第3話 一日目③
「あに………え!お…てく……さ…!」
…何かが聞こえる。
もう朝か…?
昨日は確か酒を飲んで…それで……そこからの記憶がない。
じゃあ寝落ちしたのか。
「兄上、兄上ー!起きてください!」
「拓郎?どうした?というかおはよう。」
「おはようじゃないですよ!何寝ぼけてるんですか!?まだ午後11時ですよ!」
…ああ、そうなんだ。
てっきりもう朝かと思った。
「これから何かあったっけ?」
「忘れたんですか?今日の午後9時からなにか起こるってお父上が言ってましたよね?」
「あー、そんなこともあったような無かったような」
「しっかり9時に大変なことが起きたんです!」
◯ ◯ ◯
※拓郎視点(回想)
「やっほー。神でーす」
軽いですね。
声はかなり若く、声質からは男とも女とも取れませんね。
「神と言っても、この世界の神ではないから宗教については気にしないでね♡」
なぜかこの自称神、無性に腹が立ちますね。
先程からなにかの力によって体を拘束され、動けなくなっているというのもあるでしょうが。
一先ずはこの拘束を解きましょうか。
「あ、拘束解こうとしてる人いるけど、解いたらどうなるかなぁ…???」
ふぅ、困りました。
拘束といえども、透明なものなので見えることはありません。
ですが、僕の目に映る『情報』には拘束が見えます。
おそらく魂を降ろした場合、簡単に解けるとは思いますが、僕自身の持つ能力を使ったとしてもバレる可能性が高く、その後の自称神の処理が面倒そうです。
魂を降ろさずとも使える能力のみで解くしかなさそうですね。
権能『
僕自身が生まれつきもっている権能、『
それは情報を操作すると言った直接戦闘には向かない能力です。
ですが、情報の偽装などについてはお手の物なので、相手を騙すにはもってこいのものでしょう。
『
僕自身にかけた情報操作は『マナ』と呼ばれるエネルギー源をたくさん使うのであまり使用したくないのは山々ですが、現在における優先順位を考えると、使わざるを得ませんでした。
拘束されたままの状態ではほとんど自称神に生殺与奪の権を握られているのと同義なのですからね。
せめて拘束から抜け出せるだけマシ、とだけ言っておきます。
もし、この行動がバレて、自称神に何をされようと最終的には必ず僕達は自称神に勝つことができるので問題はないです。
…フラグでは無いですよ?
本当にそういった手段があるだけなので。
「抜け出すような人はいなさそうだからよかったよかった」
さて、我々箔根家(兄上除く)の人間はこの拘束から抜け出す術はあるでしょう。
ですが、実際抜け出したのは僕と母上達、お父上のみでしょう。
自称神の探知能力がどれほどかは正確にはわかりませんが、先程の言動からかなりの探知能力はあると考えられるので、偽装能力のある僕とよくわからないチートなお父上とそのチート能力を借りている母上達のみが拘束を抜け出したと考えられるのです。
……忘れていました。我が一族最強である妹で長女の
「えぇ…なぁにこれぇ」
おや、彩花が起きたようです。
もう『マナ』を回復させたことに驚きを感じますが、あの母上と父上の血ですからね。
当然と言えましょう。
ポテンシャルで言えば兄上もあると思いますが、能力を覚醒されていないので僕からは何も言えません。
美鈴と大地は……。
まだ眠っていそうです。
あまり起こしたくないですね。
まずは彩花に対して情報を渡しましょうか。
「先程まで起こったことを情報として渡しますね」
「はいはーい」
『
これによって、脳に負担がかからない程度の情報を彩花に送ります。
「うぉっ、結構なんかあれだね」
「何が結構何なのかは知りませんが、拘束だけ解いておきますね。マナ借りますよ」
「あ、ありがとー」
先程僕が自分自身にやったことを彩花の『マナ』を使って彩花にも繰り返すだけなので、僕には負担はほとんどありません。
ただ、この方法は『マナ』を感知できる人にしか効果を表さないので、兄上には申し訳ないですが、拘束されている状況に対して我慢して貰う必要がありそうです。
………起きてくる気配はないですが。
「さっ↓てー↑!!君たちには『塔』っていうものを登って貰うよ!」
「塔?」
「ねえ、拓郎お兄ちゃん、さっきからこの声相当ウザいんだけど」
「それは僕も同感ですが諦めましょう。どうしようもないです」
声についてはさて置き、そもそも塔とは構造物としての塔なのでしょうか。
「うんうん。『塔』ってのはねー君たちの創作物によくある『ダンジョン』のようなものだと思ってね☆」
あぁ、創作物によくあるものですか。
ゲームやライトノベルなどでよくありますね。
「わからない人のために説明しよう!!キラーン☆」
効果音まで自分で言うのはどうかと思いますが…。
「こほん。『塔』には―――」
話が長かったので重要な情報のみになるよう要約しますね。
『塔』には数多の階層があり、登るためにはそれらの階層を攻略し、『階段』を登らなければならない。
『塔』内には敵対生物が潜んでおり、非常に好戦的な個体が多く、『塔』内に入り込んだ人間を狙う。
『塔』内で死んでしまった人間は『塔』外で死んでしまった人間と同様、生き返ることはない。
『塔』は世界中の国ごとに3基ずつ作られる。
『塔』内は地球とは違う別空間にある。
ざっとこんなものでしょうか。
もっと色々言っていましたが、最重要なのはこのあたりでしょう。
「―――わかってくれたかな〜???」
「拓郎お兄ちゃん、そろそろ自称神のあの話し方やめてほしいかも。癪」
「僕もそう思いますよ。ですが、それ以上に情報が重要なので気にする暇はそれほどないです」
「まぁ、そっかー」
「さて!!君達人間には説明した『塔』を攻略してもらうんだけど〜〜〜、正直現代兵器じゃ太刀打ちできないんだ〜〜〜!?!?!?」
現代兵器では太刀打ちできない…?
