第5話

ピロリーン!


「あっ、晴子さんからメッセージだ。」


【明日はお昼ご飯食べずに集合して。お弁当持っていく。】


「へぇ、乙女らしいところもあるんだな。」


【うれしいね。楽しみ。】


「そうだ、カメラ充電しなきゃ。」







「おはよう、晴子さん!」


「お、は、よう、って、今、昼だよ。」


「ごめん、水商売は夕方出勤でも最初の挨拶は、おはよう、なんだ。」


「カフェは水商売なのね。

最近、アルバイトに、リキ、入っているのね。」


「あぁ、芸大は一浪二浪当たり前って言うし、

東京で一人暮らしになるだろうし。

少し資金を貯めておきたいんだ。」


「そっか。夢があるんだね。」


「そう、夢なんだ。

その前に、腹減ってるんだ、よかった?」


「うん、持ってきたよ。向こうで食べよう。」








「ちょい、このハンバーグ美味しいね。

卵焼きの甘さ加減もちょうどいい。」


「私、、、、胃袋掴んだからね。」


「うん、胃袋掴まれた。」


「ちょっと、言ってる意味ちゃんとわかってる!?」

「《私、耳が赤くなってるかも。》」


「えっ、何?」


「わかってないのね。」


「ごめん、何。」


「ハンバーグ、ちょっと自信あるんだよね。」


「うん、最高!おいしい!」


「ありがとう。、、、、。」







イルカのショーは、時間が取られすぎるので、

下見と割り切って、さわりだけ見ることに。

席に着いて開演を待つ間、

なぜか盛んにカメラのシャッターを切り始めた武佐士。


「イルカまだだよ。何撮っているの?」


「建物の屋根。ここの建物、有名な建築家の伊藤豊太郎の設計なんだ。」


「そういえば、見たことがない変な屋根!」


「でしょ。こういう変なのを作りたいんだ。

ガウディみたいに、歴史に残る変なものを作りたいんだ。」


「ガウディってバルセロナの?」


「そう、それ。サグラダ・ファミリアみたいな。

それこそ、エジプトのピラミッドみたいに、

何千年も先の人にも見てもらいたいな。」


「すごい、すごいね。桁外れな夢だね。

こんなこと言う人、初めて見た。すごいね。

武佐士の夢なのね。」






晴子は、思った。

なんだか、自分が情けなくなってきた。

小さなことで悩んでいる自分が恥ずかしくなってきた。

武佐士のでっかい夢、叶うといいな。


私は、邪魔になりたくないな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る