【NTR+裏切り≠ぼっち】捨てられた俺は騙され搾取されていた君と友達から始めました~個有スキルが進化したし、信じられる仲間もできたのでそっちには戻りませんよ~
◆第11.5話 裏切り者たち(聖一視点)
◆第11.5話 裏切り者たち(聖一視点)
モンスターハウスの一件から二週間がたった。それなのに親父は報酬を渡そうとしない。
そりゃ学籍が消されてないからと言われればそうかも知れないが……。
一番の理由は、全日本技術研究所がレイの死を認めず、まだ行方不明扱いで捜索中と発表していたことだろう。
研究対象者のレイに補助金を出している国と全日本技術研究所が死亡を認めない限り報酬が支払われることは無いと言っていた。
「ねえ聖一、何イライラしてるの? さっきも知らないカップルに絡んでたけど」
「イライラ? んなことねえよ」
誤魔化すように二葉の肩を抱き寄せキスをする。探索者ギルドの中だがもう隠す必要もないからな。
「おいバカップル。時と場所を選べよ。というか珍しく早いじゃないか」
「ほんとね。それより残りカスは来てないの?」
バカップル? 上等だ。やる相手もいない奴らに見せつけてやる。と言いたいところだが律儀に、……あきれ顔で待っていてくれる先輩をあまり待たせるのも駄目か。
「ふう。そう言えば残りカス、来てませんね? 山本先輩、連絡入ってないんですか?」
「来てないのよ。あのカス、今時スマホも持ってないんだもん」
マジかよ。どこまで貧乏なんだよあの残りカス。だから一日六千円でも依頼を請けたがるんだな。
「チッ。待っていても仕方ない。おい二葉、お前受付してこい」
「え~、マジですかぁ。ほんとあの残りカス、今日も報酬無しにしてくださいねー」
二葉はシブシブといった感じに俺からはなれ、受け付けの列に並びに行く。
「待てよ、俺も一緒に行く」
二葉に追い付き、列を見る。
「おっ、弱そうなヤツがいるじゃん。おいお前――」
順番を鼻パン一発で譲ってもらい、さっさと受け付けする。
「流石聖一」
「まあな」
おお、二葉。またそんなに押し付けやがって。今夜も――
「パワフル☆ボンバーさんですね。入場許可申請承ります。それと、本日お預かりしたパワフル☆ボンバーさん宛の伝言がございますね」
「伝言、ですか?」
胸の感触を楽しんでたのに、二葉は『伝言』に反応して身をはなしてしまった。
邪魔しやがって。この受け付けの女、拐って壊れるまで――
「はい。大和 四音さんより『パーティーを組んだので荷物持ちはできなくなりました』とのことです」
「「は?」」
「どういうことだよ!」
「そう言われましても、こちらは伝言を預かっただけですので。もし荷物持ちが必要でしたら、今ならすぐにご紹介もできますが」
「チッ! 二葉、行くぞ! 邪魔だどけ!」
振り返ったところにいたおっさんの肩にわざとぶつかって、その横にいたババァも横へ押し退けて走り出す。
「う、うん。あっ、許可証!」
二葉を置いて、佐藤先輩と山本先輩が待つ出入口まで戻り残りカスが来ないことを伝える。すぐに二葉が許可証を持って合流した。
「伝言は今日受け付けたって。もしかしたらまだシャトルバス乗り場にいるかも。なんだけど、聖一あのねさっき突き飛ばし――」
「ギリギリまだ出発時間前だ! 行くぞ! 急げ!」
二葉が何か言いたそうにしていたが、佐藤先輩は被せるように声を上げた。
「おっと、どこ行くんだクソガキ。どこか行くならちょっと話をしてからにするんだな」
走り出そうとしたところ、肩が掴まれた。振りほどこうとしたがビクともしない。
「何しやがるおっさん! 離しやがれ!」
くっ、マジで動かねえ! コイツ強いぞ!
「最近のガキは躾がなってないわね。ってこの子たち見たことあるわ……。どこだったかしら」
無理矢理体をひねっておっさんをおもいっきり殴ってやった。が、微動だにしない。
な、なんだよこのおっさん、殴った手の方が痛いぞ! 俺様はもうすぐBランクに上がるんだぞ! くそっ! 動かねえならもう一発だ!
