闘い、轟かせ、丘の上に立つ者

ガラドンドン

闘い、轟かせ、丘の上に立つ者



ある冷たい夜の事。

それらはまるで、海から立ち昇る流星群かのように輝き、天空へと飛び立ち始めた。

海からの星は、瞬く間に世界中へと散らばって行き。資格・・を持つ人間達の元へと降り注いだ。


鱗に似たその欠片を受け取った人間は、超常の力。そして数奇な運命をもその手に掴む事になったのだった。


欠片を手にした者達は、否が応でもその運命に巻き込まれる事となる。

欠片を持つ者通しで惹かれ合い、争い合う。決してその運命を捨て去る事は出来はしない。


彼等は轟かせるような音と共に。自らを只人の姿から、闘うものへと超越させる。


頭に響く声は、彼等へとこう叫ぶ。


──只一人となりて、丘の上に立て──と。


人は彼らを、闘い、とどろかせ、そして最後におかの上に立つ者。

そう、トドオカサンと呼んだ──!!



ある者は道を極めし人間。すなわち極道。

己が純粋なる欲望の為に、圧倒的なる暴政を敷かんとする暴君。

なれど決して幼子を傷つけず。仁義を通す人望厚き傾奇者。

最強のトドオカサン筆頭候補。藤堂組長。


「落とし前は、最後までキッチリとつけさせてもらおか。

この世にトドオカはワイ一人で充分やねん。

行くで。お前の余命は後何秒かのお!─変、身─!」



ある者は、大切な友を巻き込まない為に。

黒いセーラー服を翻し、贋作の日常を愛する17歳の少女。

ポン刀を振るう冷徹の乙女。凍土桜花とうどおうか


「私は只。友達との、当たり前の日常を守りたいだけ。

例え彼女の言葉が何一つ分からなくても。傍にいてくれる、それだけで大切だから。

邪魔をするって言うのなら。残らず細切れにして見せる。

待ってて、新渡にいと。私絶対、私のままで、貴女の元へと帰ってみせるから。─変、状ぉぉ─!」



ある者は会社員。されど只の会社員ではない。ド級のドパワハラ上司。

会社と己の利益、そして出世の為に。有象無象を踏み台に、丘の上へと這い上がる。

その眼にあるのは、全ての人間にパワハラをする自分のみ。登戸とど部長。


「喋るな。黙っとれ。言い訳は聞きとう無い。

お前に費やした時間分、ワイは人生を損失しとる。この損失分を穴埋めにするには、お前の命で払って貰うしかありゃせぇへん。

何か言わんかい。何話すんかも自分じゃ考えられへんのんか。

ほんま使えへんやっちゃのう。もうええわ。終わりや自分。視界から消えろや。─変転─」



ある者は打ち切りマンガ好きのお姉さん。

彼女は語る。終わってしまう物語の儚さと美しさを。終わりへと向かうその熱さを。彼女は、美しいと感じた物語達を終わらせる為に。終わる物語の、末期の輝きとその怨嗟の声を聞く為に。過酷な闘いへと身を投じる。鯔詰とどづまりお姉さん


「別にね。誰しもに分かって欲しいだなんて言わないさ。けど私は思うんだ。終わらないでくれと言う願いのあの熱さ。終わってしまう寸前の物語の閃烈さ。その両方を美しいと思う心は矛盾しないと。

私は終わりが見たい。打ち切りが見たい。だがまだその子には、自分の物語が消えてしまう事への怨嗟が足りない。

そこをどけよ悪党。お前にその子の物語は打ち切らせない。─変遷へんせん─」



ある者は警察官。正義の代行者。否。彼こそが正義。己がルールに正義が後からついてくる。恫喝、脅迫、違法捜査は正義の為に。正義が自分で自分が正義だ。

許して欲しけりゃ相応の物を用意しろ。さもなきゃ穴だらけにしてやるよ。百々丘とどおか警部。


「おらはよ膝ついて両手頭に乗せんかい!こちとら国家権力やぞ!

