深夜テンション物語

千才生人

第1話 深夜の激辛カップ麺

 時計の針が深夜2時を指していた頃、とある一軒家の一室だけ、明かりがついていた。


「今から深夜に激辛カップ麺を食べたいと思いまーす!」


 中学生にも関わらず、深夜に起きていて。

 今日学校があるのにも関わらず、深夜に起きていて。

 深夜にも関わらず大きな声で話し笑っている。


『おいおい、まじかよ!』


 そいつはスマホを二台持っており、片方は友達との通話に使い、片方は動画を撮る用に使っている。

 どうやら、今から面白動画とやらを撮るみたいだ。


『どうなっても知らねぇぞ、がははは!』


 深夜のせいなのか、彼の友達がそんなに面白くないのに顔が見えずともわかる本気の笑い声がスマホのスピーカーからはっきりと聞こえる。


「いただきまーす!」


『がははは! まじで食べやがった』


 ズルズルと麺をすする音と彼の友達の笑い声という、隣の部屋にいる両親が起きてしまう程の騒音が響き渡る。


 ズルズルズルズルっ!


 ちゅるちゅるちゅるっ!


「辛ああああっ!」


『がははははは!! ――なに?』


 スマホからドアを勢いよく開ける音がした。友達の母が乱入したと把握し、彼は黙った。


『いったい何時だと思ってんの?』


『二時だけど?』


『うるさいんだけど。もう寝なさい』


『嫌だけど・・・あ、ちょっと何すんだよ!!』


 雑音がスピーカーから流れている。

 いったい何が起きてるんだ。

 そう疑問に思った彼は一言かけようとしたが、口を開けることはなかった。

 もしかしたら、片足を突っ込んではいけない場面を聞いているのかもしれないと思ったからだ。


『・・・』


 やがて雑音が鳴り止むと、今度は彼の友達の泣き声がだんだん遠のいていくのが聞こえた。

 そして、通話が切れた。


 寝たような気がしないまま目を覚まし、腹がやたらとぐぅーぐぅー鳴っていた彼は、寝ぼけまなこで学校へと足を運んだ。


 教室に入ってすぐに目にしたのは、数時間前に通話した友達。元気という言葉がふさわしくない顔をしていた。

 おそらく顔を洗わず、朝食をとらず、歯を磨かずに来たであろう彼の友達は「母ちゃんにスマホ取られて、今日一日使うの禁止にされた」と嘆いていた。


 彼は思った。

 別に一日だけなら良くないか、と。


 ちなみに彼が数時間前に撮った動画は、クラスのグループチャットに送るつもりだった。しかし、起きた後に確認すると、あまりにも酷かったのでお蔵入りとなった。

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深夜テンション物語 千才生人 @sanmojiijyou

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