第24話 利害の一致

 亮くんが寝ている間、私なりに日記を探せる範囲を探してみよう。


 そこで、アタリをつけたのは図書室だ。

 木の葉を隠すなら森の中、というし本棚に隠してあるかもしれない。


 幸いにも鍵はかかっておらず、図書室もそこまで広くない。

 静かなのが少し気になる程度で、心ゆくまで一人で探せるのはありがたかった。

 

 探した場所を手帳にメモし、捜索していく。

 本を開いてしまうと時間が失われるので、開かないようにし、ざっくりと探していく。


「ねえ、君」

 その響く声だけで、背筋が冷える。振り向かずとも誰かわかってしまう。

 

「な、ぎくん……」


 先日一緒にいた美人さんはいないらしく、今日は一人だ。

 密室で二人きり――前回の脅しが脳裏に浮かび、緊張が走る。

 それを感じ取ったのか、凪くんは静止するように、片手をあげた。

 

「大丈夫、事情はじいさんから聞いてる。君、日記を探してるんでしょ?」

「そうですけど」

「協力する。俺も一緒に探すよ」


 笑顔をこちらにみせ、凪くんは私の目の前に立った。

 

「……自分で探すので……別に……大丈夫です……」

 

 焼けつくような喉で、やっと声を絞り出す。


 凪くんはいまだ私の中ではあまり会いたくない、というより関わりたくない人物だ。

 私は慌てて図書部屋から出ようと、ドアへと近寄るが凪くんに回り込まれる。

 

「心配しなくていいよ。俺は君をこの家から追い出したいだけで、そういう意味では利害は一致している」

「そういうことなら……凪くん、私は他の場所を探すから……この部屋を使うならご自由にどうぞ」

 

 言葉が震えていたのは否めない。

 もしかしたら、身体そのものも震えていたかもしれないけれど。

 

「いいや、伝えたいことだけ伝えたらいく。でもその前に1つだけ、確認するけど――君自身、どこにあるのかわからないじいさんの日記……本当に、探せると思う?」

 

 その質問に対し、私は思い切り頷いた。

 それは、間違いなく。

 

「はい、絶対に探し出します。おじいさんや、亮くんのために」

 

 絶対に、探し出して見せる。

 ここは、これだけは譲らない。譲れない。

 例え凪くんだろうと、私はそのことに対しては――視線をそらさないし、はっきりとそう断言できる。

 

 凪くんは私の瞳をしばらくの間じいっと見つめた。


「じいさんのいいたいことが、わかった」

「え?」

「君は、日記をか……だから……」


 少しだけ凪くんの顔が悲しそうに歪んだ。前回よりかは軟化したようにも思える態度――……何か、あったのだろうか。

 

「……見つかるかわからないけど、頑張って。それと、今までのことだけど」

  

 凪くんは私を図書部屋へ残して、出て行こうとする。


「……ごめんね」

 

 閉まる扉の奥で、凪君は何かを考えるように――していたのがとても記憶に残ったけれども。

 

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