第7話

ポンピロリーン!ポンピロリーン!

ドアが閉まります。ご注意ください。

プシューーーーーーン。


駆け込み乗車は良くないと、わかってはいるが

今はそうは言っていられない武佐士だった。


「電車に間に合った。これで時間までに水族館に着くな。」

「晴子さんとの待ち合わせに遅れたら、一生言われそうだもんな。」

「下見とはいえ、いや、下見だからこそ、

晴子さん気合い入ってそうだもんな。」


「今回の企画って、いわゆる、合コン、ってやつだよな。

俺も、いよいよ高校生らしいことするんだな。」


「言い出しっぺの晴子さんは、やっぱ、こういう方面に強いよな。

みんなを楽しませて、みんなを幸せにする。

、、、、すごい子だよな。いい子だよな。」


「そういえば入学式の日、

クラスで初めて声を掛けてきたのも彼女だったな。」


「俺とは席が前後だったこともあるけど、

帰るまでにはほとんど全てのクラスメートに声かけてたよな。

フフフッ!ともだち百人できるかな♪の勢いだったな。」


「佐藤の好きな子、連れてきた時はびっくりしたな。

苗字と名前と高校名しか分からないのに、

探してきて交渉して、佐藤と対面までさせちゃったもんな。

すげー行動力は、尊敬に値する。」


「でも、ちょっと繊細なところもあって、

元彼と別れた直後は、本当にホントに辛そうだった。

、、、、立ち直りが早いのも、すごいけどね。」


「正義感が強いんだよな。困ってる人は見過ごせないし、

意地悪している人は、断固許せないし。

でも、それが高じて、ヤバい人にも恐れず対峙したりするから、

危なっかしいんだよな。

そう、あと、ちょっと口が悪いから、

いろいろ誤解されちゃうんだよな。」


「口を閉じていれば、結構美人なんだよね。

切れ長の目に小さな鼻、ふっくらした可愛い唇。

そう、すごい小顔だし。

身長も平均よりちょっと小柄で、

どちらかといえば、スレンダー。

でも痩せすぎなわけではなくて。

胸も、、、ちゃんと人並みについている!

フフフッ!思い返せば、結構タイプだよな、晴子さん。」


「でも、晴子さん、理想が高そうだよね。

大きな失敗もしているから、慎重になってるんじゃないかな。

そんじょそこらのヤツでは、ちょっと役不足だね。

次に晴子さんを射止めるのは、どんなヤツだろう。」


電車での移動中、

霞晴子のことばかり考えているとは、

自分では気がつかない武佐士だった。


「さぁ、駅にもう着くぞ。

水族館の入り口まで、ちょっとだけダッシュだな。急げ!」






遠くにターゲットを見つけた武佐士。

「あっ、晴子さん、いつもと違うワンピース、かわいいーーー!」

淡い黄色のワンピースを着た霞晴子までは、

まだ距離があって、声は届かない。

、、、、3、2、1、到着。


「おはよう、晴子さん!」


「お、は、よう、って、今、昼だよ。」


アルバイト先では、午後からの出勤でも、おはよう、から始まると説明。

それよりも何よりも、お腹減ったな。

晴子さんのお弁当に期待、大!大!大!

同年代の女の子からのお弁当なんて初めてだ。

純粋にうれしいなぁ!

青春してるなぁ!俺!






あぁ、やっぱり一眼レフ持ってきてよかった。

この水族館は、俺が尊敬する建築家の作品なんだ。

この梁と天井は、すごいな。

晴子さんはクラゲに夢中だし、

ちょっと建物の撮影をさせてもらおう。

露出を変えて、構図を変えて、、、、。

クラゲの水槽越しに、晴子さんの姿が。

晴子さんの澄ました顔。

晴子さんの淡い輪郭と儚げな笑顔。

これは盗撮だ、って後で怒られそう。

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