◆第51.5話 暗躍する者たち(山本先輩視点+○○)
「……そう。豪が……わかったわ。引き続き佐藤家の監視をお願いね」
『はい。では失礼いたします』
ブツッとスピーカーが切れ、停止していたBGMが再び流れ始めた。
皮肉かしら……モーツァルトのレクイエムだなんて。
でもこれで佐藤家も大慌てでしょうね。長男は役立たずの道楽者で佐藤家の穀潰し。
だから三男の
だって僚くんはわからないように飲ませた麻薬、『かくりよ改』で私があてがった女の子にメロメロで、気持ち悪いくらいなんでも言うこと聞いてくれるし。
まあさすが佐藤家。それを懸念して、本命としてしばらく隠れていてもらう予定だった豪は、私がちょっと背中を押しただけで暴走してくれた。
タイミング的にはレイも消えてる予定だったけど、ま、豪には消えてもらったし、これで私の計画を邪魔しそうなのは意識不明になった聖一くんの成瀬家。
あまりにも静かなところが気になるけど、大方妾の子を認知して、嫡子にする流れでしょうから、今のうちに接触しておかなきゃね。
後は高橋家、か……。はっきり言って今の御三家当主なんて三人よっても高橋家の当主一人に敵うところは経済力しかないわ。
会合の様子を盗撮させて見たけど、まるで先生と生徒ねあれは。
……それに元Sランク探索者の嫡男が曲者だわ。今回の狙撃を邪魔させないために、数日は手が回らないよう色々とつついたのに、間に合わせてしまった能力は侮れない。
そのせいもあってレイが生き残った……でもそのお陰でレイのスキルが確実に有用だと言うことがわかったから感謝してもいいかもね。
……だけど少し計画を前倒しにして、……でも今回は駒を失くしすぎたわね。リバティに柊。豪は計画の内だったけけれど……。
「
『はい。ただいま――』
コール音が鳴り響く中、バスローブを脱ぎ捨て、大理石の浴室へ足を踏み入れる。
ふう。屈木はまだしばらく使いたくなかったのだけど、仕方ないわね。御三家の息がかからず私専用に送り込んだ駒。
いい歳なのに簡単に引っ掛かっちゃって。ホント男はいくら歳を取っても皆若い女が――
『もしもし。屈木です』
「私よ。少し学園で動いて欲しいことがあるの。聞いてくれるわよね?」
『あ、あまり無茶なことは……』
「あら、何を怯えているのかしら? そんなに声を震わせて」
通話越しでも青ざめてる顔が見えそうだわ。
「ふふふ。簡単なことよ。やってもらいたいことは――」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『 く、来るな! 俺はお前らの仲間じゃねえって言ってんだろぅがよー! こら、勝手に触るんじゃねえ! 離せよ! これじゃ――』
あっ、また入れさせられた。何度出そうが次から次へとまたがるゴブリンが入れ替わる。
そして洞窟のような部屋の端で子ゴブリンを産み、また俺様にまだがるために戻ってくるの繰り返しだ。
『――種馬じゃねえんだよ! クソがあ!』
どうしてこうなった。オーバフローさせるためにダンジョンへ行った後の事が思い出せねえ。
後で気づいたが左腕がヤバい。ヒジの上から下が失くなってるとかどうなってんだよ。
くっ、まただ……。
『なぜ俺様がこんな目にあってんだ! ヤらせてくれんなら人間の女連れてこいや!』
『へえ。まだ正気を保っているなんて大したものだね』
『誰だ! いや、誰でもいいからこの淫乱メスゴブリンどもを何とかしやがれ!』
『ゴブリンはお気に召さないようだね。ふむ。困りました。私はゴブリン種を生み出すよう定められていますからねぇ』
『おっさん! そういうこと言ってんじゃねえんだよ! 止めさせるかブッ殺せって意味だ! 早くしやがれ!』
『ほう。他の男たちは歓喜し、もう一人の女性はたいそう気に入ったようで、自ら腰をふりながら
『は? 何言ってんだ? てかボーッとしてんな! 俺のは人間専用だっての! ゴブリンなんかにゃもったいねえんだよ!』
『ふむ。でしたら――』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「聖一くんと二葉ちゃんの様子はどう」
『はい。お二方ともに急激な変化は見られません。聖一様の射精回数が多く、このまま点滴だけでは最悪……』
「そう。救出されてすぐに一度見に行ったけど、アレからずっとよね?」
『はい。残っている右手を固定して、刺激させないようなしても、定期的に。あと、脳波に変化が見受けられるデータが出ていますので、そちらは後程お送りいたします』
あら、脳波に。もしかすると起きてくれるかも知れないわね。
豪より扱いづらいけど……。
「思い付いたんだけど、二人に『かくりよ改』を投与するのも面白そうね。二葉ちゃんもずっと自慰を続けてるんでしょ? それだけ性欲に振り切れてるなら、後押ししちゃえば?」
『……『かくりよ改』、ですか後遺症が……いや、しかし可能性は否定できませんね……。わかりました。その案は検討してみようと思います』
「ええ。まずはどうでもいい四人で試せばいいだけだし、また結果は聞かせてもらうわ」
『はい』
スピーカーが切れ、アゴを伝った汗が湯船に落ちる。
意識が戻ってくれると少し助かるんだけど、どうなることかしらね。
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