第18話 白昼の襲撃者?
タマちゃんといた不思議な空間。小さい時はなんとも思ってなかったけど、今思うと本当に不思議な場所だよな。
聞くと、ダンジョンの入口になったところに元々あった古いお稲荷様を
ダンジョンの発生時に取り込まれてしまい、困っているところを俺の両親が契約することによって解放してあげたそうだ。
契約のお陰でダンジョンの出入りが出きるようになったタマちゃんと両親は仲良くなり、よく家へご飯を食べたり、遊びに来ていたらしい。
だけど両親が死に、契約していた繋がりが切れたことによって外に出れなくなり、ダンジョンをうろうろしていたそうだ。
そんな時に気を失っている俺を見つけてくれたそうです。助かりました。
それで新たに俺と契約するために鍛えてくれるそうなんだけど、狙いは美味しい食べ物だと思う……。よだれ垂れていたし。
でも、前回は久しぶりに会い、ずるずると一週間もあの不思議空間にいついてしまったのがまずかった。
それで行方不明扱いになってたわけだけど、記憶を持ったまま帰すと、『レイは正直者じゃから喋ってしまうのじゃ』と言われ納得。
そうだよな、たぶん隠そうとしてもしつこく聞かれるだろうし、ふとしたことでバレてしまうのは時間の問題だったはず。
でも今回は時間も少ししか経っていないから怪しまれることもない。
あ、お姉さんに回復薬を届けてから、シオンが言ってたC◯C◯壱番屋にも行けそうだな。俺は食べたこと無いけど、シオンがニコニコになるくらいだし、誰かとなにかを食べに行く。うん、スゴく楽しみだ。
いつか三久も一緒に行けたら……。そうだな、信じて頑張ろう。
俺たちは
ちょうどシャトルバスから探索者が降りているタイミングだったため、降りきるのを待ち、帰り便にすぐ乗ることができた。
「ふう。この時間だと、帰りは乗る人も少ないだろうから広々だね」
「貸し切りみたいです。ダンジョン前にいる人は今降りた人だけみたいですし」
待つこと十数分、俺たち以外乗るものもおらず、バスのドアがプシューと空気が抜ける音を鳴らしながら閉まり、バスが走り出した。
数十分後、探索者ギルド前に止まってすぐに降車し、ギルドにはよらず、研究所に向かう。シオンは『とう!』と飛び降り走り出してるから急ごう。
研究所の応接室に通されソファーに座り待っていると、そこにやって来た岡間室長さんへ挨拶してからスキルオーブを渡す。
お返しとばかりに用意してくれていた上級回復薬入りの箱をテーブルの上に置く。
「はい、こんにちは。今日は早いお帰りね。ほらほら大和ちゃん、ここよ、ここにサインしてね」
「はいです。やーまーとー、しーおーん」
借り受けの書類にサインをシオンが名前を口にしながら丸くて可愛い字で書き込んでいく。
「うんうん。いいわ。えっと、予定では後一本欲しいのよね?」
「お医者さんはこれで退院、もう一本あれば全快って言ってました」
「そうなのね~と、次は~、あ、これね。次の納期はだいたい一週間後よ。早ければ数日で届くかもね」
書き終えた書類を確認した後、小指を立てて持つ書類に目を上から下へ走らせ、次の納期も教えてくれました。
今回の回復薬を飲めば退院で、一週間後にはシオンのお姉さんの怪我は無かったくらいに治る。
そうだ、住むところはとりあえず俺の部屋になるのか?
ん~、部屋は余っているから大丈夫か。それに誰かが泊まりに来るとかタマちゃん以来だから少し楽しみでもある。
「おお! スキルオーブ集め頑張ります!」
そんなことを考えていると、回復薬が入った衝撃に強い箱を両手で抱え、勢いよくソファーから立ち上がったと思ったら、ブオンと頭を下げるシオン。
「岡間室長さん、ありがとうございます。シオン、急いで病院行こうか」
同じくソファーから立ち上がり、礼を言い、ソファーに残っているバックパックを手に取る。
「はいです! 岡間室長さん、ありがとうございます! 次もよろしくです!」
「うふふ。あ、大和ちゃん、駄菓子も持っていきなさい。た~っぷり仕入れてきたから」
ずっと気になっていた岡間室長さんの横にあった大きなエコバッグが二つ。駄菓子が入っていたようだ。
「ふおー! こんなにいっぱい! ありがとうです!」
シオンの代わりに受け取ったエコバッグは駄菓子らしからぬ重量があった。
シオンもだけど、岡間室長さんも、ヤバいくらい駄菓子好きなんだな。俺も食べたことがなかったものばかりだし、スゴく楽しみではあるんだけどね
回復薬の箱をバックパックにしまい、シオンが担ぐ。そして見えないけどたぶん目線が釘付けのエコバッグ。
少し吹き出しながら軽い方のエコバッグを渡してあげた。
そろって研究所を出て、岡間室長さんに見送られて病院へ向かう。
「えっと、今は……まわりに誰もいないから、レイ、ありがとうです。これでお姉ちゃんが退院できます」
「うん。そうだ、退院して、住むところだけどさ、俺のところに来ないか? 部屋も余ってるし」
「っ! (レイの部屋に! ……まさかわたしだけじゃなく、お姉ちゃんまで……。ううん、やっぱりお姉ちゃんは七つもスキルがあるし、身体凶化だけのわたしなんか体だけが目的でさんざん弄んだ後にぽいっと路地裏に捨てられてお姉ちゃんとパーティー組んじゃうんです。そこでわたしは生活のために――)」
なんだ? なにかブツブツ深刻な顔でつぶやき、足が止まってしまったシオン。
「あ、そうか、俺と一緒に住むのが嫌なのか……、ごめん。そう、だよね、パーティーだとしても組んだのも最近だし迷惑だよな」
「……ん?」
「でも、よそでアパート借りるにしても、お金がかかるし、今は少しでも回復薬代にあてたいし。だから俺の所なら無料でも良いと思ったんだけど、本当にごめん」
タマちゃんと会って、今帰ると部屋は俺だけ。ならシオンとシオンのお姉さんがうちに来れば寂しくないかもと、そんなことを考えていた。
駄目だな、自分の寂しさを癒すために相手のことを考えなさすぎだよ俺。
「いえ、住まわせてくれるのはスゴく助かるのです」
「本当に! じゃあ!」
「(……これは本当に善意だけで誘ってくれているようです。えっちなことを考えていたのはわたしだけってことに……。そりゃ多少は興味もあるし、レイなら女顔で、いつも優しい目を向けてきてます。だから苛めてきた男子、女子たちとは全然違うし、お姉ちゃんと似ていて話しやすいのです)えと、じゃあ病院でお姉ちゃんに相談してから――」
「うん?」
病院へ向かう歩道で向かい合い立ち止まっていたんだけど、前と後ろから帽子をかぶりサングラスとマスクした男たち数人ずつに挟まれた状態になっていた。
避けようとシオンの肩に手を置き、歩道の端に身を寄せたんだけど……、今度は壁を背にした俺たちを取り囲むように、八人の男たちに囲まれてしまった。
なんなんだ?
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