第44話 転校生
「――ですわ。あっまたピクンって」
「ネット情報だと毎朝こうなるのはえっちな証拠と書かれていたのです。だからレイはえっちなのですよ」
「そうなのですか? でもシオン。勝手に見るのは駄目だと思いますわ」
……あさ、か? なにかちょっと寒いな……下半身が……。布団……ん?
「そんなこと言ってお姉ちゃんガン見してるのですよ」
「だって……女の子みたいな顔してるのに、こんなのついてるなんて……あっまた」
なに見てるんだ? それより女の子みたいなって……結構気にして男らしくマンバンヘアにしたんけど、シオリにはそう思われてたのかぁ。
いっそのこと坊主頭にしちゃおうかな。
ふぁ、寝れないかと思ってたけど、いつの間にか寝てたんだな。まだ眠いけど。
「でも変な形なのです。こんなの入るです?」
「入るのでしょうね。そうでなけれは――あっ」
目を開けると、シオリと目があった。なにか驚いてるみたいだけど、シオンもいる。起きるか。
「……あ、おはよう。ごめん、寝過ごしたか――なあっ! ってなにしてるの!」
体を起こして、なぜ寒かったのか原因がわかった。
「あ、見つかっちゃったです」
膝まで下げられていたズボンをトランクスと一緒に引き上げ、朝の生理現象中の元気な物を隠す。
「ご、ごめんなさい! 最初は駄目だって言ってたのですが、その、ごめんなさい!」
「むー。それだとわたしが悪いみたいじゃないですか。お姉ちゃんも興味津々で見てたのにいー」
「俺のなんて見ても面白くないだろ! そりゃ俺が二人の裸を先に見てるからアレだけど!」
「そうでした! これでおあいこなのですだから問題なしなのですよ」
「いや、そう言われれば……もういいよ、見たければ言ってくれればシオンとシオリになら見せてあげるからその、寝てるときは、ね?」
いや、言われて見せるのもどうかと思うけどな。
「そ、そうなのですか! で、では――いえ、今はやめておきましょう。そろそろ起きて準備をしませんか? 登校時間を少し変えるだけで遭遇確率も下がりますから」
そう言い立ち上がるシオリの目は、まだ俺の俺に向けられたままだ。うん。シオンのいうとおり興味津々だな。
昨日の夜、アレだけ取り乱していたけど、すっかり立ち直っているみたいだからよしとしよう。
「よし、時間は少し早いけど、俺が朝ごはん作るから、二人は登校の準備を」
「いつもありがとうレイ。それでは私たちは一度部屋に戻りますね」
「うん。シオンもだぞ」
「は~い。またあとでです。あっ、今日の目玉焼きは半熟コショウでお願いするです」
「了解。シオリは両面焼きだよな?」
「ええ。味付けはシオンと同じでお願いしますわ」
「わかった」
部屋から二人が出ていくのを見送ったあと、制服に着替え、時間割りどおり教科書を揃えてキッチンへ向かった。
まだ生徒もまばらな教室に到着するところまで警戒していたが、佐藤先輩は登校中の接触はしてこなかった。
朝食で話し合った学園での行動は、トイレ以外は一人にならないこと。
幸いなことに今日は体育がない日だから問題ない。
体育は男女別々になるから警戒が必要かと考えていたけど、よく考えてると、佐藤先輩が女子側に行くことはまず無いから問題ないかもしれないな。
だが、直接は聞いてないけど一年に転校生が来ると噂が耳に入ってきた。
「レイ。絶対アレなのです」
「私もそう思いますわ。どのクラスかまではわかっていなさそうですが、昨日の今日で来るなんて、早いですね」
「だな、それに俺の横に謎の机があるからほぼクラスもここだな」
「むー、ならもう一個空いてる廊下側に移動させておくです」
「「あ」」
その通りだと思い、俺が机。シオンが椅子を持って移動させる。
それを見ていたクラスメイトに変な目で見られるが、そんなことで声をかけてくる者はいない。
「これでいいな」
「バッチリなのです」
「ここまであからさまですと、教科書を見せろと言われる可能性がありますわね……少し行きたいところがありますので、お付き合いお願いします」
俺たちは保健室に向かうことにする。なぜ保健室かというと、保健室の横は補習室となっていて、全学年の教科書が置いてあるからだ。
そしてその部屋の鍵は保険医さんが管理している。
シオリが顔見知りなのか女性の保険医さんに事情を伝え、今日の分の教科書をすべて借りることができた。
教室に戻り、一度机の上置いたが目立ちすぎる。なら椅子の上だなと教室書を椅子に置き、自分たち席に戻った。
「完璧なのです。筆記用具はさすがに持ってきてると思うからもう接触チャンスは撲滅完了ですよ」
「そうだな」
「クラスメイトもそろい始めましたわね。あと、気になるところは机を誰がそこに置いたかですわね」
そう言われればそうだ。ちなみにこの席も学園側に交渉してもらってある。
の並びだから二分の一の確率だけどな。
「御三家……」
ぽつりとシオリが呟くが、俺もそれしかないと思っている。
そして予鈴がなり、担任の柊先生が見知らぬ男子生徒を連れて教室に入ってきた。
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