今度は手に魔力を纏わせ殴りかかろうと上げかけた右腕に二葉が抱きつき止めようとする。
「二葉も離せ! 殴れないだろ!」
「駄目! その人たちは駄目なの! だって――」
「た、高橋様……」
「えっ、嘘、なぜこんなところに高橋様が……」
佐藤先輩と山本先輩が同時に、信じられないって声で呟いた。
高橋? どこかで聞いたような……。
殴ろうとしていたおっさん、その横にいるババァ。
「……え? あ、高、橋、さ、ま?」
御三家は、うちの『成瀬』と先輩たちの『佐藤』『山本』だが、実は四家目がある。
財閥として発展し続けた俺たち三家とは別に、同等の家格を持つ家がある。
財を成す方向に進み、表に名が通った三家。その道に進まず、公家、華族に伝わる歴史的建造物や遺物を守る家。
それが『高橋』家だ。その高橋家の嫡男夫妻が目の前のおっさんとババァの正体だと気づいてしまった。
そんなヤツを俺は殴ってしまったのだ。
「あらあら殴られちゃって、大丈夫? ――ところで、そうそう思い出したわ。あなた成瀬家の子ね。そっちは佐藤家に山本家。あらあら御三家の嫡子が勢揃いじゃない」
「ふん。そよ風が当たった程度だ。まったく問題ない。だが……そのようだな。ならばこの事はそれぞれの家に伝えることにしようか。おまえたち、それで良いな?」
「「は、はい! 申し訳ありません!」」
佐藤先輩と山本先輩は並んで素早く頭を下げ、謝罪までした。
ヤバいヤバいヤバいヤバい! こんなこと家に報告なんかされたらヤバ過ぎる!
「あ! そ、その、も、申し訳ありませんでした! 家に報告だけはどうか許してください!」
俺にあわせて二葉も深く頭を下げる。家格が同じで同じく嫡子。同格ならいきなり突き飛ばしただけでなく、殴ってしまった俺の立場は最悪だ。
表面上申し訳なさそうな顔をして頭を下げ、心の中で舌を出しておく。
クソクソクソクソ! なんで俺が頭を下げなきゃいけねえんだ! てかなんでこんなところにいるんだよ! 大人しく骨董品でも眺めてろクソが!
「あら、それだけ? この子たちって素行のよろしくない噂しか聞かないわよね? そろそろご当主方に矯正してもらった方がよろしいのでは?」
「……?」
何を言ってるんだこのババァ。
「ふむ。今日こちらに
訳の分からないことばかり言いやがって、俺たちはいつまで頭を下げてなきゃいけねえんだよ。
「そうね。じゃあ御三家のあなた方。今のところは席をはずしてもよろしくてよ」
「「「はい!」」」
俺以外が短く返事を返し、頭を上げる。一拍置いて俺も『はい』と返し、ならって頭を上げた。
その時にはもう背を向けていたんだが、いつの間にかそこにいた探索者ギルドの所長。
「いや、お前たち、少し時間をもらおうか。何、すぐ済む。解散するのはその後だ」
所長は二週間前の件で俺たちに嫌疑がかかっているが証拠不十分だと突っぱねてくれたそうだ。
が、それでも疑いは完全に晴れたわけではない。それに高橋のおっさんを殴ったことも問題だ。
それについては高橋家から申し立てをするからと、三週間の探索者資格の凍結及びダンジョンの入場禁止を言い渡された。
そして、次に何かあれば資格剥奪もあり得るとのことだ。くそったれが。
所長は俺たちに探索者カードを出せと言い、受け取ると――
『これは預かっておく、しばらく大人しくしていろ』
――とクソ高橋夫妻と受け付けの奥へ消えていった。
「ペッ! なんだよ入場禁止に大人しくしていろとか所長のヤツ。高橋家の奴らもだ。家格だけのクセに偉そうにしやがって」
俺は唾を吐き捨て、誰の耳にも届かないくらいの小声で悪態をついた。
だが、この日、この出来事が俺たちの順風満帆だった日常が壊れ始めたきっかけだったと後がら気づくことになる。
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