第14話 魔法が使いたいです!
「ほぉーむらん!」
ドバン!
「あちっ! あちっ!」
「大和さん! 転がって火を消して回服薬!」
三度目の正直? モンスターハウスの周回三回目でまたメイジが出た。
そして一周目と同じパターンで大和さんに向けて撃たれた火の玉を、今度は見事にジャストミートした。
だけど、弾き返すこと無く火の玉は破裂してしまったのだ。
一瞬だった。カーゴパンツとフードに火が着いたのは。
転がる大和さん。追い討ちをかけようとするゴブリンたちを近寄らせないように切り捨てる俺。
「あー! 私の
「これでラスト! あー! 大和さん! すぐ行きます!」
バックパックを投げ捨てパーカのジップを引き下ろして脱ぎ、まだフードの火が消えてない大和さんの頭に被せた。
「ああ……。私のイージスが……。前髪が……。あいでんてぃてぃがぁ……」
モンスターハウスの真ん中でペタリと座り込んで、ほんの少しチリチリになった前髪を触っている。
「俺が火の玉は武器で攻撃できると言ったからだよね。本当にごめんなさい」
女性の髪は命だと看護師さんが言ってた。三久の髪の毛を切る時に。
だから曲がったりしないようにまっすぐパッつんになったんだけど……。めちゃくちゃ怒られたもんな。
その髪の毛が、ちょっとだけとはいえ燃えて、チリチリになってるところまである。
まだ目が見えるほどではないけど。
「うぅ……。のり塩のポテトチップスが食べたいです。カ○ビーと湖○屋の食べ比べがしたいです」
「え? のり塩?」
「はいです。栄養を取れば髪の毛も復活するはずです」
なにか違う気がするけど……。
「分かった。スーパーによって好きなお菓子買って帰ろう。でも、お菓子だけじゃ駄目だよ」
「ヤ○イのおやつカルパスも買うです」
カルパスってサラミみたいなヤツだからお菓子じゃないのかな? でも『おやつ』ってついてるし……。
「う、ん。今日はこのままモンスターハウスで結構稼げそうだし、色々買って帰ろうね。ちゃんとしたご飯も」
「はい。じゃあドロップした魔石をリッチな晩ごはんのために拾いましょう!」
そう言うと、本当に落ち込んでたのか疑わしいくらい元気にぴょんと立ち上がり、床に散らばった魔石をちょこちょこ走りながら集め始めました。
「おお! 透明な魔石がありますよ!」
透明の魔石? 濃いか薄いのは見たことあるけど、レアドロップかな?
足元の魔石を拾い上げ、大和さんのところに足を向けた。
「ほらほらこれですよ! 絶対レアです!」
親指と人差し指で摘まんで見せてきたのはレアだけど魔石じゃなかった。
「それは魔石に似てるけどスキルオーブだね」
「スキルオーブ! これがですか! これを使えばわたしにも魔法が使えるようになるのです!」
喜んでいるところ悪いけど、確実に魔法が使えるようになるとは限らない。
スキルが覚えられるのは確かだけど、【剣術】とか【槍術】なんかの物理攻撃系。【暗視】【五感強化】などの補助系。それとなんと言っても【魔法】があり、何を覚えられるか鑑定してもらうまで何を覚えられらかは分からないのだ。
「いや、魔法だと良いね。帰りにギルドで鑑定――」
「魔法使いにわたしはなる! スキルカモーン!」
…………。いや、カモーンって言っても覚えないんだけどね。
肩幅に足を開いてつま先立ち、そして左手は腰に。右手でスキルオーブを天井に向けて掲げ持つ大和さん。
つま先立ちなためか、ぷるぷる震え出してるし、そのままだと使えないと教えよう。
「あー、スキルオーブの使い方は魔力を流すんだけど、まずはギルドで鑑定をしてもらって――」
「魔力! スキルカモーンですよ!」
「あっ――」
躊躇なく魔力をスキルオーブに流したのか、透明なオーブは真っ赤に輝きだした。
え? 赤? もしかして火属性魔法がマジで来た!?
「来た! スキルが来たのです!」
眩しいくらいに輝いたオーブは手の中から消え、光りが大和さんの中に入っていった。
「ステータス!」
俺には見えないが、大和さんの前にはステータスが浮かび上がっているはずだ。
そのステータスを見ているであろう大和さんはぶるぷる震えだした。
駄、目だったのかな? これはマッ○スバリュののり塩ポテチも追加した方がいいかな……。
「来ました! 来ちゃいましたよイレさん!」
「え? 本当に魔法スキルが来たの?」
「はいです! これでわたしも憧れの魔法少女ですよ! ぴぴるまぴぴるまぷりりんぱなのですよ!」
「よく分からないけどよかった、ね?」
メイスをクルクル回して大和さんもクルクル回っている。
本当によく分からないけど、喜んでるならいいか。………………俺も使ってみようかな。
ウエストポーチからスキルオーブ出してみる。
そうだよな。スキルを覚えられるんだもんな。探索者としてこれからもやっていくならどんなスキルでもあった方が良いに決まってる。
思いきって魔力を込めようとした時、俺の手元を隠すようににょきっと覗き込む大和さんの後頭部が見えた。
「おわっ!」
「イレさん! イレさんも持ってるじゃないですか!」
「あ、ああ。前にメイジを倒した時にね。って何を!」
大和さんはスキルオーブを乗せていた俺の手のひらで、オーブを握り込むようにして魔力を流し始めた。
「イレさんにもスキルカモーンです!」
おいぃぃ!
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