第7話 裏切りの代償

リサはジェームズの指示に従い、街の片隅にある地下の通信ハブへとたどり着いていた。錆びた鉄扉を開けると、冷たい空気が彼女の頬をかすめ、内部には複雑に入り組んだ配線とサーバーラックが並んでいた。彼女はUSBメモリを手に持ち、壁に埋め込まれた端末に急いで接続した。画面が明るく点灯し、彼女の心拍が高鳴る。


「頼む、動いてくれ…」リサは指先を震わせながら、ファイルのアップロードを開始した。画面には「アップロード開始」の文字が表示され、バーが徐々に進んでいく。


その瞬間、地下施設の鉄扉が勢いよく開かれ、重い足音が響いた。リサは驚いて振り返ると、そこにジェームズが立っていた。彼の目には冷たく無感情な光が宿っている。彼がリサに向かって歩み寄ると、彼女は思わず後退りし、端末に手をかけてファイルのアップロードを止めようとした。


「やめるんだ、リサ。」ジェームズの声は低く響き渡った。「これ以上、無駄な抵抗はするな。」


リサは彼の言葉に困惑し、必死に問いかけた。「ジェームズ、何を言っているの?私たちが止めなければ、彼らは世界を混乱に陥れるのよ!」


ジェームズは冷酷な笑みを浮かべ、彼女の手からUSBメモリを強引に引き抜いた。「君はまだ理解していないようだな、リサ。『プロジェクト・レッドシールド』は、すでに君が止められるレベルの話ではない。私は最初から彼らのために動いていたんだ。」


リサの頭の中で全てが崩れ落ちた。彼女は衝撃で動くことができず、ただジェームズを見つめるだけだった。「あなたが……裏切っていたのね……」


「裏切りではない、リサ。」ジェームズはUSBメモリを握りしめたまま、彼女に背を向けた。「これは、世界を救うための最善の手段だ。既存のシステムを壊し、新たな秩序を築く。それが『コンサルタント』の役目だ。」


リサは絶望に満ちた目でジェームズを見つめた。「そんなこと、誰が許すの?私たちが、その犠牲になるべき人々の未来を奪うなんて……」


ジェームズは振り返り、彼女の目を真っ直ぐに見た。「理想を語るのは簡単だ、リサ。だが現実は、力を持つ者が未来を決める。君はその事実に抗おうとしたが、今ここで終わりだ。」


彼は懐から拳銃を取り出し、リサに向けた。リサは一瞬息を呑んだが、次の瞬間、彼女は端末に向かって身を翻した。「まだ終わっていない!」彼女は端末に再びUSBを差し込み、手動でアップロードを再開しようとした。


銃声が響き渡り、リサの肩に激痛が走った。彼女は叫び声を上げながら床に崩れ落ちた。ジェームズは銃を下ろし、冷たくリサを見下ろした。「君には失望したよ、リサ。」


リサは痛みに耐えながら、ジェームズを睨みつけた。「たとえ、私がここで倒れても、真実は……」


ジェームズがリサの言葉を遮ろうとしたその瞬間、通信ハブの扉が激しく破られ、黒い装備に身を包んだエージェントたちが突入してきた。彼らはジェームズに銃を向け、即座に彼を取り囲んだ。


「何を……?」ジェームズは混乱した表情で彼らを見た。


エージェントの一人が無線で指示を受け、冷淡に言い放った。「計画の変更だ。あなたはもう必要ない。」


ジェームズは驚愕と怒りの表情を浮かべ、リサに向けて銃を再び構えた。しかし、エージェントたちが即座に銃口を向け、ジェームズに発砲した。ジェームズはその場で倒れ、彼の手からUSBメモリが転がり落ちた。


リサは激痛の中で、床に転がるUSBメモリを見つめた。彼女の視界はぼやけ、意識が遠のいていく。しかし、彼女は自分に残された最後の力を振り絞り、USBメモリに手を伸ばした。


エージェントたちは無言で彼女に近づき、彼女がUSBメモリに手をかける前にそれを奪い去った。リサはもはや抵抗する力がなく、そのまま床に倒れ込んだ。


エージェントのリーダーがリサの方を見下ろし、冷たい声で言った。「これで終わりだ。『プロジェクト・レッドシールド』は、計画通りに進む。」


リサの意識は闇に包まれ、彼女の耳に遠くでエージェントたちの足音が響いていた。彼女は全てを奪われ、真実は再び闇に葬られるのかという絶望の中で、意識を失った。

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