第五話 重度のシスコン主人公
前世を思い出した一日が経った。
昨日は思っていた以上に土暮真らしく行動することができた。
是非これからも続けていこう。あの情報通に怪しまれない為にも、ヤベー奴らにこれ以上関わらない様にする為にも。
「聞いてくれ真、昨日雪音とデートに行ったんだが」
そのクールな顔で妹とデートしたとか言うな。
「雪音ちゃんと買い物したの間違いだろ。」
「何を言う、雪音が誘ってきたんだぞ。デート以外に何がある」
だから買い物だよ
コイツはそれはもうどうしようもない程のシスコンだ。
妹関連のコイツの脳内ときたらそれはもうエグい。
正直文字起こししたくもない。見たくもない。吐き気がする。
なにせ『木登学園シリーズ』の主人公で一番嫌われているのは誰とファンに聞いたら異口同音で銀也と返ってくるくらいにはヤバい。ハーレム思考の晴夢より嫌われてるんだからそのヤバさが伝わるであろう。本当に気持ち悪いよ
「というか雪音ちゃんとだけだったんだ。
「あぁ、アイツは部活で忙しいからな」
確か霜枷ちゃんはバンド部だったか……あぁー。
「どうした真、妹達は誰にもやらんぞ」
「独占するつもりなのかお前」
「何を言ってる、アイツらが俺を独占しようとするんだ。なら俺も答えてあげるのが兄としての役割だろ」
何言ってんだコイツ
よくこんな状態のコイツを攻略できたなヒロイン達。…いや、プレイヤーが無理矢理操作したからなんだけどさ。
だってコイツすーぐ妹ルートに入るんだもん。……ヤベ、トラウマが蘇る。
「それで雪音の奴、なんて言ったと思う?」
校門どころかクラスに入り机にも座ったのに銀也はこの調子だ。もはや俺は適当に相槌を打っていた。辺りを見回す。
波道は昨日と変わらず女子に囲まれていた。
神玉は……また逃げたか。まぁ昨日の今日だしな。しょうがない。
まぁ、昼から逃げられなくなるんだけど
「おはよー二人とも」
西鶴が話しかけてきた。
だから当然の様に俺の椅子に座るな。
「おはよう西鶴、アイツの相手してやってくれ。」
「嫌だよ、なんで妹さんとの惚気話を聞かなきゃいけないの」
「恵、惚気話じゃない。ただの雑談だ」
いや雑談でもないだろ。
そんな時だった
「あの、土暮さん…ですよね?」
後ろから声をかけられた。
振り返るとそこには波道の姿があった。
「え?俺?」
周りの視線も俺たちに集まる。
え、何?俺そっちの物語には干渉してないっすよね?
「はい…あの、凄く言いづらいんですが…」
え、何、何でそんな戸惑ってんの
どうしよう、周りから嫉妬の視線を感じる。
「あの、一つお聞きしたいことがあって」
それここじゃなきゃダメですか?
場所変えません?いやダメだ
そんなこと言ったら嫉妬の視線が殺意の視線に変わるに決まってる。
まぁ、貴様らごときじゃ俺は倒せませんがね。
波道はまだ言おうか迷っている。
まさか告白!?告白なんですか!?
あっ、殺意が混じり始めた。
お願い早く言って、俺これ以上目立ちたくない。
しばらく迷っていた波道だが、ついに覚悟を決めたのか、深呼吸をする。
そうだ、吸ってー吐いてー。そして…
「どうして頭に包丁が刺さってるんですか!?」
あぁ、なんだそんな事か。
他の奴らも何事もなかったように解散する。
「あぁ、登校中に夫婦喧嘩してる家があってね。色んなもの投げ合ってたんだ。それも窓が割れる勢いで。そん時に偶然刺さっちゃったみたい。」
正直気づかなかった。
俺が何のためらいもなく包丁を抜くと、波道が「ヒッ」と悲鳴を上げる。
包丁の方は血がベッタリついている。
「あの、大丈夫なんですか?急に抜くと血が溢れ出すんじゃ…」
優しいなこの子。
「心配してくれてありがとう、でも大丈夫。この程度なら血なんて溢れ出てこないから。」
「そ、そうなんですか…」
明らかにドン引きしてる。
「うん、だから心配なんてしなくていいよ。でもまぁ一応不安だしハンカチでしばらく押さえとくよ」
「は、はい。そうしてください。」
もう顔真っ青じゃないか。
でも慣れろ波道。こんなのは日常茶飯事だ。
そしてこの包丁は後で捨てておくか。もちろん血はちゃんと拭いて。
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