第13話 派閥があるから
K先生の話ですか。
あれは上に嵌められたんだと思いますけどね。
派閥があるんですよ、職員室では政治も必要なんです。会社なんかでもあるでしょう。
K先生はもともとは教頭派閥だったんですけど、少し前から生徒指導部のJ先生の派閥に近付いてましたからね。
なんていうか、これは私みたいな年寄りの意見なんですけどね。若い人はあんまりそういうのやっちゃダメなんですよ。若いうちはもう誰にでも謙虚に、誰にも媚びずに地味にやらなくちゃ。その辺があの人は上手過ぎたし、下手過ぎでもあった。そういうことですよ。
具体的にですか。だから、あの人が入ってきたときはいかにも体育会系って感じでこう、シャキシャキしてるんですよ。朝も早いし夜は遅くまで残るし、酒の付き合いなんかも良くてね、そういう若いのは気に入られるじゃないですか。だからあの若さで結構大事な仕事もしてたでしょ、あれもさ、ハイ私がやります、なんて手挙げちゃうんですよ。もちろん良いことですよ、やる気があって、それも派手な仕事だけじゃなくて地味な、椅子並べとかそんなことでもやる気満々なんですから。
もっと若い頃はそれでずいぶん可愛がられてましたよ、校長だってお気に入りだったんじゃないかな。うちの校長はほら、ああいうタイプだから元気なのが好きでしょ。それで、色々と買ってたんだと思いますよ。
でもねぇ、そこでやめておけばよかったんですよ。いえ、仕事じゃなくて、そういう政治的な活動を。欲を出しちゃったんでしょうね、もともとバカな子じゃないから、教科の勉強なんかも頑張っちゃったんですよ。外部の研修なんか行ったりして、受験対策とかも色々他の先生に聞いたりなんかしてね。
たぶんそういう元気な、最初の頃みたいなキャラクターは限界があると思ったんでしょうね。そりゃそうですよ、若い先生は毎年入ってきますから、いつまでも元気だけが売りじゃダメ。そういう意味じゃ正しいですよ。
でも正しいことがいつでも認められるわけじゃないでしょ。可愛くなくなっちゃったんでしょうね、体育会系のノリに変な小賢しさがついちゃったもんだから、何かこう、鼻に付く存在っていうのかなぁ。
それで教頭に呼び出されることも増えて、職員室の中でも敵ができるようになってね。もちろん偉くなればそれは仕方ないんだけど、偉い人の中ではまだ全然若いから、やっぱり難しかったと思いますよ。側から見ていて空回りだなぁと思うことも多かったかな。そんな頃にJ先生の派閥というか、生徒指導部に入って、またイキイキしちゃったんですよ。
もともと生徒指導は上手い方だったから、悪い奴なんかいてもデカい声出してきっちり叱れるんですよ。若い子はそれができないのが多いから、それで結構重宝されてね。J先生も対抗派閥から有望な若手がきたもんだから色々目を掛けてたんだけど、そんなの教頭からしたらおもしろくないじゃない。
そういういざこざが裏である中で、クラスの生徒の成績のこととかで色々責められたんでしょうね。保護者のクレームもあったそうだし、まあ生徒指導部の教員が矢面に立たされるのは珍しくもないんでね、本当はJ先生が庇ってやったらよかったけど、そこはほら、最近移ってきたような若手のために身を挺してってほどの熱意はないわけでさ。
生徒との交際なんていうのも言いがかりだと思いますよ、だってあまりにタイミングが整いすぎてるからね。火のないところに煙を立てるのなんてそんなに難しくないんですよ、そういうよくある話です。
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