何を逆らっとんねんさっさと罪自白して裁判掛けられて死刑ならんかい面倒くさいのう!あ~、ええわええわ。ここで正当防衛でしたって事で撃ち殺したろ。

どうせお前もカスの犯罪者やろ。オレが裁いたる。─変革─!」



ある者は、この世全てを喰らう為。

真なるゲテモノはこの世そのものだ。悪食を貪るゲテモノ喰い。

常人では口にしようとも考えない、異常なる美味を追い求めるが故。糖度御代とうどおかわり


「自分は喰いたいねん。そして皆に自分が味わったもののを味わわせてあげたいねん。けど、この世界そのものを喰えるんはたった一人しかおらへん。その為には皆と自分が同化してしまうしかあらへん。せやから自分は、皆の事を食べてあげたいんです。あぁぁ腹減った!─変ん態いい─!!」



ある者は陰陽師。全てのトドオカサンを観測しながらも、闘いを俯瞰する特異点。

この世の摂理を語りつつ。闘いを見守るその瞳には何が映るのか。

正体本心ままならない存在ながら、断言出来る事が一つある。この男は、只々強い。轟鬼ノ奸命とどろきのおかめい


「悪道。正道。あらゆるかおとあらゆるからだ。全てを孕み、可能性を産む。それがトドオカサンなる存在達。トドオカサンから逸脱しようとした者に、今生の未来はありません。諦めなさい。

産まれ変われば、いつしか只の人へとなれるでしょう。─変成へんじょう─」



ある者は封印されし太古の神兼Vチューバー。

その姿形は無限自在。最も原初のトドオカサンに近き者。恐ろしき者。その正体を暴かんとすれば、神意の罰が下されるだろう。

近づくなかれ、知るなかれ。命惜しくば聞く事なかれや願うなかれや。趣味は配信を通して人の子の耳を弄ぶ事。名を忘れられた百が丘の神。


「ワシは人の子の争いになんぞ興味は無いが。牙を向けて来るなら容赦はせんよ。

なぁに本気は出さん。人差し指と親指。そして吐息だけで充分よ。お主を昇天させるには、な。そお固くなるでない。眠りに落ちるかのように一瞬よ。

どぉれお耳を拝借。極楽地獄を聞かせてやろう。──変相へんそう──」



ある者はロボット。謎の怪人によって造られた人工トドオカサン。その目的はたった一つの単純なもの。全てのトドオカサンを抹殺し、唯一無二のトドオカサンとなる事。トドオカサンを名乗る事以外、一切の全てが無意味で無価値な哀しき機械。Todooka.Mk-3


「ワタシはトドオカサンにナルべくツクられたモノ。スナワチ、ワタシこそがシンのトドオカサンにモットモフサワシイ。

アナタとの交流はヨイ学習とナリました。もうヨウズミです。アリガトウゴザイマシタ。サイゴにどうかオネガイです。一瞬でラクにしてあげたいノです。

ドウカ、テイコウをしないでクダサイ。アァ、ハカセ、待って、マダ、ジェノサイドモードの使用は、ハカセ、マッテ!

─変形ヲ開始シマス─」



100人を超えるトドオカサン同士の殺し合い。

激化する闘い。傷つき、倒れていく数多のトドオカサン達。

彼等の知らぬ間に、巨大な陰謀が渦巻いていく。


突如発生する大量の無職!自分をトドオカサンだと名乗る一般市民異常者の増加!

暴徒化した無職に襲われ、レッサートドオカへと変貌していく無辜の民!

混乱低迷する社会!ヤクザの政界進出!現れるダークトドオカサンを名乗る者達!


