第三話 クセの強い木登学園の奴ら その一
「えー!本日は以前から言っていた通り!!転校生がやってくる!!!」
朝のホームルームからやかましい声を出しているのは担任の
こんなに声デカいのに担当は化学だ。体育じゃないのかよ。
西鶴はホントにこの先生の声をASMRだと思ってんのか?
「では、早速だが入って来い!皆、拍手!!」
自己紹介を終えた後だろ普通。
「失礼します」
扉が開き、皆が拍手する…が、その手が止まる。
理由は一目瞭然、扉から現れたのはそれはもう絶世の美少女だった。まあ俺は知ってたけどね!!
俺はチラリと神玉を見る。あっ、アイツ目を見開いてる。
「では自己紹介の方、よろしく頼むぞ!」
「はい、
「ん?どうかしたか??波道???」
「あっ、いえ、なんでもないです。」
クラスを通覧しながら自己紹介していた波道は明らかに窓側の奥の方を見て動揺していた。
これだけ見ると過去に会っていたヒロインのように見えるが別にそんな事はない。
彼らはこの日、曲がり角でぶつかるというラブコメイベントの定番をやってのけたのだ。
「では紹介も済んだ!波道には空いているあそこの一番奥の席に座ってもらう!!」
はい出ましたテンプレ
★
ホームルームが終わり、皆が波道に話しかけに行く。
「へー!波道さんラブコメが好きなんだ!」
「どんなシチュエーションが好きなの?」
「そうですね、定番ですがパンを咥えた遅刻ギリギリの転校生が曲がり角で男の子とぶつかる…というのはいいものですね。」
「「わかる~!」」
「そしてその拍子で男の子が大怪我を負ったものの、家が貧乏の為入院ができず、申し訳なさを感じた転校生が代わりにバイトをして入院費を稼いでいき、二人はやがて惹かれ合っていく…といった王道ものが好きですね」
「「それな~!」」
それなじゃねぇよどこが王道なんだよそれ。
ちなみに神玉は逃げた。
まぁ席が席だし囲まれるのは目に見えていたから気持ちは分かる。
ちなみにこのクラスでは月に一回席替えをしているのだが、なぜか六月以降席替えがなくなる。なんでだろうね
美少女と席がずっと同じ、テンプレだな。
「あとはそうですね、好きな女の子が突然家族になっちゃうってお話も好きですね。」
「あぁ!義妹になるとかそういう話ね!」
「個人的には、男の子の父親と好きな子が結婚して、結婚生活を送っていく中、男の子にも恋愛感情が芽生えていき…という話が好きですね」
「「あぁ~そっちかぁ!」」
そっちかぁじゃねぇよラブコメではねぇよそれは。
といった感じで彼女のラブコメに対する考え方はズレている。
うちのクラスの奴らもズレている…といいたいが別にそうでもない。
なぜか彼女とラブコメの話をするとラブコメの定義が大きく変わってしまうのだ。恐ろしい
さてと、一時間目は……生物か。
え、転校初日の最初の授業にあの先生ぶつけるの?大丈夫?
「つまり人間っちゅうのはなぁ!色んな殺し方があるんや!斬首に絞首、溺死に生き埋めエトセトラ!考えただけで興奮が収まらんわぁ!」
「先生、話が脱線しかけてます」
「おっ、すまんなぁ!ミトコンドリアの話やったなぁ!」
ガッツリ脱線してるじゃねぇか
生物の
時代が違ければ確実にサイコキラーになっていただろう。
チャイムが鳴る。
「あかん!また快楽殺人の良さを伝えきれへんかった!」
ホントよく先生になれたなこの人。
ちなみにチラッとだけ波道の方を見たが、顔が真っ青になっていた。すぐ慣れるさ
★
「え!?波道さん、間違えて女風呂に入っちゃった男の子が慌てて物理的に女の子になっちゃう系の話が好きなの!?」
「えぇ~、むしろ慌てて男風呂との仕切りを壊しちゃう系の方がよくな~い?」
普通どんなキャラが好き~?とか、どんな漫画が好き〜?みたいな話になるんじゃないのかよ。
なぜシチュエーションで語り合ってるんだ。
聞いてると頭が痛くなる。
しょうがない、銀也達と話してるか。
「そう、だからね!私プロテインっていうのは一種のドーピングなんじゃないかと思うんだ!」
「流石にそれはないと思うが」
「冬神君何言ってんの!体というのは自分の力のみで鍛えるものでしょ!サプリメントなんかに頼っちゃいけないんだよ!」
やばいあっちも聞いてると頭が痛くなる。
西鶴の奴、あんな過激派だったのか。
仕方ないので席を立ち、別の奴と話に行く。
銀也に凄い目で睨まれたが無視だ無視。
「
「…そうでありますか、それは良かったでありますな。……で、どちらの方が良いでありましたか。」
作品内にも登場しないマジのモブだ。
そんなキャラですらこの濃さだ。すごいな木登学園
「そりゃやっぱ
俺の答えに森魚は鼻で笑った。
「あぁ?」
森魚は瓶底眼鏡を押し上げて白い歯を見せる。
ちなみにコイツ、中学時代モテ過ぎたため伊達メガネを掛けているらしい。
ホントかどうかは知らんが。
「まだまだでありますな、土暮殿。全く分かっていない!」
「ほぅ。何故だ」
「吾輩が見たところ、藻皆ちゃんのバストは推定Iカップ、対して
バストとかは正直俺には分からないが、ならやっぱり藻皆ちゃんの方が…
「二人の出会った中学校時代の回想見たでありましょう、藻皆ちゃん既にあの時Fカップありますぞ!」
「お、おぅ。それで」
「対して査割ちゃん!まだあのころ永遠のゼロ!」
何が言いたいんだコイツ。
「まだ分からないでありますか!その後急激にデカくなる査割ちゃんの胸!」
「それは成長期が来たんじゃ…」
「そこじゃないんでありますよ!!当時から藻皆ちゃんに惚れていた査割ちゃんは当然、藻皆ちゃんの性癖も知っていた!」
「巨乳を鷲掴みにすること…」
「藻皆ちゃんが自分に気があることに気づいていながらも、高校に入るまで知らないふりをしていた!それは何故か!」
「…………まさか!」
「そうであります!彼女はこらえた!自分の胸が大きくなるのを待って!藻皆ちゃんの性癖に答えられるようになるその日まで!」
俺に電流が走る。
そう…か。全ては藻皆ちゃんの為のEカップ…という訳か。
査割ちゃん、なんて純粋な子なんだ…!
「森魚、俺…「土暮殿」
言いかける俺に森魚がさえぎる。
「人の考えは十人十色、土暮殿のような単純な思考も、その一つなのであります。」
「森魚……!」
俺はどちらも推すことを決めた。
……ちょっと待て、バカにされなかったか今?
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