第12話 お仕置き

 「今日はごめんね。急に一緒に買い物しちゃって……」


 「大丈夫だよ。それに楽しかったし」


 本音は言わないでおこう。

 

 あれから、一緒にお昼を共にしたんだけど……。

 僕が雛田に食べさせていたら、白雪さん達が『私達も……』とか言い出して、ランチタイムもずっと大変だった。雛田は満足気だった。

 

 「神楽の私服も見れて良かったなぁ」


 「今度また遊ぼうね更沙!」


 僕の私服を見ても何とも思わないでしょうが。

 

 ランチタイムが終わってからも、一緒に漫画やゲームも買ってしまった。

 それでいつの間にか夕方になっていたというわけ。

 

 「雛田ちゃんも今度遊ぼ!」


 「はい。楽しみにしています」


 「雛田も敬語じゃなくてタメ語でいいんだよ?」


 「雛田はあれが素だから」


 嘘ですけどね。

 

 「へぇ〜お嬢様みたいだね」


 「!」


 白雪さんの発した言葉に葵が一瞬反応したような……。

 気の所為だろうか。

 

 「それじゃっ私達は帰るね」


 「また月曜日!」

 

 「神楽また電話するからな〜」


 こうして三大美女が去った。

 また月曜日会うんだけどね。今日は散々な日曜日だったなぁ。

 

 まだ一日は長いが。あと雛田のもあるしね。

 

 「お兄ちゃん」


 「何だ?」


 「西宮葵のこと甘やかし過ぎでは?」


 雛田の方からその話題を振ってくれるのはありがたい。

 

 「それに対して、お前葵に余計なこと言っただろ」


 「余計ではないよ? ちゃんとしてあげたんだから」


 教育ねぇ……。

 

 「まぁいいや。それと桜さん、もう御帰宅してもらってもいいですよ」


 僕がそう言うと、香織さんと並んで立っていた桜さんが速やかに消えていった。

 まだ香織さんには仕事があるのか。護衛なんていらないんだけどなぁ。

 

 「お兄ちゃん早く行くよ海風さん待ってる」


 「わかってるよ」


 僕達は海風さんの待っている駐車場に移動した。

 余談だが、香織さんや桜さんは生娘らしい。

 

  


 

 

 「海風さん、お待たせしました」

 

 「いえいえ、大丈夫ですよ」


 なんで毎回一般車両ではないのだろう。

 まぁそんなことはいいや。これから大事な話があるんだから。

 

 「香織さんも乗って」


 「」


 行きと同じく、香織さんにも乗ってもらい、僕たちは出発した。

 この車を見ていると、あることを考えてしまう。

 

 まぁ……あの親友のことだ。どこかでやって行けているだろう。

 

 「お兄ちゃん今日一緒にお風呂に入る?」

 

 「いや、今日は入らない」


 「なんで?」


 「……なんでも何も、一緒に風呂なんか入るわけ無いだろ」


 「良いじゃん義妹なんだし」


 本当の兄妹でも駄目だが、義兄妹の方がもっとだめだろう!

 外面では清楚みたいなことして、素はとんでもない変態なんだから。

  

 「あと雛田」


 「何? お兄ちゃん」


 「今日帰ったらな」


 「えっ……嘘……」


 「嘘じゃない。本当だ」


 「なんで? 私……なにか悪いこと……した?」


 「葵に余計なこと言ったろ」


 「あっ……あれは教育で……」


 ちょっと、雛田のことは甘やかしすぎたのかもしれないな。

 たまには厳しくしてやるか。兄さんや姉さんみたいに。


 「雛田。葵は西宮家の人間だけど、僕の友達だ」


 「……」


 「だから、今日はお仕置きだ」


 「そっ……そんな……」


 まぁ……雛田も善意でやってくれたことだろうからな。

 ちょっと加減はするかぁ。

 

 それにしても雛田は相変わらず絶望した顔をする。

 そんなにお仕置きが嫌なのか?

 

 


 ◆

 


 

 「では、これで私めは失礼致します」


 そう言うと、海風さんは神楽家本部の方へ車を走らせた。

 こんな休日なのに大変だなぁ。護衛もドライバーも。

 どっかで休暇を与えてやるかぁ。

 

 「じゃっ香織さんも上がっていいよ」


 「」

 

 香織さんは軽く頷いてから、どこかへ消えてしまった。

 毎回どこに居るんだろうと思うが、まぁそこまで興味はない。

 

 「さて、雛田」


 「ひっ……」


 玄関の鍵を閉め、そのまま二階にある僕の部屋へ。

 お風呂はお仕置きが終わってから。

 夕食もその後だ。


 まずは雛田のお仕置きが最優先事項だからな。

 

 「よし雛田、そこに座れ」


 「はっ……はい」


 僕はベッドに腰を下ろし、その正面に雛田は正座で座った。

 別に正座をしろとは言ってないんだけど。

 

 「これからお仕置きを始める。いいね?」


 「はいぃ……」


 僕が考えた雛田専用のお仕置き。

 それは雛田にとって、とても残酷かつ効果的なものだ。

 そしてこれは僕のためにもなる。ちなみにこれは性的なものではないぞ。

 

 「まず、ズボンのポケットに入っているものを出してもらおう」


 「はい……」


 ポケットの中から出てきたのは、僕の着用済みのマスクだ。

 

 「続いて、下着の中に隠しているものも出してもらう」


 「うっ……は……い」


 雛田の下着から出てきたのも、やはり僕の着用済みマスクだ。

 

 そう。雛田は普段から、僕の使用したあらゆるものを盗み、自分の部屋や自分自身に身につけるという変態なのだ!!

 だからこのは雛田にとって最も残酷で有効なものなのだ。

 

 「あとお前、靴下それ僕のだろ」


 「う"っ」


 「それも脱げ」


 「うぅ〜……」


 これで着用しているものは全部かな。

 

 「よし、お前の部屋行くぞ」


 「ちょちょっ! ちょっとまってぇ!」


 僕は問答無用で雛田の部屋に入った。

 

 まぁ雛田の部屋がどんなことになっているかは知っているが。

 壁や天井に張り巡らされた”僕”の写真。

 それとなぜかベッドのシーツは濡れている。

 

 「雛田……」


 「はい……」


 「部屋の中にある盗んだものをすべて出しなさい」


 「はい……」


 雛田は渋々という形でタンスの中や枕の下、なぜか額縁の中から出してきた。

 なんてところに入れているんだ。


 部屋から出てきたのは僕の使わなくなったブラシや服、手袋だった。

 そして枕の下から出てきたのは、僕の下着だった。

 普通なら警察に突き出すのだけども。

 

 「お仕置きなんて……ひどいよぉ〜……」


 雛田はそのまま崩れ落ちた。

 これでお仕置きは終了。

 

 「で、なんでシーツが濡れてるんだ?」


 「そこ掘り下げないで」


 

 

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