では僕らと違って特殊な力を持たない一般人はどう攻略するのでしょう?
「だから〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜???」
「拓郎お兄ちゃん、ちょっと不味いかもね」
「えぇ。嫌な予感が先程から凄まじいです」
「力のない人限定で力の配布をします!!!!!!!」
はぁ…。
嫌な予感は的中しました。
「まっずいね」
「世界情勢が悪くなる予感がしますよ。下手をすれば第三次大戦だって起こり得ます」
人間という生き物は力をどのような形であれ、持つと欲望に走りかねません。
その力を持つことの責任と理解があれば良いのですが、後先考えない人も多いでしょう。
また、力の強さによって人間関係が崩壊するなど、非常に多くの問題が起こるでしょう。
「というわけで、ただいまを持ちまして、世界で『塔』の作成と、『力』…ま、『スキル』って言うよ?を配布します!!いっくよー!!どーん!!!!!!!」
その瞬間、窓から見る限り、天のあらゆる地点から光がそれぞれの人の家に向かって飛んできます。
この時ばかりは山の上の家で良かったと感じますね。
少しは捌こうとしましたが、手が止まってしまいます。
無能力者と能力者で差別が起こりかねません。
前からそういった能力者達の中で差別意識を持つ人は多かったのに、ですよ。
そんな能力者が増えれば自然と少数派となる無能力者は被差別者になってしまうでしょう。
「よしよし、『スキル』の配布は終わったね!!!やったね!!じゃ、『塔』作るよ!!!」
はぁ、いよいよこの時が来ましたか。
自称神が何の目的によって『塔』作成や『スキル』配布を行っているのかは僕には知りようがないですが、あまり褒められたものではないですね。
先程と同様、天から塔と思われる構造物が降ってきます。
この近くには落ちてはいませんが、ここから見えるぐらいにはかなり高いように見えます。
「…あれって地震の心配はないのでしょうか」
「あ……多分大丈夫じゃない?自称とはいえ『神』を名乗るぐらいなんだから」
…結論から言うと、心配していたことは起こりませんでした。
良かったです。
窓から見る限り1000メートルは優に超えていそうですがどうなのでしょうか。
「じゃ、頑張ってね♪また随時連絡いれるからねー」
どうやらこのタイミングで拘束は解かれたらしいです。
時刻は午後11時ですか…。
そういえば兄上にも光は飛んでいましたが、能力などはどうなのでしょう。
まずは兄上を起こすところからですね。
◯ ◯ ◯
☆一人称視点
「………ということがあったのです」
「つまり『塔』っていうのができて、その攻略のためにみんな誰でも能力が使えるようになったってことか?」
「そういうことになりますね」
能力とはなかなか封じられし厨ニ心を呼び覚ますものだと思う。
イタい人にはなりたくないからやらないが。
「能力ってどうやれば見れるんだ?」
「僕にはわかりません、…でもまあこれは推測でしかないのですが、『塔』に行くことで見ることができるようになるのではないでしょうか」
「さっきまでのの話からするにどう考えても遠いでしょ」
もし違っていたら嫌だから、間違っても「ステータスオープン!!」とか叫びたくない。
創作物のテンプレとリアルのテンプレは違うのだ。
リアルのテンプレとは…?とは一瞬頭をよぎったが気にすることのないように。
「ねーねー、翔兄ー」
「どした?」
「能力……『スキル』だっけ?を体の内側から感じるように見れば詳細とかわかると思うよ?」
「んな無茶な」
流石に無理。
内側は見れません。
「やっぱり今日の『スキル』確認は諦めたほうが良さそうかな」
酒を飲みすぎたか、まだ若干ふらふらするから寝させていただこう。
ささっとシャワーを浴びて歯磨きをする。
チョコミントのような歯磨き粉の味が口内に広がるが、いつものこと。
じゃ、寝る。
お休み。
…。
―――一日の終わりになりましたが『スキル』が使用されないため、『スキル』を強制発動させます。
―――『スキル』『
===
あとがき
カクヨムコンこの作品で参加してます。
自分の実力を確かめたいだけなので別に賞とか狙ってるわけではないです。
そもそももらえると思ってないので。
不定期更新とは言っても、流石に更新が遅くて申し訳ないです。
リアルが忙しかったので執筆している暇がありませんでした。
次回以降は早めに投稿する予定です。
『塔』についての説明(要約)は後で増やすかもしれませんとだけ言っておきます。
おまけ
自称神「話を飛ばすなぁ!(怒」
作者「いや、このまま書き続けたら説明だけで話数終わりそうだったから仕方ない」
自称神「おーい!!」
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