第3話 そっちの告白!?
そしてやってきた放課後。
事件(?)は、そうして、起こった。
ひとまず、ご要望に応えて矢継くんを休み時間に屋上に案内した。
二人で向かおうと歩いていくと、たくさんのギャラリー《クラスメイト》たちがなにかのイベントがはじまるのか、と楽しくついてこようとした。
――ので、矢継くんはそれらを押しのけるようにして屋上への扉を閉める。
一応、金属製のその扉は厚いので屋上での私たちの声は聞こえないはずだ。
そして困惑しながら、対面する私たち。
「それで話、とは……?」
「いう前にもう一度確認するが、お前は佐々木愛理、で間違いないな」
「そうです」
吹き荒ぶ春の風。
放課後に屋上で。
高校生の男女が二人きり。
どう考えても告白パターンなのだが、矢継くんはしっかりと腕を組みながら、なぜか威圧的だ。
「よし。じゃあ、よく聞け。いいか、俺は、絶対惚れないからな。お前だけは、確実に好きにならないからな! 肝に銘じておけよ?」
言われた言葉を、私は、一言一句、しっかりと聞いた。
「……はい?」
聞いたのだが……思わず声にでたのは心底意味が分からない、という意思表示での本音だった。
「なんだ、その返事は。お前……本当に、わかったのか?」
「えーと、確認しますけど、私のことを絶対に好きに、ならない、んですよね?」
「だから、今、そういっただろ」
「わからないけど、わ、わかりました……?」
「どういう返事だ。それ、わかってないだろ」
うわぁ、混乱してきた。
心底意味がわからないけれども、なぜか転校してきたばかりのこの超絶に美男子で秀麗なイケメンくんに――私だけは好きにならないという告白を、されてしまったのだ。
なんで、そんなことをわざわざ?
屋上に呼び出してまでいうことなのかな?
なんていうか、矢継くん、ってちょっと変なのかもしれない。
頭の中で彼の言葉がぐるぐると回るけれども、でも問題なさそうだから、まあいいか、放っておこう。
「――う、ちょっと言い過ぎたか?あまり気を落とすなよ……?」
突然言われた言葉に「はあ」とようやく声に出し、ヨロヨロと扉に向かって歩き出す私をみて、ショックを受けているかと思っていたようだ。
今度は戸惑いの表情へと変わる。
自分からいったくせに何を言ってるんだろう、このヒト。
しかし私はそこに構わず、発言そのものが随分と私のシャクに触ったため、思わず声をあげた。
「あの……お互いさま、ですから」
その言葉に、矢継くんは今度は”はぁ?”といいたげな表情を浮かべた。
これ以上のやり取りするのも面倒だったので、重くぶ厚い屋上のドアを開ける。
すると、たくさんのクラスメイト達が私の目の前に現れた。
何をいわれたのだろう、二人きりで、一体なにが――と好奇心の視線。
でも、かまわず私は頭を抱えながら春香ちゃんの元へと歩いていく。
「……なんていわれたの?」
春香ちゃんに問われ、私は盛大にため息がもれてしまった。
「私の事、絶対に好きにならないから、って宣言された」
「え……そっちの告白……?」
春香ちゃんが、デッサンが崩れるほどに呆然としている。
みんなに筒抜けだけれど、どうでもいいという気持ちの方が上だ。
男子生徒は苦笑い、そして女子生徒たちはライバルが減った!とばかりに安堵しているよう。矢継くんは早くもこんなにたくさんの女子に狙われているのだろうか。
でも、その中で唯一山中くんだけが、笑わずに私の方をじっと見つめ――いや、観察、していたような感じだったのが気になったけれども。
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