第14話 顔で笑って心で泣いて

MC晴子は困惑していた。

「うっ、こういう場合は、どうしたらいいの!?武佐士!」


昭和動画マニアの武佐士くんも困惑。

「ねるとんでよつどもえ!?なんて見たことないよ。」


「ええい!晴子さんルールでいくよ。

佐藤くん、どーーーぞぉ。」


「おっ俺からでいいの!?」


「どうぞっ。」


神妙な顔つきの佐藤くんは、高井ちゃんの前へ。


「高井さん、少し前から気になってて、

どんどんドンドン気になってきて、

好きになってしまいました。

お友達からお願いします。」

手を伸ばす佐藤くん。


下を向いたままの高井ちゃんは、小さな声でつぶやく。

「ちょっと待ったはないの?」


声が聞こえた女子の面々は、マーくんに注目。

目線に怯えながらも、他人事のように、

愛想笑いをするだけのマーくん。


高井ちゃんは顔をキッと上げて、マーくんをにらみつける。


目をそらせるマーくん。


ひと呼吸おいて、高井ちゃんは、佐藤くんに答える。

「ごめんなさい、佐藤くん。」


そう言い終わると同時に、

走り出し、この場から逃げ出す高井ちゃん。


「あぁ!」

佐藤くんは上げていた腕をさらに伸ばして、

高井ちゃんを追って捕まえようとする手は動いたが、

足が動かず、その場で思考も停止。


「待って!舞子!」

高井ちゃんを追って3歩踏み出した晴子だが、

キュッっと向きを変えて、2歩戻り、マーくんの手を掴み、引っ張る。

「お前も来い!!」


「ちょ、とっ、おぃおぃ!」

なぜか強い抵抗はしないマーくんは、晴子に連れ去られる。

二人は高井ちゃんを追う。


残された佐藤くんも、後を追おうと一歩踏み出す。

が、瞬発力を感じない緩い一歩で、

脇にいた六野 美唯(ろくの みゆ)に右腕を捕まれる。

中原 日向(なかはら ひなた)もしゃしゃり出て、

佐藤くんの左腕に抱きつく。


「頑張ったね、佐藤くん。ちゃんと告白できたね。」

日向は佐藤くんの肩に頬ずり。


「うん、佐藤くんえらい!」

六ちゃんも右腕に抱きつく。


佐藤くんは、半泣きな顔から、ヤレヤレ、な顔に。

「うん、あんがと。」


顔で笑って心で泣いて。

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