第6話 モンスターペアレント

 K先生には上の子の時にもお世話になっているので、下の子も担任になってもらえてラッキーだと思っていたんですけどねぇ。

 上の子は男の子で、すごく手のかかる子だったんです。サッカーしか興味がなくて勉強なんて全くダメで。二年生からK先生のクラスになって、少しずつ勉強してくれるようになりました。熱心な先生なんですよ、放課後一緒に勉強してくれて、他の教科のプリントなんかも用意してくれたそうです。それで息子もやる気になって、二年生の後半からはどんどん成績が上がりました。大学でもサッカーがやりたいって言って、そうしたらK先生がわざわざサッカー部の外部コーチに連絡を取って色々と進路の情報を集めてくれたんです。私はそういうところに疎いものですから、主人と一緒に学校に行って詳しく教えていただきました。

 実際に息子の希望の大学が決まってからも本当に先生には熱心に指導していただいて、推薦入試も受けたんですけどそちらはダメで、結局二月の最後の試験で合格したんです。

息子には後で聞いたんですが、試験の当日は大学の試験会場まで来てくれていたそうです。厳しい先生なんですけど、愛情があるんですよね。合格を報告した時も泣いて喜んでくれたそうです。

 娘は大人しくて息子のように手がかからないからそこまで心配してなかったんですが、大人しいせいでかえって進路の希望もなかなか出てこなくて。本人はなんでもいいって言うんです。それで、K先生からは推薦で行ける大学はどうかと提案されたんです。娘は息子と違って成績も良くて、親の私が言うのもなんですけど優等生タイプなんですよ。だからK先生も、コツコツ頑張ってきた真面目さとか、そういう強みを活かしてほしいって仰ってくださって。娘もまんざらでもなかったみたいで、それなら推薦で行ける一番偏差値の高い学校が良いなんて言って。それでK先生からいくつか大学を教えていただいて、オープンキャンパスに行ってみたらすごく良くて。

 女子大なんですけど、親としては希望がはっきりしてくれて一安心です。

 このままK先生が担任なら受験も安心と思っていたので、おやめになったと聞いてすごく残念でした。娘もK先生なら推薦で大学に行かせてくれると思っていたもので、ショックを受けていましたよ。新しい先生も悪くはないそうですけど、もっと上のレベルを目指せって言うらしくて……。

 でも、うちみたいな家庭だけじゃないらしいですからね。娘に聞いた話だと、クラスの中にはなんていうか、モンスターペアレントみたいな方もいるらしいんですよ。私は上の子で経験してますし、劣等生も優等生も育てたからちょっと引いて見られるんですけど、私立の親御さんってちょっと行き過ぎた人もいるでしょう。息子のサッカーの関係で知ってる親御さんなんて、息子が試合に出られないとコーチにクレーム言うんですから。

 K先生はおやめになる理由を言わなかったそうですけど、そういう保護者からの圧力があったんじゃないかと思っています。どうやら三年生になれなかった子がいるらしくて、その子の親のせいじゃないかって。娘が言うには本人がだらしなくて、先生は頑張ってたって言うんですけどね。本当なら気の毒な話ですよ。

 まあ自分の子どものことなら必死になるのもわかるんですけど、何もかも学校のせいにしても仕方ないですから。

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