第12話 デジタルの未来

リサとラシュコフの解放から数か月が経過した。世界は、彼らの暴露によりデジタル監視社会の現実を知り、監視技術の倫理と自由の問題について大きく揺れ動いていた。多くの国で、市民運動によって監視技術に対する規制強化が進められ、プライバシー保護のための法整備が急速に進んだ。しかし、監視の巨人たち、ビル&メリンダ・ゲイツ財団とマイクロソフトは、その活動を完全に止めたわけではなかった。彼らは、新たな戦略を立て、デジタルの世界での支配を維持しようと画策していた。


リサは、彼らの動きを監視しながら、デジタル社会の未来を見据えるための活動を続けていた。彼女は市民運動の象徴的な存在となり、監視技術とプライバシーに関する国際的なカンファレンスでスピーカーとして招かれるようになった。ある日、彼女は国連のデジタル社会サミットに参加し、各国の代表者たちに向けてスピーチを行った。


「デジタル技術は、私たちの生活を便利で豊かにする一方で、私たちの自由とプライバシーを侵害するリスクをもたらします。」リサは壇上に立ち、世界中の人々に語りかけた。「私たちは、その力をどのように使うべきかを真剣に考え、行動しなければなりません。監視社会を許さず、デジタルの未来を私たち自身の手で形作るために。」


サミットの会場には、世界中から集まったリーダーたち、企業の代表者、市民団体のメンバーが耳を傾けていた。彼らの中には、ビル&メリンダ・ゲイツ財団とマイクロソフトの代表も含まれていた。リサの言葉に対して、彼らは冷ややかな視線を送っていたが、その場での反論は控えていた。


リサのスピーチが終わると、会場は一瞬の静寂に包まれ、その後、拍手が湧き上がった。多くの人々が、リサの訴えに共感し、デジタル社会における自由とプライバシーの重要性を再確認した。しかし、その拍手の中には、監視の巨人たちの影が潜んでいることをリサは感じ取っていた。


サミット後、リサはラシュコフと共にカンファレンス会場を後にした。二人は近くの公園のベンチに腰を下ろし、静かに話を交わした。


「私たちの戦いは、ようやく第一歩を踏み出したに過ぎない。」リサは遠くを見つめながらつぶやいた。「監視の巨人たちはまだ影の中で動き続けている。彼らは新たな技術を使って、また別の形で社会をコントロールしようとするでしょう。」


ラシュコフは頷いた。「デジタル社会の未来は、今まさに私たちがどのように行動するかにかかっている。監視技術を利用する者と、それに対抗する市民たちとの戦いは続くだろう。でも、リサ、あなたが示した真実は、人々に大きな力を与えた。」


リサはラシュコフを見つめ、微笑んだ。「ええ、たとえ監視の巨人たちが新たな形で現れても、私たちはもう目を背けることはない。デジタルの力を私たちの未来のために使う。自由を守るために戦い続ける。」


その言葉の先に広がるのは、監視と自由、テクノロジーと倫理の交差する未知の未来だった。リサとラシュコフは立ち上がり、次なるステージへと進むための一歩を踏み出した。彼らの背後で、世界中の人々がその姿を追いかけ、新たなデジタル時代の可能性と脅威に向き合う決意を固めていた。

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【完結】リサ・カーター 真実の目 シーズン2『デジタルの檻』真実はデジタルの檻に囚われている──暴露せよ、巨大な陰謀を。いつ規制されてもおかしくない、禁断の真実にあなたは耐えられるか。 湊 マチ @minatomachi

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