二十六日目
夢をみた。
朝、登校すると、クラスメイトの頭が無くなっていた。
首のところでスパッと切られていて、よく見ると、その断面に番号が書かれていた。
席に着くと、桜と思わしき声が、
「おはよう! 0343」
と言って、俺のことを番号で呼んだ。
振り返ると、頭が無い人間のメスが、親しげに俺の方に手を振っていた。
「おはよう」
俺は、
彼女は頭が無くなった代わりに、オーブのような色のついた玉をそこに浮かべていた。人によって大きさは違うが、彼女だけでなく、他の人たちも同じように浮かべていた。
おそらく、感情を表すものなのだろう。
明らかに怒っている人は真っ赤だったり、楽しそうに喋っている人たちは緑だったり、喜んでガッツポーズをしている人は黄色だったりした。
彼女はなぜか、喜んでいた。それも、かなり。
頭の黄色が、水で少し薄めたような黄色ではなく、入れ物から出したばっかりのような濃い色をしていた。
「なんか、嬉しいことでもあったの?」
俺は率直に聞いてみた。
彼女は「えー」と言いつつ、顔の黄色を怖いほど濃くした。
「そっちこそ、嬉しいことあったんじゃないの? めっちゃ黄色いよ?」
心外だった。
自分ではそんなつもりなかったのに、知らず知らずのうちに、喜びが溢れ出てしまっていたらしい。
「うーん……」
俺は、どう答えようか迷った。
自分の
幸福感? 開放感? 充実感?
いや、そのどれでもない。これはただ――
「快適、だなって」
どこを見ても、不快な要素が無かった。
人間が番号で識別されていて、感情が視覚化されている。
「なにそれ! アハハハ! あっ、一限体育じゃん。行こうよ」
桜は、喜びに浸っている俺の手を取って、昇降口に走って向かった。
外に出て、校庭に向かう途中で、俺は立ち止まった。
校庭のそこらかしこに、何かが置かれていたのだ。
あれは……
「生首?」
俺の背中に悪寒が走った。
何か、いやな予感がした。
「どうしたの?」
桜の声が俺を呼んでいた。
「もうみんな並んでるよ?」
「なんか、生首が」
俺はどうすればいいか分からず、とりあえず口を開いてみた。
「あーあれね。
言われている言葉の意味が、分からなくかった。
俺は固まったまま、首だけ動かして桜を見た。
「普通のヒトは、あれが無いと困るんだよ?」
彼女は、俺を見つめて――
口角を、上げた。
「アハハハハハハ!」
なんでだ……
「アハハハハハハ!」
なんで、表情なんてものがあるんだ!
「うわあああああああああああああ」
――そこで俺は、目を覚ました。
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