一日一回のトンデモ能力
野小路(のこじ)
第1話 一日目①
「あっ、横から車が!」
青信号の横断歩道。
色合い的には緑っぽさも入っているがこの際置いておく。
だが、その信号が全くもって赤というわけでは無い。
では、ベタな質問をしよう。
赤といえば、何を思い浮かべるだろうか。
今の自分の場合は、真っ先にサンタクロースを思い浮かべる。
真っ赤なお鼻のって、歌詞もあるぐらいだからだ。
尚、それはトナカイだ、という指摘は聞きつけない。
そういえば、かなり昔ではサンタクロースは赤以外の服を着ているという風に描かれている事もあったらしい。
今日此の頃赤い服が主流なのは某世界で最も信仰している人口の多い宗教のおかげだそう。
時は12月25日午前9時頃。
クリスマスだからか、それともたまたま今日が日曜日だからか、近所の交差点には人がごった返していた。
……ということはなく、普段の日曜日と変わらない程度の人数が渡っていた。
気持ち1人2人ぐらい多いか、と感じるが誤差の範疇だろう。
車通りは普段通り、渋滞という程には多くはない。
こちらも、数台ほど車が多い気もするが車の数で横断歩道を渡る人間に何の関係があると聞かれると、右折ないしは左折をしようとした車の運転手が「はよどけ」という視線で自分を見てくることだろう。
これが家族連れだったならば、まだましな視線かもしれないが、生憎自分は1人だ。
恋人もいなければクリスマスに遊びに行くような特段仲のいい友人も特にはいない。
両親はいるが、絶賛海外旅行中だ。
1人でいることは慣れているからどうとでも思えるが、その視線は少し痛い。
別にそんな視線を浴びせられたところで、実害があるわけでもないから無視するが。
とは思いながらも、「横から車が」と言えるほどには一人ぼっちということが寂しいのかもしれない。
ここで少し残念?なニュースがある。
この交差点はスクランブル式では無いため、行きたい方角である対角線側に向かうためにはもう一度横断歩道を渡る必要がある。
つまり、例の視線をもう一度浴びさせられる羽目になる。
さて、今現在自分にはいくつかの選択肢がある。
1つは目的地であるコンビニに行くこと。
もう1つは、このまま真っ直ぐに直進して家に帰ることだ。
「いくつかの」と言った割には2つしか挙げれなかったが気にしたら負けだ。
ただし、何に負けたのかは知らないものとする。
目的地であるコンビニに行って、今早急に買わなければならないものは無い。
ただ、自分は現在コンビニのチキンを食べたい気分だ。
先に言おう。
チキンはうまいぞ。
自分がおすすめするコンビニチキンは「11/7」の「揚鶏」だ。
少しばかり高いが、旨さは保証する。
それだったら「ケン・タツキ」のフライドチキンで良くないかと思う人もいるかも知れない。
それは間違いだ、それとこれとでは大いに違う。
そもそもにして値段が違うし、味もかなり差がある。
確かに、「ケン・タツキ」のチキンは美味い。
ただ、買いやすさという点では「11/7」は圧倒的なアドバンテージを取れているのだ。
今日はクリスマスの最中だからコンビニのキャンペーンでチキンが増量しているはずだ。
これがコンビニに行きたい理由だ。
ちなみに、「11/7」以外にも「ファミママート」や、「ローンソ」にもコンビニチキンはあるが、個人的には「揚鶏」が最も美味しい。
ぜひ機会があれば食べてほしいぐらいだ。
1つ二百数十円と少し値段が張るから財布と要相談だが。
財布と要相談と出たので、もう1つの理由も答えよう。
もう答えは言っているようなものだが、金がない。
具体的には1000円札が1枚しか無い。
もちろん北里柴三郎の方だ。
1000円札を使って買ったならば、もちろんお釣りが来る。
ただ、硬貨が沢山あるのよりも紙幣が数枚ある方が安心感がある。
だから1000円札を使いたくないと思ってしまう。
加えて、新札だから勿体ないという気持ちがある。
ただ、どうせこれからこの紙幣が普及するんだから使ってもいいか、という気持ちもあるから迷ってしまう。
うーん。どちらにすべきか。
…そういえば、今日は仮にもクリスマス。
親は何かしらのプレゼントをくれるだろう。
というかお金が欲しい。
今は家に親がいないが、どこかにプレゼントは用意してくれているだろう。
と、思っているとバイブレーションとともに自分のスマホの着信音が鳴った。
その電話の発信元は見覚えがありすぎるものだった。
「はい、どちら様でしょうか」
一応他人行儀で出る。
もし、自分が間違っていて赤の他人だったら困るからだ。
『俺だよ俺、俺』
「すみません、オレ・ダヨ・オレオーレという知り合いはおりませんね。間違い電話では?」
その声で確信したが、あちらがネタで突っ込むならばこちらもネタで対抗するしか無い。
