第4話ポーションが買えない!?

 チェックポイント3を抜けたところで、ザダクの町に辿り着き、一泊してからアイテムをたくさん購入して、また森に分け入った。


 以降、山を二つ超えて、ヴェーダ山の麓にある村に立ち寄った。

 いよいよ最後の村となるため、酒場で作戦会議をしながら、地ビールを堪能した。

 さすが山間地帯とあって、保存食であるソーセージやチーズが抜群に美味しい。

 ほとんど料理に手をつけていないフリックが言った。


「チェックポイントは6まで来たか…この村を出たら、いよいよ山奥にある魔窟だが…」

「そうね、魔窟に入る前にチェックポイントとなる場所があればいいけれど…」

「明日の朝、出立前にできるだけポーションを買い足しておかないとな」


 すると、レントとディエゴが目を見合わせて言った。


「すまなかったな、メイリー。お前の作戦のおかげで、みんななんとかここまで来れた」

「ほんと、俺たちじゃちょっと考え付かなかったし…というか、この冒険がちょっと無謀すぎるんだけどね…」

「ふふ、みんなのお陰よ、ありがとう」


 蝋燭の光が心許なくゆらりと揺れる。

 珍しくフリックがグラスを掲げた。


「明日からいよいよ旅は過酷になる。必ず生きて帰ろう」


 四人はグラスを合わせた。

 レントは、ぐいっと飲み干してすっかり空になった杯をひっくり返してテーブルに置いた。

 このグラスをまた使うという表現で、それはつまり酒場では「うまかった」「腹一杯」「行きつけにする」というような意味合いである。


「さて、俺たちは先に宿に戻ってるぞ」

「ああ、僕はもう少し飲んでから戻る」

「私も、このチーズをもう少し食べたいわ。二人とも先に戻っていて」


 今日は何だか眠れそうになかった。握った拳が震えている。


(私、怖いのだろうか)


「…メイリー。考えたんだが、君の剣に魔力を込めて魔剣にしてみたらどうだ?」

「伝説の剣を私の手で改造して良いもの?」

「生きて帰る方が大事だろう」

「そうだけど…」


 酒が強いはずのフリックが、今日は顔が赤くなるほど酔っている。


「フリック、飲み過ぎじゃない?」

「今日は少し酔いたい」

「っ…!」


 酔ってとろんとしているのに、意志の強い眼差し。そんな目で見ないで欲しい。ちょっとビックリする。


「伝説の剣も、聖女の護衛も、お前が無事なら、それで良い」

「え?…やだ、フリック、どうしちゃったの…」


 いきなりテーブルに突っ伏すと、そのまま寝息を立ててしまった。


「ちょっと、起きてよ!フリック!!ねえってば!」


 深い眠りについてしまったらしい。仕方がなく、肩に担いで何とか宿まで連れて行った。


(担いだまま扉を開けるの大変なんですけど!)


 フリックに割り当てられた部屋。

 奥のベッドに寝かせると、すやすや気持ちよさそうに眠っている。


「全く…」


 腹は立つけど、無防備に寝ている姿をまじと見て、不本意ながら胸の奥が締め付けられた。


(寝顔が…ずるい…)





✳︎ ✳︎ ✳︎





「ポーションが、ない?」

「すみませんねぇ、この辺はなかなか物資が届きにくいもんで。次に届くのは一ヶ月後ですもんでねぇ」


 がっくりと肩を落として村を後にした。完全に誤算である。


「ポーション、残りは後何個だったっけ?」


 さすがに笑えないと言った表情でディエゴが言った。それぞれ持っているポーションを突き出す。


「あと五つしかないわ…」

「一つ前のザダクの街に戻るか?」

「あそこまで戻る方が賭けじゃない?聖女様に会って回復してもらった方が、むしろ安全ではないかしら」

「そうだな、帰りは聖女がいるんだ。もう少し辛抱すれば…一気に切り抜けるぞ!」


 これが私たちの最大の誤算となる。

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