第30話 スタンピード(オーバーフロー)

「ここって……ダンジョンの入口っ! 何やってんだよタマちゃん!」


 通いなれたダンジョンの入口が目の前にある。そして――


「お前たち! どこから現れた! まさかダンジョンを攻略してしまったのか!」


 ――入る時に見たギルド職員の門番が、俺たちを見つけ何か言ってくるが構っている場合じゃない。


「お外ですの! タマちゃんひとりでやるつもりですの! レイ、助けに行くです!」


「当たり前だ!」


「二人とも落ち着きなさい! まずは探索者ギルドに緊急事態を報告します! そこのあなたギルド職員ですわよね! すぐにギルドへ連絡してください! スタンピードが起こりますわ!」


 お姉さんは、今にも飛び出してしまいそうになっていた俺とシオンを呼び止め、職員のおじさんにも指示をする。


「は? スタンピード? ここのダンジョンから? ? ――じゃ、じゃあ成瀬家の坊っちゃんたちは――」


「成瀬家の坊っちゃんが誰かわかりませんが、取り残された方たちは私たちが助けに行きます! あなたはすぐに連絡をしなさい!」


「わかった! すぐに成――」


 門番をしていたギルド職員の方が、スマホを取り出そうとした時、ダンジョンの入口から暴風のように色を帯びるほど濃い魔力が溢れ出してきた。


「――うわあ! な、なんだこれは!」


「くっ! 来るぞ! おじさんは離れて! シオンはお姉さんとここの防衛を頼む! 俺は中に入る!」


 猛獣に取り囲まれ、今にも飛びかがって来るような重圧が全身にまとわりつく。


 が、ここでしり込みしている場合じゃないと奮い起たせ、震え始めていた太ももに拳で気合いをいれた。


「うにゃー、ゾワゾワするのです! こなくそなのですよ! レイ! タマちゃんを頼むのです」


「くっ、こんな濃い魔力が――、気休めになるかもしれませんが、物理防御を付与いたしますわ! レイ! 頑張ってくださいませ!」


「おう! ありがとう!」


 這いながら逃げるおじさんと入れ替わるように入口前につき、バックパックをおろし、回復薬だけウエストポーチに詰め込んだ。


 魔力と体力の中級回復薬が各五本。心もとないが、これでおじさんが呼んでくれる探索者ギルドからの応援が来るまで食い止める。


 いや、シオンに任された通り。ひとりで残ったタマちゃんのところまで行こう。


 道中のモンスターを残らず倒せば、抜けて出て来たモンスター程度ならシオンでも何とかしてくれるはずだ。


 入口は縦横三メートル。ひとりで守るには少し広い。だがAランクのお姉さんが魔法でシオンの補助もしてくれるし、守れると信じ行くしかない。


 ワンハンドソードと、予備の特殊警棒で二刀流で色付きの魔力が流れ出てくるダンジョンに踏み入れた。




 sideタマ


「くっ! 多すぎるのじゃ! これ、そこの小鬼よ! どこに行くのじゃ! キサマの相手はこっちじゃ!」


 まずいのじゃ。修行のためと呼び出しておいた前鬼、後鬼も、まだまだ本来の力は出しておらんが数が多すぎるぞ。


 二階層への階段前で待ち受けてすでに半刻30分は押し寄せる小鬼を倒しておるが、もう何匹も抜かれておるのじゃ。レイたちがおれば……。


「何を弱気になっておる! かつて九尾と呼ばれた大妖のわらわが、封印で力が出ぬといえど、このような小鬼共におくれを取るわけには行かんのじゃ!」


 じゃが人の姿では守りきれぬかならば――


「くははは! 何百年ぶりか! わらわの真の姿! 魅せてやろうぞ小鬼共! 変化じゃ!」




 sideレイ


「せい!」


 二階層に通常ならいるはずのないゴブリンを倒し、落とされる魔石はそのままに三階層へ急ぐ。


 くそ、数が多い! このままじゃいつまでたってもタマちゃんのところにたどり着けないじゃないか!