『俺の声も忘れたのか?』
「すみませんね。そちらから名乗ってもらわないと分かりません故」
オレオレ詐欺の犯罪手口だなぁとは思うが、別に相手が誰かを知っているからどうにも思わない。
『俺だよ、
「やっぱり?」
『ちょ、お前父親の声も忘れるのか!?たったの718時間52分13秒61しか離れていないのにか!?』
……まずはなぜ秒の下の桁まで覚えているのかが知りたい。
まあ、考えても無駄だろうが。
ウチの両親達は色々とおかしいからな。
「そもそもの話、一ヶ月も息子を置いて海外に旅行に行っている方がおかしいとは思う」
『うぐぅ…それは言うな』
うーん。この。
「で?どうせまた海外で旅行してたらトラブルが起こったんでしょ?ニュースでやってたよ。日本人男性がテロを起こそうとしていた人物を止めたって。これ、お父さんでしょ?」
『俺はそこにいた美女を助けただけなのになぁ』
美女を助けようとしただけでテロを止めるとかどんな偶然だよと思うかもしれないが、あの父親のことだから仕方がない。
どうせ狙ってやったのだろう。
父親は大の女好きだからな。
節操のない人とも言う。
だからかもしれないが、自分には母親が最低でも10人はいる。
書類上は1人しかいないが。
ハーレムとも言う。
一応自分は父親の正妻様から生まれたらしい。
だからどう、ということはないが、長男らしい。
ちなみに、知っている限りでは弟は12人、妹は18人いる。
『お前に新しい弟2人が出来たぞ!今回は双子だ!』
訂正、今現在弟が14人、妹が18人の32人兄弟になりました。
「……出産おめでとう」
『ありがとう!』
……あまりにも節操がなさすぎる。
こんな父親をなぜ母親は好きになったのかが本当にわからない。
母親はお淑やかだから尚更謎すぎる。
でも、多分清楚系の女子がチャラい男子を好きになる現象と同じだろう。
ハーレムを作ることに関して、父親は節操がないだけで、しっかり家族には愛情はもって接しているから問題は無いのかもしれない。
自分はハーレムとか無理だからその点父親は凄いとは思う。
まあ自分は作る気など無いが。
その理由はいつも父親が母親達に寝室にドナドナされてくのを見てるからだ。
ナニをしているのかは知らないが、…まあ多分そういうことだろう。
「で、新しいお母さんは何人作ったの?」
『こ、今回は1人しか妻を増やしてないぞ!』
そもそも母を増やすということがおかしいと思って欲しい。
ちなみに、前回会ったときは3人増やしてた。
「……まあいいや。どのお母さんから生まれたの?」
『フィミリからだな』
………who?
「え、知らない人が出てきたんだけど」
『まあ新しい妻だもんな』
あっれれー?おかしいなぁ。
「お父さんが旅行始めたのは11/25でしょ?だったらどんなに早くても1ヶ月で出産まで行くってことがおかしい気がするんだけど」
『それは…、まあ色々とあってな…』
「もしかして:結構前から付き合ってた系」
『(小声)ちょっと違うが……、まあそんな感じに思っておいてもいいぞ』
うーわ。
悪いことでは無いけれど、親の恋愛はちょっとキツイ。
というかお母さん沢山いるんだったら恋愛すな。
と思ってしまう程には呆れてるのかもしれない。
「今日は出産報告だけ?12/25だけどなんか無いの?」
ここからが本題だ。
確かに新しい生命が生まれたのは重要なことだが、毎回のことなので実感がない。
そもそも顔も知らない人の子供が生まれたとしてもそこまで関心は沸かないものだろう。
赤の他人の子供が生まれました!とか言われても、反応に困るだろう?それと一緒だ。
実際に見たら別だとは思うが。
『そうだった、そうだった。クリスマスプレゼントだな、家の別館4階エレベーター横バルコニー内のビニール室の桃の木の隣に置いてあるからそこから持っていってな』
「りょーかい。じゃあもう要件は無さそう?無かったら切るけど」
『あー、そうだな、1つだけ。今日の日本時間夜9時は注意しておけ、大きな事が起こるぞ』
「ふーん、で、それに対して何やっとけばいいの?」
こういう時の父親の言っている事は大体当たるからな。
『どうしようもないが……、何があっても慌てないことが大切だな。冷静にいろ』
「分かった。じゃ、年末には帰ってきてよ?切るね」
『あぁ、またな』
通話終了っと。
通話時間4分5秒か。
数百円ぐらい通話料発生しそうだがそこは考えないものとする。
「どうしよっかなぁ…」
夜9時まではまだ時間があるし、一先ずコンビニ行くか。
散々話題にしていた横断歩道が青信号になるまで待ち、信号を渡りきってからすぐにコンビニに入る。
店内には人はあまりいないように見える。
中に入ると、まずはレジ横の惣菜が置いてあるガラスケースを見に行く。
「揚鶏」ヨシ!