トドオカサン達の闘いは怒涛の坩堝を極め、いよいよ佳境へと向かって行く。

その陰には、闘いを裏で操る闇の者達がいた。


低級無職達を率いる謎の怪人。マスター無職。

彼の瞳には、トドオカサンに対する激しい執着しか映らない。トドオカサンをこけ降ろしながらも崇拝する。それはまるでキリストに背いたユダであるかのように。


「この闘いの目的は、トドオカ蟲毒。

トドオカサン通しで争い、オレが思う理想的かつ最強のトドオカサンを造り出す事。最もトドオカ粒子の濃いものが生き残る。

オレを越えられ無い奴に、トドオカサンを名乗る資格は無いんや。

どうか打倒して見せてくれ。─超越変身─」



時には毎日ラーメン屋を練り歩き。時には毎日新たなダークトドオカさんを生み出して行く謎の男。火ノ来ひのこ

闘いを生み出し。悲劇と喜劇を生み出して。繰り広げられるトドオカサンの争いに愉悦の笑みを零して行く。その目的は、誰にも分からない。


「私が描いたトドオカサンは、この世界に実体化する。

所詮君達、そして君達の闘いも。私が数多描いた物語の上のインクにしか過ぎないんですよ。ここで話は一区切り。これからは、新たなシーズンです。

さぁ。章とエピソードの──編集へんしゅうを始めましょう──」



混迷なる殺し合いの末に、闘いはいつしか。光のトドオカ陣営と、闇のトドオカ陣営の大戦争へと移り変わってゆく。

この世が結末は。光のライトトドオカサンと、闇のダークトドオカサンの決着に委ねられる事となったのだった。


トドオカサンの物語の欠片達。欠片と欠片の交差の末に、行きつく結末とは。


**


極道と少女は、運命を打破せんと苛烈な戦場を生き抜く。


「そんな、藤堂組長。どうして私を、庇って。

私、貴方に守られてばっかりなのに、なんで」


「アホな事ぬかすなや桜花。こんなん傷にも入らへん。

オイコラ、お前は運命に抗ってみせるんやろ。そしたらしょぼけた顔しとらんで、シャッキリせんかい!

お前がトドオカサンやなくなりゃ、ワイも後味の悪い殺しはせんで済むんやしのぉ」


**


刑事とロボは、奇妙な絆を育む。


「おうこらちゃっちゃと働かんかいこのポンコツロボ!

次は近所の山岡さん家に空き巣が入った件の調査じゃ。

昼間っから舐めた真似しよった奴を引きずり回したる!」


「ワタシはポンコツデハ、アリマセン。

ワタシハ、ヒトを超越スルように、ツクラレマシタ。

スナワチ、アナタより、ハイスペック、デス。

理解デキマシタカ。ポンコツ刑事」


**

終わりを渇望するお姉さんなるもの。陰陽師。名を忘れられた神は相対する。


「くっさい、くっさいねぇ!

打ち切り損なってダラダラと続いてしまって腐臭がしはじめたお話みたいな臭いがするねぇ!打ち切られる所が今直ぐ見たい!」


「油断しないで下さいよ。彼女は一応旧き神。

調伏するにも一筋縄では行きませんから。まぁ私の敵ではありませんが」


「不敬な奴等じゃのう。特にそこのおなご。

ワシはまだ終わり時では無いだけじゃ。もう後1000年はワシのリスナー、すなわちトドナー達で楽しむつもりでな」


**


仮初の協定は、腹の底でどちらが先に相手を喰らわんかと睨み合う。


「うんんまぁ~い!このサソリのイナゴの粉末まぶし竜田揚げがさいっこうにたまらへんのんですわぁ!部長も一個どうですかぁ!

部長もきっと、食べたら美味しいんでしょうねぇえ」


「知らんがな。はよ他のトドオカサン見つけに掛かれや。時間勿体ない。耳ついとらへんのか?まともに働く事もでけへんのんかこの社会不適合者が。

自分また次ふざけたモン喰わせようとしよったら、もう終わりやからな。

……うっわ、意外といけるやんけ。なんでやねんおかしいやろ」


**


これは数多の轟かせる者となった存在達の、闘争の物語。

真のトドオカマンを決める闘いが、今始まる。



屍が丘の上に立つ者は、只一人。



Todooka・The・Movie~EPISODE FINAL~


今年夏放映予定

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