S-1

「君はS-1の正体を知っているかい?」

「いいや、全く」

S-1とは10年前突如として現れた龍の形を模したアメーバの様な物の集合体だ

当時世界はその存在に疑問を持ち、恐れたが現在は殊勝な研究員ら以外は興味さえ失った

「どうでもいい、だろ?」

賢司はそう言った

「そう...だけど何か最近になって気になるんだよ、こう...低空飛行じゃないか?それに最近視線を感じる」

「いやいや、それは気のせいも甚だしいよ、大体人間は視線を感じる事はできない」

そうして話していると窓の外でこちらに走ってくる人がいる

「おや?客か、珍しいね」

客が階段を上がって来る音が聞こえる


そうして扉をノックする音が聞こえる


「どうぞ」

「賢司さん!」

彼は賢司と交友関係が深い人物、鎌谷カマヤさんだ

「鎌谷さん、今日はどうしたんですか?」

「賢司さん、最近変なんですよ!」

「落ち着いて」

賢司は冷徹に突き放すようにそう言った

「妻に...言いたく無い過去がバレたんだ」

「ほう!それは奇怪な、君の秘密は大抵僕以外知らない物だが...僕は勿論バラしたりしてはいないよ」

「疑ってはいない!何せ君が知らないような秘密も周囲にバレていたんだ...ありえない」

「成程、それじゃ君の家を調査させてもらうよ」

「ああ、頼む、君しか頼める人はいないんだよ」


そうして鎌谷氏宅の調査が始まった


そうして三週間が経過した

「不気味だ、これほどまでに何も情報を得られないとは」

賢司はそう言った

「にしても最近はアメーバがやけに低く飛んでいる気がしてならない、気になってしまうな...」

鎌谷氏がふと漏らした言葉に僕の背筋が凍った

「やっぱりそうですよね、僕も気になります」

「何?気のせい...じゃないなこれは」

賢司が折れるほどには低い高度だ


賢司と鎌谷氏は調査を進めている


調査を進めると虚妙な現実が我々の前に浮き彫りとなった


実に数十名、もしかしたらそれ以上の人間が鎌谷氏と同じような目に遭っているらしい

小さな事件や秘密の暴露が立て続けに起こっているらしい


街に混乱が訪れようと...いやもう既に訪れている

賢司もまた、異常を感じ始めていた

それ故か彼の顔は圧力がかかったかのように緊張が走っている、調査を続けているがいつもの冷静さが欠けているように見えた


何かが覆い被さっている、

この事件...いやこの街に


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