第10話 お世話になったので

 K先生にはお世話になったので、やめたって聞いてショックでした。卒業してからも学校に遊びに行くと必ずK先生には挨拶してました。就職が決まったって言った時もすごく喜んでくれて、お祝いに飲みに連れていってくださいって話もしてたんです。

 在学中、K先生にはすごく助けてもらいました。成績が良くなかったから再テストとか多くて、厳しいしすぐ怒るから最初は嫌だったけど、絶対見捨てないんですよ。受験の時も夜遅く連絡しても、すぐ返信くれたりして、受験前の一番メンタルがきつかった時もずっと励ましてくれました。

 その頃はK先生もまだ担任はしてなくて、ただの授業の先生だったのにここまでしてくれるんだと思って嬉しかったし、ぶっちゃけ担任より信頼してました。一回だけ、K先生に過去問の解説頼んで約束したのにすっぽかして帰っちゃったことがあったんですけど、次の日にめちゃくちゃ怒られて、でも先生が「絶対に合格してほしいからこんなに怒るんだよ」って言ってくれたんです。あの日のことは忘れられません。親以外の大人が本気で怒ってくれるって、貴重じゃないですか。それから心入れ替えて勉強して、第一志望はダメだったけど第二志望に合格できたのは、あの時ちゃんと怒ってくれたK先生のおかげです。

 生徒と付き合ってるのがバレたって、それ本当なんですかね。あんまり信じられないです。昔の先生はそういう話しても全然隙がないっていうか、生徒と付き合えるかとかそんな話しても「ありえない」って鼻で笑う感じでした。そういうクールなところが良いって思ってたので、生徒と付き合うイメージが湧かないです。しかも、今の先生と生徒って十歳以上離れてますよね。二十代前半と高校生だったらわかる気もするけど、三十歳から見たら高校生なんてめちゃくちゃガキですよ。

 うちの学校、昔からブラックだって言われてたからそれでやめたんじゃないかなって思います。昔からやめちゃう先生すごく多かったし、どの先生もブラックだからやめたって言われてました。就職した今だからわかるけど、学校の先生って大変ですよね。休みの日でも生徒から連絡が来たら対応しなきゃいけないし、夜も九時過ぎまで学校が開いてたから残業時間も長いってことですもんね。

 K先生ともしまた会えたら実際の話を聞いてみようかな。本当のところはどうなのって、たぶん教えてくれそうな気がします。

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