第13話 転校生は美青年
「ねぇねぇ更沙くん」
地獄のような日曜日から数日。
僕はいつも通り、隣の席の白雪さんに声をかけられている。
「なんだい白雪さん」
もう無視するのも面倒なので、潔く反応することにした。
そしたら以前より話しかけられる回数が増えて、今は後悔している。
「今日さ、転校生が来るらしいよ?」
「へぇ〜そうなんだぁ」
転校生か。
まぁ別にラブコメ的存在ではないし、嫌ではない。
転校生なんていくらでもいるからなぁ。その一人ひとりのことを嫌っていては埒が明かない。
「どんな人なんだろうね」
知らないよ。
「可愛い人だったら……更沙くんデレちゃう?」
「デレるわけ無いだろ」
「よかったぁ」
可愛くても性格が終わっている奴がこの世にはいるということを知っている。
雛田みたいな変態もお断りだが。
「逆にかっこいい人だったら白雪さんメロメロになる?」
「なるわけないじゃん。私更沙くん一筋だし」
そんなはっきり言わなくてもいいじゃないですか。
そんなことを言うとほらぁ……遠くのほうで葵がこっち見てる。
そんな他愛もない会話をしていると、僕を見捨てた担任が入ってきた。
「(なんか神楽から憎しみの視線を感じる……)早く席につけ」
あの担任は助けを乞う僕を突き放して白雪さんに味方したんだ!
僕は彼女(担任)をラブコメ的存在と認定したからな!
「今日は知っていると思うが、転校生が来ている」
担任がそう言うと、男子共は『女の子かなぁ!』なんて夢のない話をしている。
女子共は『かっこいい人がいいなぁ!』とか言っている。
男子も女子も脳内は同じなんだな。
「早速、入ってきてくれ」
担任がそう言うと、教室のドアが開き、例の転校生が入ってきた。
その瞬間、女子達から悲鳴にも近い黄色い声が聞こえ、男子達からは妬みの声が聞こえてきた。
「初めまして。宝崎学園から転校してきました、神楽坂くるみで……す」
その転校生は可憐で美しく、そして背も高く、何よりイケメン。
所謂、美青年だった。
その転校生は自己紹介を終えたと同時に、僕の方を見て固まってしまった。
多分僕ではなくて、白雪さんのことを見てだろうな。
白雪さん可愛いし。
「神楽坂くんは、さっきから憎しみの視線を私に向けている神楽くんの後ろだ」
なんでバレてるんだろ。
◆
そしてお昼休み。
僕は葵に捕まらないように、早急に教室から出ようとしたのだが、今回は白雪さんでも神崎さんでもなく、例の転校生に捕まった。
うんなんで?
「あっ……あの!」
「はい? なっ……なんでしょう」
面倒なことはやめてくれぇ!
「あっ……えっと黒板見えづらい? それなら僕じゃなくて――」
「そうじゃなくて!」
「えっ?」
その転校生は僕の腕を掴んで、引き寄せた。
こいつ……案外身長でけぇんだな。
「覚えてない……?」
「覚えてないとは?」
「俺だよ!」
「オレオレ詐欺は間に合ってますんで」
僕がそう言うと、隣で見ている白雪さん達にがクスッと笑った。
いや、ウケを狙ったわけではないんだが。
「忘れた? 俺だよ俺! 神楽坂くるみ! お前の親友!」
「しんゆう……」
親友……親友……親友?
僕にこんな美青年な親友は――あっ。
なんかいたな。前髪上げたらくっそイケメンで、葵に盛大に振られた親友が。
もしかして……。
「お前……くるみんか?」
「そうだよ更沙!」
感動の再会〜!
相手が男だからラブコメ展開ではない! セーフ!!
ちなみに僕がラブコメ的存在やラブコメ展開を嫌っていることを知っている数少ない人の一人である。
「久しぶりだなくるみん!」
「会いたかったよ更沙!」
僕たちはクラスメイトの目の前で、ハグをした。
こいつ……身長でかいせいで、抱き心地がアップしてやがる……。
「それにしても……随分と様変わりしたな!」
「そりゃそうだよ! 更沙に会うために頑張ったんだから!」
「え? 僕に?」
「そうだよ? 更沙の隣に立ちためには、俺もイケメンになる必要があるからね」
「僕……イケメン?」
後ろでぽけ〜としている白雪さん達に聞いてみた。
「イケメン」
「今世紀で一番のイケメン」
「イケメンだな」
満場一致て……。
そんなことしたらまた調子乗っちゃうぞ☆
「それで今まで連絡が取れなかったのか」
「そうなんだよ! 会ったときにびっくりさせたくて!」
言っておくが、こいつは葵に振られたあと、噂のせいで不登校になった。
その間、僕が毎日遊びに行って、そしたらなんか『俺……更沙のこと好きかも』なんて言ってきたやつだ。
「今でも僕のことが好きなの?」
「当たり前じゃんか! 好きどころか愛してるよ!」
こいつはラブコメ的存在ではない。
そのせいか、ちょっと心臓がうるさい……。
「うっ……うん、わかったから。それよりもご飯食べよっか」
「そうだね!」
「くるみんは弁当持ってきてるのか?」
「持ってきてるよ〜手作り!」
「それも僕の真似か?」
「うん!」
もう現実的な恋愛の相手こいつでいいか?
ラブコメ展開にもならないし、それにラブコメ的存在でもない!
完璧だ!
「僕もくるみんのこと好きだ!」
「ふぇっ!?」
あっ……僕としたことが、口に出してしまった。
くるみんは顔を真っ赤にして、なぜかうめき声を上げている。
未だにポケ〜としていた白雪さん達も、なぜかショックを受けたような顔をしている。
「それっと両想いってことだよね?!」
「えっ……え〜と……」
僕が固まっていると、後ろにいる葵が声をかけてきた。
「えぇっと……神楽坂さんですよね?」
「あっ君は……」
「お久しぶりです」
「ありがとう! 君に振られたおかげで更沙のことを好きになれた!」
「えっ」
葵、完全敗北。
「あっ……あの〜……私達もお昼……御一緒してもいいかな?」
おぉ〜天然白雪さんが誘ってくるとは。
「更沙が良いならいいけど」
「いやd……ん"ん"っ! 大丈夫だよ」
ここで断ったら……殺されるかもしれない今まで黙っている神崎さんに。
「白雪萌音と神崎希さんだっけ?」
「そうだけど……」
「そうだよ」
「あなた達、更沙とどういった関係?」
僕がラブコメ展開を嫌っていること忘れたのかこいつは。
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