無かったらそれなりに萎えていた。
集中力upという謳い文句のラムネを手に取り、レジに向かう。
そこには多分バイトの大学生が1人レジに立っていた。
「これと揚鶏を1つ」
「揚鶏ですね、少々お待ち下さい」
バイト定員さんはレジ横の惣菜置き場に行き、紙袋を開いてトングを使ってそこに「揚鶏」を入れる。
そして戻って来ると、ラムネと「揚鶏」の会計をする。
「合計335円です。11/7アプリはお持ちですか?」
「あ、無いです」
面倒なんでパス。
「袋はお付けしますか?」
「大丈夫です」
袋もお金がかかるのでいらない。
335円か。
300……50円でいいや。
「350円お預かりします。…(レジ打ち中)…15円のお返しです。お買い上げ、ありがとうございます」
レシートはいらないし、不要レシート入れにでも入れとくか。
………ここにきて重要なことに気が付いてしまった。
何を自分は朝っぱらから揚げ物を食おうとしているんだ、と。
身体には多少は悪いかもしれないが、まだ若いから問題は無い。
「揚鶏」の入った袋を破き、中身を頬張る。
じゅわっと口内に「揚鶏」の肉汁が満たされる。
これだよこれ。これが美味いんだよ。
噛むにつれて溢れ出る肉汁、程よい揚げ方とのマッチング。
これを芸術と言わずしてなんと申しましょうか。(語彙力消失)
………無くなった。
いや、誰かに取られたとかではなく、ただ単純に食べ終えてしまっただけだ。
はぁ…。家帰るか。
家までの道のりはカットしよう。
え?何か起こらなかったのかって?
いやいや、起こるわけ無い。(断言)
こちとらただの一般人だぞ。
なお、父親は除くものとする。
実は自分の自宅は近くの山の上の神社横にある。
と、言うのも母親(自分の肉親)は山の上の神社の神職の娘だったからだそうな。
そんな家だが今は一人で住んでいる。
一人で住んでいる理由だが、そこまで深いわけでもない。
ただ単に両親が海外にずっと行ってたり、他の自宅(?)に行ったりしているからだが。
「ただいまー」
ガラガラと横開きのドアを開き、誰もいないであろうのに帰宅の挨拶をする。
勿論、返事はない。
逆に返事があったら怖い。
靴を脱ぎ、背負っていたリュックサックを下ろし、手洗いうがいをした後、掃除を始める。
掃除をする理由というのも主だった理由はないが、強いて言うならば年越し前の大掃除だろう。
一応神社の家系ではあるから年中行事ぐらいはしっかりと行った方が示しがつくからな。
埃パタパタッとだけやって後は後日に回す。
年明けまで一週間弱はあるからそれまでに終わらせれば問題ない。
あぁー、あれもあるんだった。
障子の張替えと畳返し。
………業者に頼むか。
面倒だしそれも後でいいか。
最悪自分でできるし。
で、本題のクリスマスプレゼントだが…。
「別館かぁ」
ここから歩いて20分はかかる。
自宅は小山の上にあるのに対して別館は麓にある。
遠い。
………。
よし、今日はもういい。
明日取りに行こう。
そう思うと、最近ハマっているゲームをやり始めた。
―――
――
―
「よしっ。今日はここまでにしておくか」
ある程度までゲームを進めたから一旦やめた。
ここからのストーリーは6時間必要だからな。
ふと、時計を見ると時すでに午後の二時。
昼飯を食い忘れた。
仕方がないので、家に常備してあるカップ麺を用意する。
お湯を沸かし、それを容器に入れ三分待つ。
三分待つ………?
はっ!?まさか…!
「三分間待ってやる」
と言ってしまうのは仕方のないことだろう。
ってなわけで( ^^) _旦~~。
===
新作です。
不定期更新です。
僅かでも面白いと感じて頂けたならばお星様をくださると幸いです。
11月に出されるクリスマスの話題。
一話が長くなりそうなんでここで切り。
一日目②に続きます。
紹介文の文言はは次回以降です。
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