 こうなったら迷っている場合じゃない――


「身体強化! 一気に行くぞ!」


 身体強化をかけた俺は、一気に加速して次々とワンハンドソードでゴブリンの首を切り飛ばし、特殊警棒でふん殴り、吹き飛ばして通いなれた道順を走り抜ける。


 だが身体強化の効果時間は三分。切れそうになったらかけ直し、六度目でついに三階層への階段にたどり着いた。


「よし! 戦ってる音が聴こえる! タマちゃんだ!」


 階段を数段飛ばしでかけ下り、その途中途中でゴブリンも魔石に変えていく。


 そして――


「――変化じゃ!」


「タマちゃん来たよ! 何ひとりでやろうと――は!?」


 三階層についたんだが、目の前でタマちゃんはいつもの巫女服をひと息に脱ぎ捨て裸になり、何かを叫んだ。


 ふわふわの九本ある尻尾が――ボワン! と膨らんだと思った瞬間、そこに真っ白な大きいキツネが現れた。


「ぬははははは! 小鬼共! この姿になったからには一匹たりともこの先に行くことは叶わぬと思え! 前鬼! 後鬼! お主ら夫婦の力も見せてやるのじゃ!」


「「――!」」


 キツネがタマちゃんなのはわかった。だけど、前鬼後鬼と呼ばれた赤鬼と青鬼は味方なのか、タマちゃんに負けず劣らずの早さでゴブリンを倒していく。


「は、はは、めちゃくちゃ強いよタマちゃんたち……」


 階段前の広くなったホールを縦横無尽に暴れまわりゴブリンたちを吹きとはすタマちゃん。


 前鬼、後鬼と呼ばれた鬼たちも、手にした刀と槍の一振りで数匹のゴブリンを黒い煙に変えている。


「よし! タマちゃん! 俺も加勢するよ! ――はっ!」


「なに!? レイか! なぜここに! ええいまとわりつくでない! わらわの毛並みは小鬼が堪能するものではないわ!」


「助けに来たに決まってるだろ! タマちゃんは俺の大事な人なんだから! せいっ!」


「大事な人とな!? ぬぅー、仕方がないのじゃ! しからばレイ! 怪我などするでないぞ!」


「うん! タマちゃんもだよ!」


「小鬼程度にわらわが――なんじゃこの禍々しい魔力は!」


 再現なくホールの奥にある通路から溢れだすゴブリン。俺が加わってからうしろに抜かれることは無くなった。


 だけど少しずつ見たこともないゴブリンが出始めた。メイジやアーチャーはまだいい。


 だが薄汚れているが、白いローブを羽織った回復魔法を使うヒーラーがホールに入ってきたところで待機するように横にズレて控えた。


「ゴブリンの! 上位種! ヒーラーが! 出てきたっ! ぞ!」


 回復魔法が使えるゴブリンだ。この乱戦で傷ついたゴブリンを回復されれば、こちらは体力と魔力が持たないかもしれない。


「あのような小鬼ではない! 来る!」


 そしてその奥からは見たこともない、まさに異形と言うしかないモンスターが現れた。


「なんじゃと! ジェネラルじゃ! レイ! 前鬼も後鬼もヤツには気を付けるのじゃ!」


 姿形はゴブリンだけど、身長は見上げるほど、三メートルはある。


 それとゴブリンはヒョロガリで貧弱なのに、ジェネラルの体はもちろん、腕もムキムキで電信柱ほどの太さがある。


 それに持っている武器もこん棒ではなく、研ぎに出して返ってきたばかりのようなロングソードだ。


 そんな四匹のジェネラルがホールに味方であるゴブリンたちを弾き飛ばしながら突入してきた。


 そして控えていたヒーラーがそのうしろに付き従がい、ホールの中央まで迫ってきた。


 強敵とヒーラー。絶対にここは通さない!



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