◆第48.5話 暗躍する者たち(佐藤先輩視点)
クソ……なんなんだよコイツら集まってきやがって。
彼女いるか? 仮にでも、いるいないはテメエには関係ねえだろ! 鏡見てから出直せ!
お、コイツは確か一年のパーティーでそこそこやるヤツだよな。いい駒になるか?
……いや、このクラスはってか、一年全体だが聖一せいでレイを村八分にしていたからな。コイツらを使うくらいならまだ大和姉と接点があったリバティの方がマシか。
仕方ねえな、昼休みに接触する作戦に変更だな。
しかし……去年と同じ授業とか面倒なだけだぞ。レイと同じクラスの方が都合がいいから年齢まで擬装したが失敗だったかもな。
それより昼休みにどう接触するか……レイのヤツは弁当だと二葉から聞いたことがある。ならそこで一緒にご飯食べる流れが自然だ。
いや、それだけじゃ確実じゃねえな。またうるさいヤツらが先に取り囲んでくるのは目に見えている。
リバティを使うか。俺が身動きできない場合に教室から出ないよう数分だけでも止めてもらえれば包囲を抜けることもできるだろう。
スマホを取り出し、敷島にメッセージを送っておくことにする。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
敷島、昼休みにしてもらうことがある
障害があって教室で接触できない可能性がある
その場合、教室を出たレイたちを捕まえて俺のところに連れてこい
適当に転校生を紹介して欲しいとかなんとか言ったら断らねえだろ
失敗するんじゃねえぞ
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
これでいいな。
「安藤くん、授業中にスマホは怒られちゃうよ」
っ! 見られたか? いや、斜め横からなら内容までは読み取れないはずだ。
「あ、ああ。そうだね、ちょっと気になることがあってさ、ついね」
「え~。気になることってなに? あ、そっか。引っ越ししてきたところだし、この町のことで私が知ってることなら教えるよ、なんでも聞いてね」
よし、見られてないな。てかよ、この町のことは知ってるっての。
――っ! コイツ痴女か! 自然に太ももに触ってるように見せかけてどこ触ってやがる!
「お、おう。わからないことがあればお願いするよ」
「うふふ。安藤くんって
こ、コイツわざとだろ! 舌なめずりする女って初めて見たぞ!
「そこ。ん? ああ、転校生の安藤か。一応授業中だから雑談するなよ」
「はい。すいません」
「は~いすいませぇ~ん」
ふぅ、この女……時間があれば使ってやってもいいかもな……。
クソ……逃げられた。せっかく囲いから抜け出したってのに、別のヤツらに捕まってしまった。
仕方ねえ。ひとまず飯を食いながらリバティが連れてくるのを待つか。
なんで来ない? あ、来たかっておい! なんで通りすぎる! なに考えてんだアイツら!
開いたままのスライドドアの向こうをリバティの四人が足早に通りすぎていくのが見えた。
すぐにスマホを取り出し敷島に訳を話せとメッセージを送る。
その間も囲い込んでくる女が俺の口に玉子焼きにウインナーなんかを放り込んでくる。
どうなってんだこのクラスの女どもは。っと返信が来たな。チッ、『校長と出くわして連れていけませんでした』か……。
あの校長は今年赴任して、まだうちの息はかかってないから動かせねえしな。仕方がない、放課後か、夕方以降のダンジョンで接触するしかないな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
敷島、放課後空けとけ
奴らはどうせEダンジョンに行くはずだ
俺たちも行くぞ
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
放課後は予想通り囲まれた。レイを見ると目が一瞬だけ合ったがそれだけだ。さっさと帰り支度を済ませて教室から大和姉妹と共に出ていった。
Eダンジョンだな。
「みんな。こんなに歓迎してくれてありがとう。今日はそろそろ帰るから、また明日も仲良くしてね」
何か色々と言ってくるが適当に返事をして教室を出た。
学園を出る前にまずは敷島たちと合流だ。
「どう言うことだよ敷島!」
「佐藤くん、俺たちも懲戒免職とかで荷物をまとめ出ていく柊先生に聞いたばかりでよくわかってない」
「柊が懲戒免職はどうだっていいんだよ! なんで俺のことがバレてんだ!」
俺の情報を知ってる学園関係者はリバティと柊のみ。他の協力者にはまだだ。
誰だ……まさか凛が? いや、そんなことしてもなんのメリットもない。送り込んだ当人は凛だ。あいつは無駄なことはしないからな。
残るはリバティと柊だが、動機は無い。さんざん甘い汁をなめさせてもらった御三家に楯突いて無事で済まないのは知っていることだ。
懲戒免職……か、まさかアイツ盗撮バレたのか? ……それこそあり得ねえ。アイツの盗撮は御三家にとっても有効な情報も多かった。なら辞めさせるようなことは確実に阻止するはずだ。
と言うことは御三家に匹敵する力の介入があったと見るべきだな。……高橋か。政府か……。
なんだってんだよ、初日だぞ。……これは一旦手を引いた方がいい。
……いや、学校にいれなくなるのは確実だ。なら学外で接触すりゃいいじゃねえか。
クソ面倒な授業も受けなくていいし、あの痴女は……呼び出せばいいか。
どちらにしてもダンジョンだな。
「敷島。学園のことはもういい。ダンジョン行くぞ」
「え? いいんすか?」
「ああ、ちょうど面倒だと思い始めていたからな。渡舟ってやつだ」
「佐藤君がそれでいいなら」
『豪、今どこ?』
ダンジョンに向かう途中凛から電話が入った。
「凛か、今はダンジョンに行く途中だ。それより知ってると思うが、柊が懲戒免職になったぞ」
『ええ。連絡が入ったわ。それと豪、あなたのこともね』
「それも知ってる。まあ退屈な授業を受けてまで監視してるより、外で見張ればいいだろ?」
『……仕方がないわね、学園内は別のものを少し離れたところから監視してもらうように手配するしかないわね。それと豪。聖一くんのように先走ってミスはしないでよ』
「アイツと一緒にすんな。俺はそこまで馬鹿じゃねえぞ」
「ま、ダンジョンに向かってると聞いて、失敗したから経験値稼ぎに切り替えたってわかるけど、豪……私の邪魔はしないでね。じゃあ――」
そう言うなり通話が切れた。
「誰が失敗しただ、誰が! 俺はまだなにもしてねえっての!」
タクシーを運転手がビクリとするが関係無い。
念のためにギルドに許可証をもらいに言ったリバティ。俺はゆっくりレストランで食事をしてからダンジョンの出口で待つ予定だ。
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