第14話 信じられない言葉
どうしたものかとじっと動かずにいたら、今度はノックなしで扉が開き誰かが部屋に入ってきた。
「あれ、お邪魔だった?」
声の主は、凪くんだった。
「と、いうより――君、相手は樹じゃなかったの? 意外と節操ないんだね」
「全然完全に本当に、何もかもが違います!!!」
私は叫びながら、凪くんを睨む。
亮くんは、凪くんのそのセリフと私への距離感に我に返ったのか、耳から頬まですべて染めきった後、ものすごい勢いで反対側の部屋の壁へと後ずさっていった。
気づいてくれてありがたいけれども、本当に自分の行動の自覚がなかったんだ……。
「亮くんはともかく――凪くん、どうしてここにきたんですか?」
「俺はともかく?」
凪くんは私に関わらない、ってさっきいったばかりなのに。
この部屋にくる意味はない。
矛盾している。
「俺はともかくって何?」
亮くんは再び私へと近寄った後、袖を掴んできた。
「君のいいたいことはわかるよ。俺も同じだったけど。だからこそ、ちょっと話があったんだけど」
「私は、もう凪くんとお話なんてありません。というより――話したくありません」
「それが、君の借金に関わることであっても?」
「――!」
その言葉に、さすがに躊躇した。
話をするべきか、否か。
まさに現金なお話ではあるのだけれども。
返答を待てなかったのか、沈黙は肯定とみなされたのか、ともあれ凪くんは私の部屋のソファーに勝手に腰かける。
「え、俺……二人にめちゃくちゃ無視されてる……?」
亮くんはなにか、ひどくショックを受けているようにもみえる。
「あ、ごめんね……亮くん。無視とかそんなつもりじゃなくって。また今度きてくれたら、粗茶でも出すから」
「いや、そういうことじゃないし……」
「亮、ちょっと外でてくれる?とても大事な話でさ。二人で話したいから」
「あ、ああ。でも部屋に二人きりで大丈夫――だな。うん、コイツ相手に無いわ。絶対大丈夫だ」
亮くんはぶつぶついいながら自分の言葉に一人で納得をしたような表情を浮かべ、さっさと立ち去っていった。
――この兄弟は、揃いも揃ってなんて失礼なんだろうか……。
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