す。

 

「運動神経すごいね?」

「お前がトロいんだろ」


 あっさりと言い放つその返しはヒドいけど、助けられたのは事実だ。

 亮くんが段ボールを持とうとした瞬間、声をあげる。

 

「――痛ッ」

「どうしたの?」

「いや、背中痛めたかもしれないな……」

 

 倒れた際に、亮くんの態勢が悪かったのだろうか。

 申し訳なさに亮くんの背中を――そっとさする。


「……大丈夫?」

「ちょ――……っと待て待て!お前な!?前もいってるけど、俺に触るなってば!」

「……あ、ごめんね。でも、痛かったかな、って思って。……やっぱ、迷惑ばかりかけて怒ってるよね?」

「どちらかといえば、今触られたことに対してだけどな!」

 

 私に全力ツッコミして、亮くんはぶつぶつと文句をいいながら私から大きく離れた。


「もういいから、とにかく探す気があるなら、黙って手を動かしてくれ」

「うん」


 気まずくなって、もくもくと作業していると、なんだか申し訳ない気持ちと、寂しいものが両方込み上げる。これだけ頑張ってさがしたのに、結局この日は何も見つからなくて、日記捜査は打ち切りとなった。

 

「さんざんな目にあった。結局、日記なかったし」

「ごめんね、でも、協力ありがとう」

 

 亮くんは、疲労をにじませた表情を浮かべ、ヨロヨロと部屋へと戻っていった。

 

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