第21話 先生たちはお得意様ですよ
駅までの途中にあって、個室の座敷がある居酒屋って言ったらウチくらいですからね。
先生たちは本当に昔からよく使ってくれてありがたいですよ。特に校長先生なんて気前の良い方ですから、色々とずっとお世話になってます。
よく来る先生ならほとんど名前はわかると思いますけど、K先生っていうとあの人かなぁ。O先生に連れられて何度か来てる若い先生ですよね、たぶんあの人だな。
そんなにすごく印象に残ってるわけじゃないけど、O先生に対してすごく気を遣ってると思いました。グラスが空いてるとすぐ気付いて、どんどん注文されて。体育会系のノリの方だなあって。まあ、O先生が連れてくるのはそういう人ばっかりですけど。
別に酒癖が悪いとかはないですよ。そんなこと言ったらO先生の方がよっぽどですよ、騒ぐし暴れるし、寝ちゃうし。でも汚したりはなかったですね。
ああでも一度だけ、もう何年も前ですけど歓送迎会か何かで使っていただいた時は若い先生が一人潰されちゃって、店の前でそりゃもうすごい勢いで吐いて。店の前だからちょっと困ったんですけど、学校の先生ってそういうの慣れてるんですかね、うちのバケツとホースと貸したらちゃんと掃除してくれましたよ。K先生ではなかったと思います。かなり体格の良い先生だったので、そこは間違えませんよ。
他に気になることなんてあったかなぁ。あ、K先生というか、よく一緒に来てたJ先生、なんでしたっけ、何か珍しいスポーツやられてる先生いらっしゃるじゃないですか。あの先生とK先生とで競馬の話をずいぶん熱心にしてましたよ。お好きなんでしょうね、その日はO先生とあと二、三人しかいなくて、うちも空いてる日だったから声もよく聞こえたんですよ。ギャンブルはお好きな先生が多いみたいですから、K先生もそうなんだと思います。お酒、ギャンブル、あ、煙草は吸っていませんでした。O先生の一服に付き合うのはT先生の仕事でしたね。ライターなんてパッと差し出してね。
なんだかおもしろいですよね、学校の先生なんて真面目でしっかりした人だろうってイメージがあるのに、うちに来る先生たちはみんなちょっと変わってる。それだけストレスが溜まるお仕事なんでしょうね。
あ、ちょっと、これだけ話したんだからそのまま帰るってのは無しですよ。最低でも五品は注文してもらいますからね。
はい、生ビールお待ち。K先生は一杯目はビールで、後は周りに合わせてハイボールだったと思います。勝手なもの頼むとO先生に叱られますからね、お酒より料理摘んでる印象かもなぁ。
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